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ここでは猫が起こす問題行動の代表的な例とその原因、それに対するしつけ対策について記していきます。
例えば、猫同士で喧嘩をする、人間を攻撃してくる、ところかまわず爪研ぎをして家中ぼろぼろにしてしまう、何度しつけてもトイレ以外の場所で排泄してしまう、鳴き声がすごい、などです。これらの問題行動の原因は様々で、縄張り争いが原因だったり、適切に遊んであげない/あげなかったことが原因だったり、はたまた病気が原因だったり去勢していないことが原因だったりします。ここでは猫同士の喧嘩・人間への攻撃行動・トイレの問題を例に挙げ、原因を理解し、どうしたら人間と猫が平和的に暮らしていけるかを考えていきましょう。
猫同士が喧嘩する理由は様々ですが、幼少期に他の猫から嫌な思いをさせられたため成長しても、他の猫に対して攻撃的になるケースや、幼い頃から一匹だけで育てられたために新しい猫を受け入れられず、恐怖や猫社会でのマナーへの疎さから攻撃してしまうケースなどがあります。猫は基本的に環境が変わらないことを好む生き物ですから、特に確立された縄張りに新しい猫が入ってきた時や確立された縄張りを持たない時などには非常に攻撃的になってしまいます。また単純に猫同士の相性が非常に悪いというのも喧嘩の原因になるでしょう。しかし猫がそうした状況に慣れたり大人に対応出来るようになればこの問題の多くは解消することが出来ます。
猫同士の喧嘩に対して人間が出来ることの第一歩は、「喧嘩を絶対に放置しない」ということです。野生下では勝者が縄張りを得、敗者がその場を去ることで争いは収まります。しかし閉塞的な「家の中」という環境ではそれは不可能です。猫同士が喧嘩を始めたら、手をたたいて大きな音を出したり、水鉄砲を使用したりして喧嘩する気を削ぎましょう。また、「その猫だけのもの」を与えるようにしましょう。特にエサをやる皿や寝床、トイレなどを猫一匹一匹に対しそれぞれ別の場所に与えると、猫の自尊心が高められ、争いごとが減ります。さらに、攻撃的になっている猫を無理に落ち着かせようとするのも逆効果です。ひとりなれる場所を与えて、気持ちを落ち着かせる時間を作りましょう。望ましい態度が取れた時にはご褒美のエサをあげることも効果的です。このように行動すればエサがもらえる、と猫が学習することで喧嘩を減らす効果が期待できます。
猫が人間に対して攻撃になる時に気にかけなければならないのは、猫から感染症をもらってしまうことです。インフルエンザのような症状がある非常に深刻な感染症を引き起こす可能性がありますから、この問題はしっかり解決しなければなりません。
上記の通り、猫は自尊心が高く縄張り意識の強い生き物ですので、自分の縄張りや自分自身を守ろうとして攻撃的になります。また、DNAに受け継がれる狩猟本能が刺激され狩りの体勢に入ってしまうことも、人間や他の生き物たちを傷つけることの原因になってしまいます。猫が攻撃的になっている時にはいったいどうして攻撃的な気持ちになってしまったのかをよく観察することが必要になってきます。ここで念頭に置かなければならないのは、猫が身体になにか支障を来している可能性です。けがをしていたり内臓疾患をわずらっていたりすると身を守るために攻撃的になってしまいますが、毎日猫と接する飼い主ですら猫の健康状態の悪化にはなかなか気が回らないことがあります。なにか問題行動を起こす時にはメディカルチェックを受けさせることも時には必要でしょう。
多くの場合、動物病院で定期的に健康診断を受け医師の診断を仰ぐことは猫が攻撃的になることを予防できます。身体が痛むのでイライラし攻撃的になる猫というのは非常に多いのです。こうした健康上の問題は通常のしつけ云々の前に解決しなければならない問題です。健康状態が回復したら穏やかになった、という猫も多く居ますから、きちんとしつけを行っていても攻撃性が収まらない時には医療機関を受信させましょう。
飼い猫の約10%以上がトイレ問題を抱えていると言われています。トイレ問題を解決すると、他の猫との関係を改善したり、飼い主とのきずなを深めたり、病気を予防したりする効果が期待できるので、その原因としつけの方法を見てみましょう。
トイレ問題を考える際一番最初に見直さなければならないのは、トイレそのものが猫にとって優しいものであるかどうかということです。単純に飼い主が掃除を怠ると猫はトイレを使うことを拒みます。猫にとっておしっこをすることはマーキング行為とほぼ同じ意味を持っていますから、家の中に一カ所しかトイレを設置しないと、ここは自分の縄張りだと主張するためにトイレ以外の場所でおしっこをしてしまうことに繋がります。トイレは家の中に複数箇所設置しましょう。上でも触れましたが、特に多頭飼いしているお宅では、猫一匹一匹に縄張りがあるわけですから、猫一匹につき複数のトイレを用意してあげる必要があります。
猫にとって狭すぎるトイレでも大きすぎるトイレでも猫は嫌がります。身体のサイズに合ったものを選び直しましょう。設置する場所も、猫がトイレを使いたくなった時にすぐにアクセスできる場所にしましょう。家の隅っこや奥まった場所、隠れてよく見えない場所などは「マーキング」の観点からも猫は嫌がる傾向にあります。同様の理由から、トイレに扉が付いているタイプは使いにくいからと使ってもらえないことがあります。
ここで紹介した猫の問題行動とその解決策はほんの一例に過ぎません。他に人間が出来ることは、猫の狩猟本能を刺激するような遊びをたくさんして運動不足を解消してあげることです。狩猟本能が遊びで満たされれば、人間や他の猫たちで憂さ晴らしをすることもなくなりますし、猫本来の姿を取り戻して猫が快適さを感じられます。たくさん運動すればストレスが発散され疲れてしまいますから、他者を攻撃する前に穏やかに寝てしまうということも増えるでしょう。
猫は縄張り意識が強くきれい好きであるという本来の姿を理解し、それに合わせたしつけを行い、必要であれば動物病院に通っていくことが問題解決に繋がります。