アメリカンショートヘアの病気の症状、治療や予防法とは?

アメリカンショートヘアの身体の特徴とは?

アメリカンショートヘアは全体的に丸みを帯びた体型をしています。

しかし猫の中では中型種のセミコビーというタイプに分類され、成猫でも平均体重は約3〜7kgとそこまで大きくなることはありません。

祖先の猫がネズミ捕りをしていたこともあり、筋肉質で運動能力が高い猫です。そのため食欲も旺盛で、室内飼育で運動不足になるとすぐに太ってしまいます。

また猫の中では非常に毛が抜けるダブルコートの猫であり、年に2回ある換毛期にはたくさんの毛が抜けることでも知られています。

冬にはアンダーコートと呼ばれる体の内側の毛が豊富に生え、夏の姿と比べるとまるで一回り大きくなったような見た目になることもあるでしょう。

そのためアメリカンショートヘアを飼う際には、毛がたくさん抜けることを考えて飼育環境を整える必要があります。

アメリカンショートヘアがなりやすい病気とは?それぞれの症状、治療法、治療費、予防法を解説!

アメリカンショートヘアは純血種の中では丈夫な種類の猫になりますが、遺伝的にかかりやすい病気やなりやすい病気があります。

以下にご紹介しますので参考になさってください。

肥大型心筋症

肥大型心筋症は心臓の左心室という部分の筋肉が厚くなってしまう病気です。一般的に、中高齢のアメリカンショートヘアに起こりやすいとされています。

心臓の筋肉が厚くなってしまうことにより、心臓から送り出される血液の量が少なくなってしまい、身体に必要な酸素が十分に回らなくなってしまいます。

また左心房という部分に血液が溜まりやすくなり、肥大型心筋症を発症している猫は血栓症などのリスクも高くなります。

肥大型心筋症の症状

軽度の肥大型心筋症の場合は無症状なことが多いのが特徴です。

しかし中度~重度になってくると、元気が無くなったり食欲が落ちるという一般的な症状に加えて通常時の呼吸が速くなったり、少し動いただけで開口呼吸(口を開けて呼吸すること)をするようになります。

猫の呼吸数は通常であれば安静時で1分間に約20回~30回です。肥大型心筋症の場合は、呼吸状態も深く、大きくなることがあります。

体全体で呼吸をしているような状態のときは何かしらの理由で苦しさを訴えていることが多いので、早急に動物病院で診察を受けましょう。

また肥大型心筋症から血栓症を引き起こしているときは後肢不全麻痺と言って、後ろ足の血流が滞ることにより後ろ足が冷たくなったり動かなくなります。

この状態になると血栓がいつ心臓に詰まるかわからない状態、つまりいつ心臓が止まるかわからないという非常に危険な状態になりますので、休日や夜間でもすぐに動物病院で診察を受けましょう。

肥大型心筋症の治療法

肥大型心筋症の治療は、心臓機能の障害の程度によって変わりますが、基本的に内科治療になります。

定期的に心臓の精密検査を行いながら投薬治療にて経過を見ていきます。

また肥大型心筋症の進行により胸水や腹水がたまっている場合は利尿剤を使用したり、肺水腫という肺に水がたまった状態の場合は入院しての点滴治療になります。

呼吸困難が伴う場合は酸素吸入の治療が必要になりますが、酸素発生装置を購入したりレンタルをすることが可能なので、獣医の判断によって自宅での治療も可能な場合もあります。

