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マンチカンには、特有の病気があります。
変形性関節症とは、骨と骨の間でクッションの役割を果たしている関節軟骨が様々な原因によって破壊され、それに伴い関節を守るように関節が大きくなっていく疾患です。
更に、関節面の軟骨が増殖し、次第に硬くなり骨化しとげのようになる「骨棘(こつきょく)」というものが見られることもあります。
マンチカンに足を庇うように歩く・動きたがらなくなった・高い所から着地出来ない・足を触られることを嫌がるといった様子が見られれば、この病気の可能性があります。。
椎間板は、頸椎から尾椎の椎骨の間に存在し、前後の脊椎を強く連結しています。
椎間板の中心には髄核があり、正常な髄核はゼリー状の弾力性に富んだ構造をしており、脊椎に加わる衝撃を吸収する働きを持ちます。
外傷や肥満、老化などが原因で椎間板が破れると、中の「髄核」が外に飛び出して、神経や脊髄を圧迫することがあります。これが「椎間板ヘルニア」です。
マンチカンは短足なため椎間板ヘルニアになりやすいと言われています。
脊髄が圧迫されると、激しい痛みを伴うことから不自然な歩き方をしたり運動量が低下します。症状が重度になると歩行困難になり、神経麻痺の影響から失禁することもあります。
原因は本来病原性の弱い猫腸コロナウイルスなのですが、経口的に入った猫の腸内で変異を生じ、猫伝染性腹膜炎ウイルスとなって内臓に感染します。
保菌猫や感染した猫の便から経口的に猫伝染性腹膜炎ウイルスが直接感染する場合もあります。
猫伝染性腹膜炎ウイルスは2つのタイプに分けられます。
ウエットタイプ(湿潤型)では腹膜炎を起こし腹水が貯まる、胸膜炎を起こし胸水が貯まるといった様子があります。ドライタイプ(非湿潤型)はブドウ膜炎・肝機能低下・腎機能低下・神経症状などがみられます。
両タイプに共通し、元気、食欲の低下、発熱、体重減少、子猫の発育不良の症状があります。必ずどちらかに分類出来るわけではなく、途中でタイプが変わったり、両方の症状が見られる場合もあります。
現在様々な治療法が試みられており、改善や延命についてある程度効果のある方法もありますが、完治させることは非常に困難です。
外耳炎は様々な原因によって引き起こされます。
耳の中で細菌や真菌などが繁殖した場合や、耳ヒゼンダニなどが寄生した場合、埃やゴミが耳に入り込み炎症を起こしたり、アレルギーが原因の場合もあります。
炎症が慢性化することで耳の中が腫れ、耳の穴が塞がることで聴力が低下したり、酷い場合には手術が適用されることもあります。
マンチカンは立ち耳の子と耳折れの子がいますが、耳折れの子では耳の中が観察しにくく、外耳炎を起こしていても発見が遅れることがあります。また、耳を洗浄しづらいことから治療が困難になります。
漏斗胸(ろうときょう)とは先天的な肋骨の異常による病気で、胸骨が内側に陥没しており、通常よりも胸腔が狭い状態になっています。
重度のケースでは呼吸困難に陥る場合もあるため、早めに動物病院で治療する必要があります。
毛づくろいの際に毛を飲み込むと、通常であれば吐き出すか、便と一緒に排泄します。
しかし、毛を吐き出すことも便と一緒に排泄することもできずに胃や腸の中で徐々に大きくなってでしまう場合があります。これが毛球症です。長毛種のマンチカンは短毛種よりも詰まりやすいため、特に注意する必要があります。
毛球症になると、食欲不振・吐くような仕草を見せるが吐き出せない・嘔吐・便秘・下痢といった症状がみられます。
マンチカン特有の病気の中には、予防可能なものもあります。
何が原因で変形性関節症を起こしているかにもよりますが、予防できることがあります。
まずは、体重管理をすることにより関節への負担を減らします。食餌の量を加減したり、ダイエットフードを上手く利用し肥満を予防しましょう。
そして、適度に運動させます。筋肉が発達することにより関節を支えられるようになり、骨への負担が減ります。
床材を見直すことも大切です。足が滑りやすい環境だと走った時に転んだり、思わぬ事故を招きます。
肥満は腰への負担が大きくなるので、適正な体重維持を心がけましょう。また、階段の上り下りや、ジャンプする遊びなどの腰に負担のかかる運動はなるべく避けましょう。
フローリングなどで足を滑らせると危険なので、足の裏の毛が伸びているようであれば短くカットしましょう。滑り止めのマットを敷き詰めることも予防に繋がります。
今のところ、猫伝染性腹膜炎を予防出来るワクチンはまだ開発されていません。猫コロナウイルスを変異させないために、可能な限りストレスを減らすことが大切になります。
トイレや食器を清潔に保ち、消毒薬を定期的に散布することも有効策の一つと考えられます。
