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人と同様に猫もくしゃみをします。しかし猫を飼ったことがないと猫のくしゃみを見ることがないため、猫のくしゃみと咳を区別できない飼い主さんもいらっしゃるようです。
飼い主さんがチンチラのくしゃみと咳を見分けにくいのは、猫は口を大きく開けて咳をしない、という特徴があるからです。くしゃみと咳を見分けるポイントは、猫の姿勢にあります。
体を伏せの姿勢のように低くして、首を思い切り伸ばして「スースー」や「シューシュー」といった音をさせていたら、それは咳です。
一方で、くしゃみはお座りの姿勢や立った姿勢などで、首を伸ばす体勢もとりません。なんの前触れもなく急に「ブシュッ」や「グス」と言った音をさせます。
そしてくしゃみは鼻の違和感から起きる症状なので、くしゃみと同時に鼻水が出ることもあります。咳の場合は鼻からは何も出ないのが普通です。
くしゃみとは、鼻の粘膜が受け取った刺激が脳の延髄にあるくしゃみ中枢へと伝わることで引き起こされる不随意運動です。不随意反運動は、自分の意志で止めることはできない生理的な反射のことです。
チンチラのくしゃみの原因は鼻の粘膜を刺激するものであり、具体的にはホコリ、化学物質、アレルギー、感染症、歯周病、鼻の中の腫瘍などがあります。これらの原因によって鼻の粘膜が刺激されるのでくしゃみという症状が出ます。
鼻の構造は人間や犬と同様で外から順に、外鼻孔(がいびこう)、鼻腔(びくう)、咽頭鼻部、そして咽頭で口と合流して食道へと続いていきます。外鼻孔以外は全て粘膜組織で内張りされていて、常に粘液などで潤った状態になっています。
鼻腔粘膜には鼻汁を分泌する細胞が並んでいて、ウィルスや細菌やホコリなどが体内に入らないように鼻汁が粘膜表面を洗い流しています。そしてこの鼻腔の奥には匂いを感じる細胞である嗅細胞が集合した嗅粘膜が存在していて、脳へと臭いの情報を届けています。
鼻腔は嗅粘膜を過ぎると細くなり、この部位を咽頭鼻部と呼びます。ここから先は口に合流し、そのまま食道へとつながっていきます。
これらの粘膜で覆われた部分は非常に敏感で、異物や病原体が体内に入ってこないようにする最初の免疫機構です。そのため、なんらかの刺激が加わるだけでもくしゃみが引き起こされ、すぐに異物を体外へ排出するようになっています。
チンチラは猫の中では短頭種と言われる部類に入ります。これは、頭蓋骨の形に対して鼻が短い猫種のことです。犬にも短頭種がいますが、犬ではパグやブルドッグなどが代表です。猫ではチンチラを含むペルシャ以外にはエキゾチックショートヘアがいます。
短頭種の場合、鼻が短いだけでなく鼻の穴の中が細くなっていることが多くあります。細く狭くなっているために、床にあるホコリなどが入ると粘膜が刺激されやすく、くしゃみが出やすいと言えます。
また室内で使用する芳香剤や防虫剤などに含まれる化学物質が鼻の中の粘膜を刺激し、くしゃみが誘発されることもあるようです。それ以外には、飼い主さんが使用する香水、制汗剤、殺虫剤なども原因となります。
猫にも人間同様にアレルギー性鼻炎があります。ハウスダストマイト、花粉などを吸引することで鼻の粘膜で炎症がおき、この炎症が刺激となり鼻水が出たりくしゃみが出たりします。
同様にアレルギー性の喘息も猫では多く見られます。この場合はくしゃみではなく咳が症状として多く見られます。
アレルギー性鼻炎は人ではあまり命に関わる病気ではないと思われていますが、猫では重症化すると呼吸困難に陥り、命に関わることがあります。
特にチンチラなどの短頭種では鼻の中が細く狭い構造であるため、炎症で粘膜が腫れてしまうとさらに狭くなり鼻が詰まって呼吸が苦しくなります。
犬は鼻が詰まると口で息をすることができますが、猫は呼吸に関わる筋肉が犬ほどに発達していないため、口で息をすることが非常に不得意です。
そのため鼻が詰まってしまうと、始めは止むを得ず口で呼吸をするのですが、呼吸に関わる筋肉がすぐに疲弊し呼吸ができなくなり、呼吸困難から亡くなるケースもあるのです。
チンチラがなんのアレルギーを持っているのかは血液検査で調べることができます。アレルギー性のくしゃみが疑われる場合には、この検査で診断することも可能です。
猫でくしゃみを引き起こす感染症には様々な種類があります。主な原因は、カリシウィルス、ヘルペスウィルス、エイズウィルス、クリプトコッカス、マイコプラズマ、クラミジアなどがあります。
これらの感染症は、外出する猫では他の猫や環境から感染することが多く、完全室内飼育の猫では親猫やペットショップですでに感染していて、家に迎え入れてから発症することが多いです。
それぞれの感染症に特徴的な症状はなく、くしゃみをしたり膿のような鼻水を出したり、涙や目やにが多い、といった共通した症状が見られます。また食欲はある場合もない場合もあり、感染症ごとではなく感染症の重症度によって症状が変わります。
