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皆様こんにちは。
アニホック動物医療センター新横浜病院は現在、病院の待合スペースのデザインも固まり、来院された方々にとって居心地の良い空間を目指しています。ペットと一緒に安心してお待ちいただけるよう、広めのスペースを確保し、ストレスの少ない環境を整えています。さて、1月も後半に入り、寒さが厳しくなる中、ペットの関節のケアも大切です。特にシニアのワンちゃんやネコちゃんは寒さで関節がこわばりやすくなるため、温かい寝床を用意したり、軽いマッサージをしてあげると良いでしょう。関節ケアのサプリメントなどを活用するのもおすすめです。
さて、今回は尿検査についてです。
尿検査は、動物の尿を詳しく調べることで、泌尿器系や全身の健康状態を把握する重要な検査です。獣医療において、尿検査は血液検査と並ぶ基本的な診断の一つであり、泌尿器系の疾患や糖尿病などの早期発見や治療の方針決定に役立ちます。特に、尿沈渣検査では尿中の細胞や結晶、細菌などの有形成分を顕微鏡で観察することで、病気の兆候をより詳細に分析することができます。
最近、この尿沈渣検査をより迅速かつ正確に行うための機器として、IDEXX社の「セディビューDx尿沈渣分析装置*が開発され、アニホック動物医療センター新横浜病院ではこの装置を導入することにしましたので詳しく説明します。
尿沈渣検査は、尿中に含まれるさまざまな成分を分析することで、動物の健康状態を評価する重要な検査です。この検査によって、以下のような情報を得ることができます。
尿沈渣検査では、尿路(腎臓、尿管、膀胱、尿道)や腎臓の疾患の兆候を調べることができます。例えば、尿中に赤血球が多く見られる場合、尿路のどこかで出血が起きている可能性があります。また、白血球の増加は、細菌感染による膀胱炎や腎盂腎炎(じんうじんえん)などの炎症性疾患を示唆することがあります。
尿沈渣検査では、尿中の結晶を確認することで、尿路結石が発生するリスクを評価できます。尿路結石は動物に強い痛みを引き起こし、場合によっては尿道閉塞(にょうどうへいそく)を招くこともあるため、早期発見と適切な対応が求められます。
代表的な結晶の種類には以下のものがあります。
尿沈渣検査では、尿中に細菌が存在するかどうかを確認できます。細菌が検出された場合、膀胱炎や腎盂腎炎などの感染症の可能性が考えられます。感染症を早期に発見し、適切な抗菌薬治療を行うことで、動物の健康を守ることができます。
腎臓に問題がある場合、尿沈渣検査では円柱(えんちゅう)と呼ばれる特殊な沈殿物が観察されることがあります。円柱は腎臓の尿細管内で作られる構造物であり、腎炎や腎不全の診断に役立ちます。
従来の尿沈渣検査は、顕微鏡を使って手動で分析する必要があり、熟練した技術が求められる上、結果が得られるまでに時間がかかるという課題がありました。これを解決するために開発されたのが、IDEXX社の「セディビューDx尿沈渣分析装置」です。
セディビューDxは、尿サンプルをセットし、スタートボタンを押すだけで自動的に尿沈渣を分析します。従来の手作業では10分以上かかることが多かった尿沈渣検査を、わずか数分で完了できるため、迅速な診断が可能になります。
この装置は、尿沈渣の成分を高解像度デジタル画像として提示し、細胞や細菌、結晶などの識別を高精度に行います。特に細菌や結晶の分類において、従来の顕微鏡観察よりも正確な評価が可能です。
セディビューDxは尿中の細菌の有無を正確に判定します。これにより、尿路感染症の迅速な診断が可能になり、治療をより適切に進めることができます。
従来の尿沈渣検査では、検査者によって評価のばらつきが生じることがありました。しかし、セディビューDxを使用することで、標準化された検査結果を得ることができ、より信頼性の高い診断が可能になります。
尿沈渣検査は、動物の健康を維持するために欠かせない検査の一つであり、泌尿器系や全身疾患の診断に役立ちます。従来の顕微鏡を用いた手動分析には時間と技術が必要でしたが、セディビューDxの導入によって、より迅速で正確な尿沈渣検査が可能になりました。
この装置を活用することで、獣医師はより早く正確な診断を行い、適切な治療方針を決定できます。動物の健康を守るために、尿沈渣検査の重要性を理解し、最新の技術を活用することが今後ますます求められるでしょう。