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昔から現代にいたるまで、犬は人間に寄り添い、共に歩んできました。人間にとって欠かすことができない犬でしたが、様々な問題があり、犬の原種を保存するために登録、管理するためのベースとなる「犬種のスタンダード」が作成されました。
人間は狩猟に行く時の共として、家畜を放牧する時の見張り役、家を留守にするときの番犬として等、役割を犬に与え遂行しやすいように、体格、習性、毛並み、行動量を原種の犬から品種改良により変化させてきました。
現代では狩猟、放牧する人口も減少し、愛玩犬として家の中で共に暮らすことも多くなったため、小型やおとなしい犬種に品種改良、遺伝子操作され、犬種は多種多様となってきました。
近年、品種改良や遺伝子操作がなされたため、新しい犬種が増え、新種の繁殖も盛んで、もてはやされる一方で、古来の原犬種がおざなりになっていたため、絶滅しないよう、犬種の保護をしようというところから始まったのが「犬種のスタンダード」です。
犬種スタンダードはケネル(犬小屋、犬舎)クラブという団体が管理しています。主に純粋犬種の犬籍登録、血統書の発行、犬の飼育指導、ドッグショーの開催、その他犬に関する資格の認定や指導を行っています。
世界で数種類の団体があり、大きなもので3団体あります。
日本はJKC(ジャパンケネルクラブ)としてFCIに加盟しており、日本の犬種スタンダードもFCIの統括・管理されているデータに基づいて運営・管理しています。
また、日本特有の犬種(秋田犬、土佐犬、紀州犬等)の定義をFCIに提出しています。加えてKC、AKCとも犬籍を相互で承認しあっています。
FCIは344種類(2017年7月時)の犬種に分類しており、日本では200種を登録しています。FCIの分類に基づき、1つの犬種を様々な項目で規定(標準化)し、分類したものとなります。
系統別に1~10G(グループ)に分類されており、分類項目は以下の通りです。
家畜を放牧する際、一か所にまとめたり、畜舎に誘導したり、他動物から家畜を守る役割の犬です。有名なところではコーギー、シープドック、シェパード、コリー系と、体力がありあふれ、駆け回っている種類になります。散歩量が多い犬種と言えましょう。
番犬、警護・救護等、人間のために働く犬です。セント・バーナード、シュナウザー、土佐、ボクサー、ブルドック等、名前を聞くだけで「THE 番犬」というような頼もしい犬が集まっています。
テリアと聞くと、小型でかわいい室内犬を想像してしまうのですが、実は違います。Terra(ラテン語で地面を意味する)が語源で、穴の中に住む小害獣(キツネ、ネズミ、カワウソ等)用の猟犬です。最後にテリアとつく名前はすべてこの分類です。
今でこそかわいい室内犬のヨークシャー・テリアでさえ、元々は家屋を荒らすネズミをとらえるために作られた犬です。想像がつきませんよね。
知らない人はいないくらい有名な犬種、ダックスフンドです。短い脚が特徴で猟犬として中世から狩りに伴われており、3サイズに分けられています。
一番大きいサイズのスタンダードは、もともとアナグマを狩るための犬種で、9kgくらいです。この大きいサイズは日本の登録数が2013年で、ミニチュアダックスフンドが27,314に対しスタンダードダックスフンドは66と圧倒的に少ないです。
ミニチュアダックスフンドは3サイズの中で、一番血統書の登録(日本)が多く、室内犬として飼われていることが多いと思います。3.5~4.8kgと小型ながらアナグマ狩猟にも加わりますし、ウサギのような小動物を狩るのにも対応します。
カニンヘダックスフンドは超小型で3.5kg以下と定められています。超小型犬でとにかくかわいいので愛玩犬として登場したのかと思いきや、ウサギ等の小さい動物の狩猟用として狩りに伴われています。
カニンヘンダックスフンドは小さいながら、3サイズの中で、狩りに一番積極的であるとされています。
柴犬、秋田犬、紀州犬、甲斐犬のような日本犬とシベリアンハスキー、チャウチャウ、ポメラニアンが属しています。
スピッツと言ったら口がとがっているのが特徴ですが、ハスキーもスピッツ族ですし、チャウチャウやポメラニアンの祖先でもあるので、このグループに分類されています。
ビーグル、ダルメシアン等、優れた嗅覚と響く吠え声により狩猟に参加している犬です。
ビーグルはスヌーピーのモデルになったくらい有名で、愛嬌があります。
飼うときは散歩量が多いということ、吠えるのが仕事だということ、気になった匂いに固執してしまうということを念頭に置きましょう。
ヨーロッパの鳥猟で獲物の位置を特定することに優れた能力を発揮してきた犬種で、20~30kg台の大型です。
スパニエル・レトリバー系の犬種です。スパニエルは垂れ耳、耳の長い毛が特徴で鳥猟時鳥を追い立てる役割です。レトリバーは人間に対し従順で行動力もあり、獲物回収役に適しています。
