【2024年最新】腹部超音波診断の有用性:ペットの健康を守るために知っておきたいこと

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腹部超音波診断の有用性:ペットの健康を守るために知っておきたいこと


【はじめに】腹部超音波診断とは何か?

腹部超音波検査の基本

腹部超音波検査は、体内の臓器や構造を画像化するために音波を利用する非侵襲的な診断方法です。この検査は、音波を体内に送り込み、その反響を画像として視覚化する仕組みで、特に腹腔内の臓器(肝臓、腎臓、膵臓、脾臓、腸など)の状態を評価するのに優れています。X線やCT検査とは異なり、放射線を使用しないため、ペットの体に負担が少なく、安全性が高いのが特徴です。

検査はゼリーやアルコールを塗布したプローブを腹部に当てて行うため、痛みやストレスが少ないのも大きなメリットです。また、即座に結果を確認できるため、迅速な診断が求められる緊急時にも適しています。

ペットの健康管理における重要性

腹部超音波検査は、病気の早期発見や健康状態のモニタリングにおいて、極めて重要な役割を果たします。ペットは自身の不調を言葉で伝えられないため、飼い主が気づかないうちに病気が進行していることがあります。超音波検査は、症状が現れる前に異常を発見し、早期治療につなげる手段として活用されています。

さらに、慢性疾患の管理や治療効果の確認にも有用です。例えば、腎臓病や肝疾患などの進行状況を定期的に確認することで、適切な治療方針を維持できます。

ペットの健康を守るために、この非侵襲的な診断法の重要性を知り、積極的に利用することをおすすめします。

【第1章】腹部超音波診断でわかること

腹部超音波診断では、腹腔内にある複数の重要な臓器の詳細な状態を把握できます。それぞれの臓器に対して以下のような診断が可能です。

肝臓・胆のう

超音波検査は、肝臓や胆のうの構造や異常を評価するのに非常に効果的です。肝臓腫瘍、脂肪肝、肝硬変などの病変が検出されるだけでなく、胆管閉塞や胆石の有無も確認できます。また、胆のう内に異常な液体や腫瘍が存在する場合も、超音波で詳細に調べることが可能です。これにより、早期の介入が可能になり、治療の選択肢が広がります。

腎臓

腎臓は超音波検査で評価しやすい臓器の一つです。腎結石や腎腫瘍、嚢胞の有無を明確に確認できるため、慢性腎臓病や腎不全の初期段階で異常を発見することができます。超音波は、腎臓の形状やサイズの変化も評価できるため、症状が現れる前の段階での病気の検出が可能です。

膵臓

膵臓の診断は他の臓器より難しい場合がありますが、急性膵炎や慢性膵炎、膵腫瘍の疑いがある際には非常に有用です。膵炎は早期の診断と治療が不可欠であり、超音波を用いることで膵臓の腫れや異常なエコー像を検出し、迅速な対応を促せます。

脾臓

脾臓の腫瘍や異常血流も超音波検査で確認できます。脾臓の腫れや出血が疑われる場合、速やかに診断を行うことで、適切な治療法を選択できます。また、脾臓は腫瘍性疾患の兆候が見られることが多いため、定期的な検査が推奨されます。

腸や膀胱などの検査

腸閉塞や腫瘍性病変、炎症の有無も超音波で確認できます。特に慢性的な嘔吐や下痢、体重減少がある場合、腸の壁の厚さや内部の構造を観察することで問題を特定できます。

膀胱

膀胱結石や膀胱腫瘍の診断には超音波が広く利用されます。排尿時の異常が見られる場合、超音波で迅速に原因を特定することが可能です。膀胱の状態は腎臓の健康にも影響を及ぼすため、腎機能と併せて検査することが重要です。

体液の異常検出

超音波は、腹腔内の異常な体液(腹水や胸水)の存在を迅速に診断するのにも役立ちます。これにより、感染症や腫瘍性疾患、心臓疾患など、腹水の原因となる重大な病気を早期に特定することができます。また、体液の量を正確に測定し、治療効果をモニタリングする際にも有用です。

【第2章】腹部超音波診断が必要なケース

健康診断の一環として

腹部超音波検査は、定期的な健康診断の重要な一部として活用されます。ペットは言葉を話せないため、日常生活では健康状態の変化に気づきにくいことがあります。特にシニア期に入ると、内臓の働きが低下するリスクが高まるため、臓器の状態を確認する超音波検査が推奨されます。

例えば、6~7歳以上の高齢の犬や猫では、腎臓や肝臓の慢性疾患が発生しやすく、症状が進行してからでは治療が難しいことがあります。定期的な超音波診断を行うことで、病気の兆候を早期に発見し、適切な治療を開始することが可能です。

また、特定の犬種や猫種は、遺伝的に腫瘍や内臓疾患のリスクが高いため、定期的な腹部超音波検査が特に有効です。

症状が現れた場合

ペットに以下のような症状が見られる場合、腹部超音波診断は病気の原因特定に役立ちます。

  • 嘔吐や下痢:胃腸炎、腸閉塞、腫瘍の可能性を評価。
  • 食欲不振:膵炎や肝疾患の可能性を確認。
  • 体重減少:内臓腫瘍や慢性疾患の有無を調査。
  • 頻繁な排尿や排尿困難:膀胱結石や膀胱腫瘍の診断。

