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スコティッシュフォールドは折れ耳で丸顔が特徴の猫種です。この折れ耳は他の猫種では見ない特徴ですが、これは耳の形を作っている軟骨の形成が異常であるためです。この異常のことを骨軟骨異形成症と言います。
骨軟骨異形成症とは、遺伝子異常によって起こる骨と軟骨の成長異常で起こる様々な症状の総称です。軟骨は主に骨と骨の間(関節)や柔軟性が必要な部分(例えば耳)に多く存在しているため、様々な症状はこれらの場所に多く出るのですが、折れ耳も骨軟骨異形成症の症状の一つです。
耳はほとんどが軟骨で形成されているので、軟骨の成長がうまくいかない骨軟骨異形成症の場合に耳が変形してしまい折れ耳になるのです。
骨軟骨異形成症の原因は遺伝子異常です。常染色体の上に存在するFd遺伝子の変異によって軟骨の成長異常が生じ、骨軟骨異形成症を発症することが分かっています。
スコティッシュフォールドの骨軟骨異形成症の発症を左右するFd遺伝子ですが、遺伝子の組み合わせによって発症するかしないかが決まります。そのため、スコティッシュフォールドであっても折れ耳にならない、立ち耳の猫もいるのです。
常染色体は1対2本で存在していて、人では22本対で計44本ですが、猫ではこの常染色体は19対38本あります。そしてこの染色体上にFd遺伝子は存在しています。
スコティッシュフォールドの折れ耳、立ち耳となる遺伝子の異常を説明するときには、折れ耳(軟骨異常)を発現するのが「Fd」で、発現しないのを「fd」と表現します。
遺伝子の組み合わせによって軟骨異常の程度が少しずつ異なります。「Fd/Fd」「Fd/fd」では耳は折れて骨軟骨異形成の特徴的な見た目となりますが、「fd/fd」では耳は立ったままで見た目には普通の猫とかわりません。
立ち耳同士のスコティッシュフォールドを交配すると、仔猫は全て立ち耳となります。立ち耳の場合の遺伝子は「fd/fd」なので、これら同士を掛け合わせても「Fd」を含む猫は生まれないからです。
スコティッシュフォールドには折れ耳以外の病気で骨瘤(こつりゅう)と呼ばれるものがあります。これは、骨軟骨異形成症では軟骨がうまく作られないために起こる症状です。
関節部分での軟骨が正常に作られず、動くたびに関節内の少ない軟骨がすり減り、骨同士が直接ぶつかるようになります。骨同士はぶつかることで炎症が起き、この炎症によって骨が異常に成長します。異常に成長した骨は正常な成長とは異なるため、形もいびつです。
この形のいびつな骨を骨瘤といい、軟骨が成長しない、それによって骨同士がぶつかり炎症を起こす、そして炎症のせいで骨が異常に成長する、最終的に関節が変形する、といったサイクルで出来上がります。
垂れ耳のスコティッシュフォールドでは100%骨瘤が発症すると考えられますが、立ち耳のスコティッシュフォールドは骨軟骨異形成症を発症しない遺伝子のため、骨瘤はできません。
スコティッシュフォールドの寿命は10~13歳とされています。猫全体の平均寿命が15歳前後であるのに対してやや短めです。その理由はやはり遺伝子異常を抱えている猫種であることが関係しているでしょう。
立ち耳と折れ耳のスコティッシュフォールドで寿命を比較した文献はありませんが、遺伝子異常による異常がある場合とない場合では多少の差はあるかも知れません。
折れ耳が可愛いからスコティッシュフォールドを買おうと思う人は多くいるでしょう。そのため、ペットショップで売られているスコティッシュフォールドは折れ耳の個体から売れて行くでしょう。
耳が折れていなくても丸顔でずんぐりとした体型が気に入ってもらえれば買ってもらえますし、立ち耳の方が丈夫であるとの認識から購入する人もいます。売れ残りをなくすためにショップも立ち耳のスコティッシュフォールドをやや低価格で販売しています。
日本では生まれて間もない仔猫も販売できるなど、世界の中でも法整備が遅れています。また日本人の多くが新しいもの好きで、「小さければ小さいほどいい」つまり「まだ性格の決まる前の無垢な状態ほどいい」という感覚を持っていると言われています。
そのため、売れ残って体の大きくなったスコティッシュフォールドは、ヨチヨチ歩きの仔猫に比べて自己主張が強くなっているために売れにくくなっているのが現実です。
売れ残ったスコティッシュフォールドは、ペットショップの方針にもよりますが値段が割引され、早く売れるように工夫されます。その時に立ち耳の場合、スコティッシュフォールドであるという血統的な優位性が低くなるため、値引率がやや高くなります。
折れ耳のスコティッシュフォールドの仔猫の販売価格はおおよそ20万~30万円前後です。立ち耳であっても値段が変わらないショップもありますが、おおよそ5万円前後は低い値段で売られています。
さらにペットショップで売れ残ると、4ヶ月齢を過ぎた頃から10%ほど値段が安くなります。さらに6ヶ月齢を過ぎるとさらに値引きがされます。これはショップの仕入れ値によりますので、何%とは決まっていません。