外耳炎を予防するには日頃から耳の中を観察し、異常が無いかチェックすることが大切です。特に気を付けなければならないのが梅雨から夏場にかけての高温多湿な時期で、細菌や真菌が繁殖しやすくなります。
耳からいつもはしない臭いがしたり、汚れが多いようであれば早めに動物病院を受診しましょう。
漏斗胸は遺伝的な疾患なので予防することは難しいと言えます。親や血縁関係の近い猫に漏斗胸の猫がいない事を確認してから飼育しましょう。
毛球症は毛づくろいで大量に毛の飲み込んむことにより起こるので、日常的にブラッシングをする必要があります。ブラッシングをすることにより、猫がグルーミングで飲み込む毛の量を減らすことが期待出来ます。
マンチカン特有の病気には、様々な治療法が行われています。
別の病気が原因となって変形性関節症が起きている場合には、まずそれらの病気の治療が施されます。
例えば、膝蓋骨脱臼などが関節に負担をかけ、その結果炎症が起こっているような場合には、まずは膝蓋骨脱臼への治療がなされます。
変形性関節症の猫は肥満であることが多いため、減量を含めた体重管理も治療の重要な要素です。
関節痛が存在するときには、非ステロイド性鎮痛剤を中心とした鎮痛薬や、軟骨を保護する作用のあるサプリメントの服用が有効です。猫は長期間服用できる鎮痛剤が少ないので、必ず副作用が出ていないかチェックしましょう。。
関節を温めたり冷やしたりする温度療法や筋肉や関節のマッサージ療法・レーザー療法・超音波療法・電気刺激療法・運動療法などのリハビリテーションは、症状を緩和させるのに有効です。
多くの場合、これらの治療を組み合わせることで苦痛なく生活することが出来ます。
症状が軽度であればステロイド剤や消炎剤の投与など内科的な治療を行い、安静に過ごさせます。
外科的な治療は、自力で歩行ができない状態や内科的治療で改善がみられなかった場合、再発を繰り返す場合などに適応となります。
設備の整った病院でMRIなどの精密検査を行い、椎間板ヘルニアの部位を独特してから手術します。手術後にはマッサージ療法などのリハビリを行う必要があります。
現在ステロイド剤やインターフェロンによる薬剤での治療が試されており、ある程度の改善や延命については効果がありますが、完治させることは非常に困難です。
外耳炎の原因によって治療法は異なりますが、抗生物質や抗真菌薬、寄生虫がいる場合には駆虫薬が必要になります。耳の状態にもよりますが、飲み薬や点耳薬による治療を行います。
また、耳を洗浄する場合もありますが、重度の炎症を起こしている場合はまず注射や飲み薬治療を行い、炎症がある程度治まってから洗浄を行います。
これは、最も状態の悪い時に耳を洗浄すると大変痛がり病院で耳を触らせなくなったり、自宅で点耳薬を使用する際に飼い主さんに耳を触らせなくなってしまうことを避けるためです。
軽度であれば特別治療は行いません。呼吸困難など生活に支障をきたすような重篤な症状がみられる場合には、整復手術により陥没した骨の整復を引き出し、金属製のプレートで胸腔を広げることがあります。
子犬での手術であれば、肋軟骨や胸骨がまだ柔らかいために比較的容易に整復出来ます。
飲み込んだ毛を排出できない猫のために、毛球除去剤という毛玉を消化管内から出しやすくする薬剤が市販されています。毛玉を除去するだけでなく、毛玉の形成を防止します。
効果があれば、舐めさせた後に排泄した時、便に毛が混じって出てきます。
骨軟骨異形成は、マンチカンで多発している遺伝性の骨関節疾患です。マンチカンは突然変異で産まれた猫を繁殖させて確立した品種で、足や耳、尾に骨格の異常を生じます。
普段異常がみられないマンチカンであっても、骨軟骨異形成の遺伝子を保有していることがあるので注意が必要です。
こうした背景から、骨軟骨異形成の遺伝子をもつ猫の繁殖を禁止している国もあります。遺伝子異常のあるマンチカンの繁殖を控えることで、この疾患を減らすことが出来ます。
マンチカンの骨軟骨異形成が、耳折れや短足に関係していると言われています。
骨軟骨異形成では骨が十分形成されず、軟骨も正常に成長しないことから耳が折れたり、足が短くなるということが起こります。
スコティッシュなど決まった品種にばかり多く見られる理由は、骨軟骨異形成によってつくられた体の特徴をもとにして、その品種が生み出されてきた為です。
繁殖する場合に短足の猫同士をかけ合わせると、子猫が死産になってしまう可能性が高いため、短足と足長の猫をかけ合わせます。
そのため、短足のイメージが強いマンチカンでも実際に足が短い子は2割ほどで、残りの8割は長足もしくは短足と長足の間の「中足」で産まれます。
また、耳の折れていないマンチカンでも骨軟骨形成異常になる可能性は高く、もし子猫の時に異常が見られなかったとしても成猫になってから突然発症することもあります。