これらの症状が軽度であっても、腹部超音波検査により原因を特定できれば、症状の悪化を防ぐことができます。

特定の疾患が疑われる場合

診察や血液検査で特定の臓器に異常が示唆された場合、超音波検査はその臓器の状態を詳細に調べるために行われます。例えば、血液検査で肝酵素値が高い場合、超音波検査を用いて肝臓の腫瘍や炎症、脂肪肝の有無を確認します。

また、腫瘍性疾患が疑われる際には、超音波検査で腫瘍の大きさや位置、他の臓器への転移を調べることで、適切な治療方針を立てることが可能です。

緊急事態への対応

急性の症状が見られる場合、腹部超音波検査は緊急時の診断手段としても非常に有用です。たとえば、腹部の激痛や呼吸困難がある場合、内出血や臓器破裂、腸閉塞などの生命を脅かす状態を即座に評価できます。

緊急時には、迅速な判断がペットの生死を分けることもあります。超音波検査は、短時間で正確な診断を提供できるため、緊急手術や適切な治療の準備を迅速に進めることが可能です。

【第3章】腹部超音波検査の手順と注意点

検査の準備

腹部超音波検査を行う前に、飼い主が準備すべきことを確認しておくことが重要です。

  1. 絶食の必要性
    通常、検査前の8~12時間は絶食が求められます。胃や腸に内容物が残っていると、臓器の視認性が低下し、正確な診断が難しくなるためです。ただし、水分摂取は制限されない場合が多いので、獣医師に事前に確認してください。
  2. 排尿の管理
    膀胱の検査が予定されている場合、検査前に排尿を控えるよう指示されることがあります。膀胱が空の状態では、正確な評価が難しいためです。

検査の流れ

腹部超音波検査は、比較的短時間で完了する非侵襲的な診断方法です。

  1. 準備段階
    検査を行う部分(通常は腹部)の毛を剃り、ゼリーを塗布します。ゼリーは超音波の反射を防ぎ、クリアな画像を得るために使用されます。
  2. プローブの操作
    獣医師がプローブを腹部に当て、臓器や構造を観察します。このプロセスでは、動物がリラックスしていることが重要です。
  3. 検査時間
    検査自体は15~30分程度で終了します。状況によっては、特定の臓器を詳細に観察するため、少し長引く場合もあります。

飼い主が気をつけること

腹部超音波検査の際に飼い主が注意すべき点について、以下のポイントを確認してください。

  1. ペットを落ち着かせる
    検査中、動物が緊張して体を動かしてしまうと、検査の正確性に影響を及ぼします。普段と同じ声かけやなだめ方でペットを安心させましょう。
  2. 検査後のケア
    検査が終わった後は、特別なケアは通常必要ありませんが、絶食が続いている場合は、食事を与えられるよう準備しておきましょう。
  3. 獣医師とのコミュニケーション
    検査結果についてわからないことがあれば、その場で質問し、不明点を残さないようにしましょう。

【第4章】腹部超音波診断の結果とその対応

結果の読み取りと説明

腹部超音波検査の結果は、その場で確認できる場合がほとんどです。獣医師は画像を見ながら、以下のポイントを飼い主に説明します。

  1. 臓器の状態
    肝臓や腎臓、膵臓などの臓器が正常かどうか、腫れや異常な形状がないかを確認します。例えば、腎臓に腫瘍が発見された場合、その位置や大きさが重要な診断ポイントになります。
  2. 異常の有無
    腫瘍、結石、炎症、腹水などが見つかった場合、それらの特徴を詳細に説明します。異常があれば、次の段階としてどのような追加検査や治療が必要かを提案します。
  3. 進行度の評価
    慢性疾患の場合、超音波画像を使って病気の進行度を評価します。例えば、慢性腎不全では腎臓のサイズや表面の状態を確認することで、病期を判断できます。

必要な追加検査や治療

超音波検査だけで確定診断が難しい場合、追加検査が必要になることがあります。以下は代表的な追加検査と治療の例です。

  1. 血液検査
    超音波で臓器に異常が確認された場合、その原因や全身状態を評価するために血液検査が行われます。例えば、肝臓に腫瘍が見つかった場合、肝機能の状態を確認するための肝酵素値測定が行われます。
  2. CTスキャンやMRI
    腫瘍の位置や転移の有無を詳細に確認するために、高解像度の画像診断が必要になる場合があります。これにより、手術の計画が立てやすくなります。
  3. 生検(組織検査)
    腫瘍や異常な組織が見つかった場合、その性質を確認するために生検が行われることがあります。超音波ガイド下で安全に組織を採取することが可能です。
  4. 治療の実施
    治療が必要な場合、具体的な計画が立てられます。例えば、結石が見つかった場合には、外科手術や特殊な食事療法が提案されます。腫瘍の場合には、手術や化学療法、放射線治療が選択肢となります。

