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街のスーパーで見かける減塩商品。醤油、味噌などの調味料から食品まで多岐にわたるようになりました。日本では伝統的な保存食に塩分が多いことから、日本人は世界一塩分を取りすぎる国民とまで言われています。そのために引き起こされる高血圧は国民病と呼ばれていますが、実は高血圧以外にも塩分の取りすぎによって引き起こされる病気は数多くあります。
そんな日本人とともに暮らしてきた日本の猫も、塩分の取りすぎを指摘されています。過去には、煮干しや鰹節をご飯のおかずとしていただいてきた猫も多くみられましたが、思いのほか塩分が高いことがわかり、今では猫用のものが売られるようになりました。
猫が喜んで食べるから言って、まだ竹輪やかまぼこ、煮干しや鰹節、さらには刺身に醤油なんてつけてあげていませんか?
なぜ、塩分が高いといけないの?塩分は体を作るうえで大切な要素ですが、取りすぎると毒になります。塩分を気にしなければいけない理由をぜひ知っておいてくださいね。
人間の味蕾(味を感知するセンサー)が1万個近くもあるのに対し、猫の味蕾は千個にも満たない数しかありません。その上、猫は肉食なので肉に含まれるアミノ酸のうま味をおいしいと感じていて、塩分にはとても鈍感です。人間のように塩味をつけてもつけなくても、本来のアミノ酸だけを感じておいしいと食べることができるので、塩分を除去した煮干しでも、猫はおいしいと喜んで食べるでしょう。塩分が高くてもそうでなくても喜んで食べるのですから、必要以上に塩味をつけることはないのです。
すべての生物にとって、生きていく上で塩分は重要な要素です。ただ、それぞれの食物連鎖の中にいるだけでも塩分は補給されるようにできているので、肉食の猫もその程度の微量な塩分の摂取で十分足りるのです。人間のように、たくさん汗をかいたり老廃物を出したりして、水分と一緒に塩分も体外に多く排出されるということもないので、意識して塩分を取る必要はないのです。
猫は乾燥地帯で生きてきた歴史を持つ動物です。少しの水分量でも生きていけるように、猫の腎臓は少ない水分量で高濃度のオシッコを排出するようにできています。
もちろん、猫も体の60~70%は水分でできているのですが、人間のように体からは汗をかかないので多量の水も塩分も必要とはしません。それなのに多くの塩分を与えてしまうと、体の機能はたくさんの水を取り込んで、体内の塩分濃度を一定に保とうとします。そのために摂取した多量の水が、血管内部の液体量を増やし血圧を上昇させる、つまりは高血圧になります。塩分の取りすぎが、血液を送り出すためのポンプの役割をしている心臓と、必要のない塩分を外に排出させる働きの腎臓に過大な負担を強いることになるのです。
また、高血圧以外でも、少ない水で生きていける猫が多量の水を飲む時には、何かしらの病気であることが多いのです。
腎臓病は猫の死因の上位に位置するくらい猫がかかりやすい病気で、別名「地獄の使者」とも呼ばれています。もともと猫は飲水量が少ないので、濃縮した尿を作ること自体が、すでに腎臓にかなりの負担をかけているのではないかとも言われています。今は医療や環境、食事もよくなったので長生きする猫も増えましたが、長く生きればそれだけ腎臓にも負担がかかるようで、老猫の3割が慢性腎臓病にかかっているともいわれています。
腎臓病は進行性の病気なので、一度悪くしてしまうと回復することはありません。また、尿をたくさん排出すると、それでなくても飲水量が少ない猫は脱水症状を起こします。
腎臓はかなり悪くなるまで表立って症状として現れてきません。症状が出てきた時にはすでに時遅しで、心臓も肥大し、脳卒中や心筋梗塞を起こすことも珍しくありません。
やはり腎臓を傷める最大の原因は塩分の取りすぎ。ナトリウムは体を構成するのに大事な要素なので、総合栄養食としてのキャットフードにはすでに含まれています。また、下部尿路に配慮したフードは、尿の排出を促すために少しだけ塩分が多めになっています。総合栄養食を与えていれば塩分は十分に足りているので、猫に与えるおやつには塩分が含まれないのを与えるようにしましょう。
手作りフードの場合は、塩分濃度を測る塩分測定器を利用します。作ったフードは毎回測るようにし、0.4%を標準にして塩分調節をします。塩分は少なくても多くてもいけません。
たかが塩と侮ることなかれ。されど塩は生きていくうえでとても大事な要素です。病気になれば猫だけでなく飼い主もつらいもの。少しでも回避できるならそれに越したことはありません。
これを機会に、猫だけでなく飼い主も塩分を取りすぎていないか、一度、食生活を見直してみるのも良いかもしれません。猫も人も健康に暮らせる生活が一番です。