シーズー、チワワ、パグ、プードル、フレンチ・ブルドッグ、マルチーズ、パピヨン等、小型であり、室内で家族として飼われる犬種です。現在日本で人気且つよく飼われている犬種です。
視覚と走る能力に長けている猟犬です。
上記10Gに分かれており、且つ1犬種につき「原産地」、「用途(狩猟等の役割)」、「沿革(歴史)」、「一般外貌(外貌、特徴)」、「習性/性格」、「毛色」、「サイズ(体高・体重)」が決められています。
上記はベースですが、一般外貌も頭部、鼻、マズル、目、頸、尾、歩様で詳細に分かれて記載されており、それから1つでも外れているようであれば欠点、失格の定義もあるので、ドックショーに参加する場合は必読する内容としています。
犬種スタンダードの「グループ9」の愛玩犬に属しているチワワはその犬種の通り、小さくかわいいですよね。しかし、犬種スタンダードに規定されているチワワを見ると、チワワの詳細が分かってさらに身近に感じられると思います。
犬種スタンダードのチワワを紐解いていきましょう。今回はJKC(ジャパンケンネルクラブ)から発行されている犬種スタンダードを参考にしました。
メキシコ
コンパニオンとされています。コンパニオンアニマルとは、長年にわたり人間と共に生活してきて、習性、性格が十分に知られている、伴侶、家族と位置付けられています。
チワワは、紀元前のマヤ文明時代、9世紀位、またはコロンブスのアメリカ大陸発見時等、諸説ありますが、かなり昔から存在していました。もともとは野生でしたが、原住民に捕らえられ家畜化したと考えられています。
メキシコの「チワワ」という地名のところで発見されたので「チワワ」と名付けられたそうです。その後メキシコからアメリカに渡り、アメリカで現在のチワワの外貌が固定化しました。
アメリカのケンネルクラブに1900年初めに登録されたものの、戦争が起きたり、牧畜・狩猟が多い時代で、それに伴って大型の牧羊犬や狩猟犬は多いものの、世界最小のチワワに需要は無く、個体数も少ないものでした。
1960年以降は戦争も終了し、高度成長もさらに著しく、愛玩犬にも注目が集まり、個体数が増え、現在では国内外ともに血統登録数上位に入るほどになりました。
アップルヘッド(丸くリンゴのような形をした頭の形)が特徴です。適度な長さの尾であり、尾先は腰に向かってカーブするよう高く保たれている状態が良いとされています。
※頭部、鼻、マズル、目、頸、尾、歩様は省略しました
陽気な性格で勇敢です。家族と他人を分けるので、番犬としては優秀なのですが、見たことが無い人やものに対して臆病になるので、室内で飼っていると、誰かが来ただけで吠えることもあります。
チワワは様々な色があり、単色、2種類、またはそれ以上と、十犬十色です。レア色としてブルー(青みがかかったグレー)や薄いベージュ色があります。
しかし、マール色(マーブル柄)のチワワはマール遺伝子を持っており、この遺伝子同士の交配は健康障害を起こすとされているので、認められていません。
この犬種の体高は考慮されません。理想体重は1.5~3kgです。500g~1.5kgも許容はされますが、500g未満、3kg超えは失格とされます。
KC(イギリスのザ・ケネルクラブ)、AKC(アメリカンケネルクラブ)も犬種スタンダードがあります。KCは狩猟ができるか否かで2つに分類され、AKCは用途別の7分類、FCIは系統重視の10分類となっています。
AKC、FCIともに最古のクラブKCを参考にしていますが、独自に犬種の情報を集計管理しています。国によって犬籍の相互承認をしているのもその国によります。
よって、FCIに加盟している日本のスタンダードとアメリアのスタンダードは若干違いがあるかもしれません。しかし、アメリカとヨーロッパと日本で外貌の好みはあれども、スタンダードは若干の差しかないと思われます。
JKCは血統書の付与、登録数を管理する団体でもあります。JKCの犬種スタンダードを基に、血統書が付与されます。
ペットショップから購入するときに血統書がついているのであれば、チワワ自体が安くないので、嘘が無いかどうか見分けるためには参考にするのは良いかと思います。
しかし参考にしても、自分の好みとスタンダードは別問題です。その犬の個性もあります。チワワは勇敢であると記載されていても、人見知りで何に対してもおびえる子かもしれませんし、すごくおとなしい子かもしれません。
ブリーダーとなるとスタンダードは必須ですが、自分で長年を共にする家族となる犬です。目が小さくても、尾がスタンダード通りじゃなくても、自分が実際に見て「この犬が私の思うチワワだ」と思った犬を選んだ方が良いと思います。
たとえその犬がスタンダードから若干外れそうでも、自分が一緒に暮らしたい、好きなチワワはその犬なのですから。