【第5章】腹部超音波診断の利点と弱点

利点

腹部超音波診断には、ペットの健康管理や病気の診断において多くの利点があります。その中でも特に重要なポイントを以下にまとめます。

  1. 早期発見が可能
    腹部超音波診断は、病気の症状が明確に現れる前の段階で異常を見つけるのに役立ちます。例えば、腫瘍が小さな段階で発見されれば、手術や治療の成功率を大幅に向上させることができます。また、慢性疾患の進行度を把握し、悪化を防ぐ対策を講じることが可能です。
  2. 負担が少ない
    非侵襲的で痛みを伴わないため、ペットにとってストレスが少ない診断法です。特に高齢のペットや体力が低下しているペットに対して、安全かつ迅速に診断を行うことができます。飼い主にとっても、麻酔を伴う検査に比べて安心感があります。
  3. リアルタイムで結果がわかる
    超音波診断は、その場で獣医師が画像を確認し、結果を即座に共有できるという利点があります。この即時性は、緊急時の対応や治療計画の立案において非常に有用です。
  4. コストパフォーマンスが高い
    CTやMRIなどの高度な画像診断に比べて、腹部超音波検査は費用が抑えられる点も魅力的です。必要に応じて追加検査を組み合わせることで、効率的かつ経済的な診断が可能になります。

弱点

一方で、腹部超音波診断にもいくつかの弱点が存在します。そのため、他の診断方法と併用する必要がある場合があります。

  1. 診断が難しいケース
    小さな腫瘍や微細な異常は、超音波の解像度では検出が難しい場合があります。また、腸内ガスや肥満などが原因で、臓器が鮮明に映らないこともあります。これらの状況では、CTやMRIといった補完的な検査が必要となる場合があります。
  2. 一部の疾患では限界がある
    腹部超音波検査では、臓器の形状や構造に関する情報は得られるものの、病理学的な確定診断(例:腫瘍が悪性か良性か)は不可能です。そのため、生検や追加の検査が必要になることがあります。
  3. 技術者の熟練度に依存
    超音波診断の精度は、獣医師や技術者の経験やスキルに大きく依存します。不十分な経験や技術では、診断が難しくなることがあります。そのため、信頼できる病院や専門家に依頼することが重要です。

総合的な活用のすすめ

腹部超音波診断の利点と弱点を理解し、それを踏まえた上で最適な診断計画を立てることが重要です。超音波検査だけで完結せず、必要に応じて他の検査を組み合わせることで、より正確な診断と効果的な治療が実現します。

【第6章】最後に

健康管理への意識向上

ペットの健康を守るためには、定期的な検査や日常の健康チェックが不可欠です。特に、腹部超音波診断は、目に見えない内臓の異常を早期に発見するための強力なツールです。ペットは、自分で体調の変化を言葉で伝えることができません。そのため、飼い主が積極的に健康管理に取り組むことが、ペットの命を守る第一歩となります。

腹部超音波診断は、健康診断の一環として行うことで、病気の兆候を早期に発見し、治療のタイミングを逃さないための重要な手段となります。ペットが元気に長生きするためには、このような定期的な検査が欠かせません。

早期診断のための行動

ペットの異変にいち早く気づくためには、日頃の観察が重要です。食欲や排便状況、体重、活動量の変化などをこまめに記録し、少しでも気になる症状があれば早めに動物病院を受診するようにしましょう。

さらに、ペットが高齢期に差し掛かった場合や特定のリスク因子を持つ場合(遺伝的要因や既往歴など)、定期的に腹部超音波検査を受けることで、病気の早期発見・早期治療につなげることができます。獣医師と相談し、ペットに最適な検査スケジュールを立てることをおすすめします。

飼い主として、愛するペットが健康で幸せな毎日を送れるよう、日常的なケアと定期的な検査を大切にしてください。そして、疑問や不安があれば遠慮なく獣医師に相談しましょう。それが、ペットのQOL(生活の質)を向上させ、より充実した暮らしを実現する鍵となります。

記事監修
動物病院病院 総長 藤野 洋

アニホック往診専門動物病院獣医師 藤野 洋

日本大学生物資源科学部(旧農獣医学部)獣医学科卒業。
卒業後、約20年にわたり動物病院でペットの治療に従事。
2007年(株)フジフィールド創業。動物病院とトリミングサロンのドミナント多店舗展開を行い、複数店舗の開業/運営を果たす。

日本大学生物資源科学部(旧農獣医学部)獣医学科卒業。
卒業後、約20年にわたり動物病院でペットの治療に従事。
2007年(株)フジフィールド創業。動物病院とトリミングサロンのドミナント多店舗展開を行い、複数店舗の開業/運営を果たす。

【エデュワードプレス(旧インターズー)】・トリミングサービス成功事例セミナー講師・トリミングサービス成功ガイド監修・Live trim2018 マネージメントセミナー講師 【メディア】・ラジオ調布FM ペットオーナー向け番組MC・多摩テレビ 「わんにゃんMAP」番組パーソナリティ・j:comジモトピ「世田谷・調布・狛江」出演