肥大型心筋症の治療費

肥大型心筋症の治療が必要になると、一生涯、投薬が必要になるため治療費が高額になってしまうことが多いです。

一般的な動物病院で治療をした場合、1ヶ月の投薬治療費は猫の体格にもよりますが約5,000円~15,000円です。

またそれに加えて定期的な心臓の検査も費用が掛かります。その検査代は検査の必要頻度や内容にもよりますが1回につき約10,000円~30,000円にはなるでしょう。

一般的に症状が進行するに伴い検査の内容が増えたり薬の量が多くなるので治療費は高額になります。

肥大型心筋症の予防法

残念ながらこの肥大型心筋症には効果的な予防法はありません。

そのため後発猫種と言われているアメリカンショートヘアは定期検診を欠かさずに行うことが一番の予防法と言われています。

若いときに大丈夫だったからと言って、1年後にも大丈夫とは言い切れません。その1年で急激に悪化していることさえあります。

年齢に関係なく、少なくとも1年に1回は定期検診を受けるようにしましょう。

多発性嚢胞腎

遺伝的にアメリカンショートヘアには多発性嚢胞腎という病気のリスクが高いことが知られています。

この病気は腎臓に多くの嚢胞(水が溜まった袋状のもの)が出来てしまい、腎臓の機能が徐々に低下していく病気です。

約3歳から発症すると言われていますが、加齢とともに嚢胞が増えていきその結果腎臓が大きく腫大してしまい腎機能が弱ってきます。

多発性嚢胞腎の症状

多発性嚢胞腎になると、腎不全と同じ症状が現れます。具体的な症状をあげると、食欲不振・多飲多尿・脱水や体重減少などです。

身体が思うように動かないためじっとしていることが多く元気がなくなり、腎臓の機能が低下しているため尿の色が薄くなり、尿量が多くなります。

多発性嚢胞腎の治療法

現時点では、多発性嚢胞腎に対する治療法は確立されていません。そのため、主な治療は多発性嚢胞腎からの腎不全に対する治療になります。

腎不全に対する治療は、腎臓の機能を回復させるためではなく、今の腎臓の機能の温存を目的としたもの、つまり進行を抑える目的での治療です。

一般的にはたんぱく質及びリンを制限した食事療法、脱水の改善を目的とした点滴治療、そして吸着剤などの投薬治療が主となります。

また高血圧がおきている場合は血圧を下げる薬を使用したり、嘔吐がある場合は吐き気止めを使用したり、対症療法もその都度行われます。

多発性嚢胞腎の治療費

多発性嚢胞腎になり腎不全の状態になってしまうと、毎日の投薬治療が必須になります。動物病院にもより治療費は変わってきますが、投薬治療のみで毎月約3,000円~10,000円になるでしょう。

また定期的な検査にも費用が掛かりますので、1回の血液検査で約3,000円~15,000円、腎臓の超音波検査やレントゲン検査などで約10,000円~20,000円かかることが多いです。

そのほか対症療法での治療では点滴治療が必要になる場合があります。

入院での点滴治療だと1泊約10,000円~20,000円、通院での点滴になると1日約3,000円~5,000円の治療費になるでしょう。

皮下点滴の治療は状態にもより自宅で行う場合もあります。その場合は一般的に通院での治療よりも費用的な負担も少なくなります。

多発性嚢胞腎の予防法

この多発性嚢胞腎は遺伝性の先天性疾患のため残念ながら予防法はありません。

アメリカンショートヘアは遺伝的にこの病気にかかる可能性があることを意識して、定期的に検診を受けることをおすすめします。

またこの疾患は優性遺伝になることが知られていますので、両親のどちらかがこの疾患を持っていると半分の確率で遺伝してしまいます。

そのため多発性嚢胞腎を発症したアメリカンショートヘアを繁殖に使わないことが、一番の予防法となるでしょう。

アメリカンショートヘアの肥満は危険?

アメリカンショートヘアは太りやすいと言われています。

他の純血種の猫や雑種の猫も肥満は体に良いとは言えませんが、アメリカンショートヘアも肥満になることによって様々なリスクや病気の危険があります。

どのようなリスクがあるかをいくつかご紹介します。

関節炎のリスク

一番最初にもご説明したとおり、アメリカンショートヘアは猫の中でも中型種に分類されるため体つきはそこまで大きくありません。

そのため肥満になって体が重くなり、関節に負担がかかってしまうと関節炎になる危険があります。

関節炎は関節と関節をつなぐ部分のクッションの役割を果たしている軟骨という部分に炎症が起きてしまい、ジャンプしたり歩いたりという動作をスムーズに行うことが出来なくなります。

関節炎はとても痛みを伴う病気ですが、猫はその性格で痛みを我慢し平静を装ってしまうことも多くあります。そのため重症化するまで治療が開始できないこともあるのです。

アメリカンショートヘアは活発で運動能力が高い猫種になるので、元気に走り回ることのできるよう肥満からの関節炎には気を付けてあげましょう。

糖尿病のリスク

肥満が原因になる代表格の病気とも言われているのが糖尿病です。肥満は生活習慣から起こることから、生活習慣病とも言われます。

糖尿病になると膵臓から分泌されるインスリンという物質のバランスが崩れ、血糖値をうまくコントロール出来なくなります。

症状としては飲水量が増えたりそれに伴い尿量も増え、食事療法やインスリンの注射で治療を行う必要があります。

猫では中高齢以上に発症しやすいと言われていますが、アメリカンショートヘアは肥満になりやすいため若齢でも発症のリスクが高いです。

またストレスによっても体内の血糖値が急激に上がったり下がったりしますので、肥満を防ぐのはもちろん、出来るだけストレスのない生活を整えてあげましょう。

記事監修
動物病院病院 総長 藤野 洋

アニホック往診専門動物病院獣医師 藤野 洋

日本大学生物資源科学部(旧農獣医学部)獣医学科卒業。
卒業後、約20年にわたり動物病院でペットの治療に従事。
2007年(株)フジフィールド創業。動物病院とトリミングサロンのドミナント多店舗展開を行い、複数店舗の開業/運営を果たす。

日本大学生物資源科学部(旧農獣医学部)獣医学科卒業。
卒業後、約20年にわたり動物病院でペットの治療に従事。
2007年(株)フジフィールド創業。動物病院とトリミングサロンのドミナント多店舗展開を行い、複数店舗の開業/運営を果たす。

【エデュワードプレス(旧インターズー)】・トリミングサービス成功事例セミナー講師・トリミングサービス成功ガイド監修・Live trim2018 マネージメントセミナー講師 【メディア】・ラジオ調布FM ペットオーナー向け番組MC・多摩テレビ 「わんにゃんMAP」番組パーソナリティ・j:comジモトピ「世田谷・調布・狛江」出演