1歳を超えてペットショップで売られている場合はほぼありませんので、値段は不明です。もし成猫の立ち耳のスコティッシュフォールドが購入したい場合には、個人ブリーダーやボランティアによる里親募集などを検討しましょう。
スコティッシュフォールドであれば仔猫じゃなくてもいい、という人はブリーダーや保護猫団体などから引き取り里親になることを検討してみてください。
近年の日本で問題になっているのは、人気猫種を何の知識も持たず近親交配も気にせず無計画に繁殖させ、安値で売りさばく悪徳ブリーダーの存在です。それらのブリーダーが売れ残った猫をケージに閉じ込めたまま経営破綻する場合があります。
また、可愛いからと猫を飼い、仔猫でなくなると興味が薄れ、新たに仔猫を買い漁る一般の飼い主もいます。避妊手術や去勢手術を行わずに多頭飼育をするため、やはり無計画に増えてしまい飼育困難となる多頭飼育崩壊といったことも問題となっています。
これらの廃業したブリーダーや多頭飼育崩壊の現場で残された猫たちを引き取るのが保護猫団体です。日本では正式なNPOなどの団体は少なく、個人の善意で動いている団体がほとんどです。
これらの団体では成猫であっても保護しており、購入費用はかかりません。ペットショップでの購入ではなく、成猫になっていてもいいからスコティッシュフォールドを引き取りたいと思う人は、問い合わせてみると良いでしょう。
こういった経緯の里親ではなく、ブリーダーから直接購入することもできます。その場合は、先ほど言った悪徳ブリーダーではないことを見極める必要があります。
ブリーダーを探すのはインターネットで探すのが1番早い方法です。ただしホームページだけでそのブリーダーが悪徳業者でないことは確認できません。ただし最初にチェックする項目は値段で、あまりにも安く売られている場合には注意が必要です。
猫を健康に保ち、そして健康な仔猫を産ませるためには様々な工夫が必要です。飼育スペースの確保、良質な食事、また血統維持のための健康な両親猫、ワクチン接種や消化管寄生虫の駆除と予防といったことが必要なのです。
これらを全て満たした上で繁殖をさせると当然ながら経費がかかります。そのため例えば1頭5万円などで販売することは大赤字となるため、通常のブリーダーであれば不可能です。もしこの価格帯で売っているブリーダーがいたら、それは飼育環境に疑いを持ちましょう。
もちろん値段だけで全てを見通すことは出来ないため、購入を検討する際には必ず店舗もしくはブリーダー宅を訪ねましょう。通常であれば事前に連絡をし、直接猫を見たいと言えば案内してくれます。直接会うことを拒む場合には理由がありますので、辞めておいた方が無難です。
ブリーダー宅や店舗に行ってからチェックするポイントは、飼育環境、猫の健康状態です。飼育環境については実際に見せてもらえない場合もあるので判断が難しいところですが、実はわかりやすい指標があります。
猫の飼育環境を推測するには、猫の匂いを嗅いでください。「臭い」と感じたら飼育環境はあまり良くないと考えて良いです。とても単純なのですが、意外にも間違うことが少ない指標です。
猫の匂いなんて嗅いだことがないから知らない、という場合には、知り合いの飼っている猫の匂いと比べてみてください。きちんとした環境で飼育されている猫は決して臭くありません。
劣悪な飼育環境で飼われている猫は、排泄物の匂いが染み付いています。こまめに掃除をしてもらっていないからです。そして多頭で狭い部屋やケージで飼育していると、フードの食べ残しなども体に付着し独特の匂いを発します。
「臭い」と感じたらそのブリーダーから購入するのは、一度見送って他を検討しましょう。
次に猫の健康状態を確認するには、目やに、鼻水、お尻に便などが付着していないか(下痢をしていないか)を見てください。仔猫であっても健康であれば目やにも鼻水も出ませんし下痢もしません。
自宅に迎え入れてから体調がどんどん悪化して亡くなる、といった事態を避けるためにも、ブリーダー宅ですでにそのような症状が出ている場合には、一度購入を見送るようにしましょう。
スコティッシュフォールドは多くが短毛で、長毛は珍しいです。さらに立ち耳でスコティッシュフォールドで長毛となると珍しいと言えます。そのため、見た目からはほとんどスコティッシュフォールドとは分からないでしょう。
これまでの内容をご覧になって立ち耳のスコティッシュフォールドを見たいと思った方も多いのではないのでしょうか。ここでは立ち耳のスコティッシュフォールドの画像をいくつか紹介したいと思います。
ケージの柵に前足をかけている写真です。「出してぇ~」と言ってるのかな?
カーテンをよじ登ろうとしています。気分はスパイダーマン!
ベルちゃん😻
— Masaki (@maa_akun07) 2018年9月8日
今日から家族になりました!#猫 #ねこ #ネコ #スコティッシュフォールド #スコティッシュフォールド立ち耳 #子猫 #レッドタビー #cat #cats #kitten #scottishfold #猫との暮らし #猫がいる生活 #猫好きさんと繋がりたい pic.twitter.com/n46Yw6oGpZ