猫はご飯を食べる時、味ではなく匂いを重要視するため、くしゃみや鼻水などの症状で鼻が詰まってしまうとご飯を全く食べなくなります。鼻が詰まって呼吸が苦しく、そして匂いを感じなくなるために食欲がなくなり、どんどん衰弱してしまうのです。
くしゃみは鼻の問題で起こることなのに、原因が歯周病というのは少し矛盾を感じる方もいるかも知れません。しかし実際に起こり得ることなのです。
口の中に生えている歯は、目に見えている部分だけでなく根っこがあります。この歯の根は見えている部分の約2倍ほどの長さがあります。下の歯は顎の骨に刺さるように生えていて、上の歯も同様に頭蓋骨の上顎に刺さるように生えています。
上顎の歯の根の近くには鼻腔が通っています。そのため、歯周病で歯根が炎症を起こすとその炎症が鼻腔にまで波及し、鼻水が分泌されてくしゃみが出るようになります。
歯根が化膿してしまう根尖膿瘍(こんせんのうよう)になると、鼻からくしゃみとともに膿や血液が出てくることもあります。
今までくしゃみなどしたことがなかったのに、高齢になってくしゃみが出るようになってきた場合、鼻の中にデキモノができている可能性があります。このデキモノが大きくなって粘膜を刺激するためにくしゃみが出ます。
鼻の中にできるデキモノには良性の炎症性ポリープもありますが、多くの場合は悪性腫瘍です。リンパ腫、腺癌、扁平上皮癌などです。これらは鼻の中にできているので外から見てもなかなか見つかりません。
レントゲン検査やCT検査などで鼻の中を詳細に調べることで発見でき、また一部の細胞を採取することで診断することが可能です。
チンチラのくしゃみの原因としては、病気も多く考えられます。しかしチンチラがくしゃみを1回したらすぐに動物病院に行く必要はなく、様子を見ても大丈夫な場合もあります。
動物病院に行くべきくしゃみかどうかは、くしゃみの頻度と、分泌物があるかないかで区別してみましょう。
例えば、鼻水は出ておらず、2~3回続けてくしゃみをしておさまる場合などは、ホコリなどによって一時的にくしゃみが出ただけの可能性が高いです。この場合は様子を見ても問題ないでしょう。
くしゃみはすぐにおさまるけれど、鼻水が垂れている場合には、感染症やアレルギーなどの炎症を伴う病気が疑われますので、重症化する前に一度動物病院を受診した方が良いでしょう。もちろん鼻水が多量に出ている場合も病気にかかっていることが考えられます。
鼻水は出ない、1日に数回くしゃみを見かける、といった軽い症状でも1ヶ月以上これが続く場合には腫瘍などの可能性が考えられます。そしてくしゃみの頻度が徐々に増えてくる場合にも腫瘍が疑われるので、早めに動物病院を受診しましょう。
病気ではない、ホコリなどによるくしゃみは少しの工夫で予防することができます。チンチラの細くて狭い鼻に刺激を与えないために、環境を整えることが重要です。
チンチラのいる部屋はこまめに掃除し、ホコリなどの吸引をなるべく防ぎましょう。またホコリが発生しやすいラグやクッションなどはこまめに掃除機で吸引して、清潔に保つようにします。
くしゃみが出る感染症の多くは、チンチラにストレスが加わったときなどに発症します。精神的ストレスもそうですが、身体へのストレスも免疫力を下げる要因になります。
例えば寒さ、暑さ、高湿度、部屋の広さに比して過剰な多頭飼育などが猫へのストレスとなります。引越しなどの環境の変化もストレス要因です。これらの要因をなるべく取り除き、チンチラにストレスをかけないよう配慮することが予防につながります。
特に猫は寒さに弱いので、冬は感染症を発症する可能性が非常に高くなります。冬は猫が潜り込める布団などを用意し、寒さで震えることがないようにしましょう。
アレルギー性のくしゃみの場合も、アレルゲンとして疑われるものをなるべく排除することで予防ができます。例えば花粉に対してアレルギーが疑われる場合は、その季節になるべく窓を開けない、空気清浄機を常に使用することで症状を緩和できるでしょう。
歯周病によるくしゃみを予防することはなかなか難しいのですが、チンチラの歯の状態を常に把握しておくことは大切です。口臭が気になる、歯の付け根の歯肉が赤い、などは歯周病の可能性があります。
自宅での歯磨きも歯周病の進行を遅らせることができますし、また動物病院で適切な歯科処置を受けることで根尖膿瘍などを未然に防ぐことも可能です。
腫瘍によるくしゃみは残念ながら予防する方法はありません。しかし早期発見はできるため、くしゃみが目立つようになってきたら早めに動物病院を受診しましょう。
ただし、鼻の中を詳しく診るためには一般的な動物病院の検査機器では不可能な場合も多いので、症状が長く続いているのであれば、CT検査機器などのある大きな動物病院を受診することも検討しましょう。