【2025年最新版】犬・猫の血液検査でわかる病気|症状・費用・自宅ケアまで獣医師が徹底解説

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「うちの子、最近なんとなく元気がないけど、どこか悪いのかな?」「高齢になってきて病気が心配…」

犬も猫も、体調不良を隠すのが非常に得意な動物です。そのため、見た目では気づかないうちに病気が進行しているケースも少なくありません。常に進化する獣医療において、大切な家族の病気を早期に発見し、適切な治療へと繋げる上で、血液検査は極めて重要な役割を果たします。特に2025年現在、以前よりも早期に病気の兆候を捉えることができる検査項目や技術も登場しています。

この記事では、犬と猫の血液検査で具体的にどのような病気がわかるのか、最新の検査項目、結果の見方、費用、そしてご自宅でできるケアまで、動物の専門知識を持つ獣医師が詳しく解説します。特に、通院が苦手な子や、高齢で外出が難しい子の場合、ご自宅でストレスなく血液検査を受けられるアニホック往診専門動物病院がお力になります。愛するペットの健康と長寿のために、血液検査の重要性を一緒に学びましょう。

犬と猫の健康診断の重要性

犬と猫の健康管理の基本

犬や猫の健康を維持するためには、日々の観察や適切な食事管理だけでなく、定期的な健康診断が欠かせません。特に犬や猫は言葉で不調を訴えることができないため、飼い主が気づかないうちに病気が進行しているケースも少なくありません。「サイレントキラー」と呼ばれる病気もあるように、症状がはっきりする頃にはかなり進行していることも珍しくないのです。健康診断を受けることで、見た目では判断できない隠れた病気を早期に発見し、治療に取り組むことが可能になります。

血液検査の役割と利点

血液検査は、犬や猫の体内の状態を詳細に把握するための重要な検査です。例えば、血液の成分を分析することで、腎臓や肝臓の機能、血糖値、貧血の有無、感染症の兆候など、さまざまな情報を得ることができます。さらに、病気の早期発見だけでなく、健康な状態を記録しておくことで、次回以降の診断時に基準値との比較が可能となり、わずかな変化も見逃さずに捉えることができます。

健康診断に血液検査を組み込むことには以下のような利点があります:

  • 早期発見: 臓器の疾患や慢性病の初期段階を見逃さない。特に猫に多い慢性腎臓病や高齢犬に多い甲状腺機能低下症など、症状が分かりにくい病気の兆候を早期に捉えられます。
  • 適切な治療計画: 検査結果に基づき、最適な治療を計画できるだけでなく、治療効果を客観的に評価し、計画を柔軟に調整できます。
  • 安心感: 特に健康上の不安がない場合でも、定期的なチェックで飼い主が安心できます。「うちの子は今、どんな状態なんだろう?」という疑問に、数値で明確な答えをもたらします。

このように、血液検査はペットの健康管理において欠かせない手段のひとつであり、飼い主にとっても信頼できる情報源となります。

犬と猫の血液検査でわかる主な項目

血液検査では、様々な項目を測定することで、体の各臓器の状態や全身のバランスを詳細に評価します。

赤血球と白血球

血液検査では、赤血球(RBC)と白血球(WBC)の数値を測定し、健康状態を評価します。

  • 赤血球: 主に酸素を運ぶ能力を示します。これが低い場合は貧血の可能性が考えられます。貧血は栄養不足、出血、腎臓病、自己免疫疾患など様々な原因で起こります。一方、高い場合には脱水やストレス、または心臓や肺に負担がかかっている可能性が疑われます。
  • 白血球: 免疫システムの状態を反映します。増加している場合は感染症や炎症の存在を示唆しますが、逆に減少している場合は免疫力の低下や骨髄の異常の可能性があります。特に白血球の種類ごとの比率(好中球、リンパ球、単球など)を詳細に分析することで、感染の種類や進行状況をより正確に判断できます。犬の細菌感染や猫のウイルス感染(FIV、FeLVなど)の兆候を捉える手がかりとなります。

血糖値や腎機能

  • 血糖値(GLU): 糖尿病の診断において最も重要な指標のひとつです。特に、血糖値が基準値を超える場合は糖尿病の疑いが強まります。ただし、一時的なストレスや緊張(特に猫は顕著)でも上昇するため、総合的な判断が必要です。逆に低血糖の場合は、内分泌系の疾患や栄養不足の可能性があります。
  • 腎機能: クレアチニン(CRE)や尿素窒素(BUN)の数値が重要です。これらの値が高い場合、腎臓のろ過機能が低下している可能性が高いです。特に猫で発症率の高い慢性腎臓病では、早期の段階ではこれらの数値に変化が出にくいことがあります。そのため、近年ではSDMA(対称性ジメチルアルギニン)という新しい腎機能マーカーが非常に重要視されています。SDMAは腎機能が25%程度低下した段階で異常値を示すことがあり、従来のCREやBUNよりも早く腎臓病の兆候を捉えられるため、2025年現在、犬猫の早期腎臓病診断において広く活用が推奨されている最新の指標です。

肝機能とその他の重要な数値

  • 肝機能: 肝臓は体内の毒素を解毒し、栄養素の代謝を行う重要な臓器です。肝機能が低下するとさまざまな健康問題を引き起こします。ALT(アラニントランスアミナーゼ)やAST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)の値が高い場合は、肝臓に炎症がある可能性があります。また、胆汁の流れを示すALP(アルカリフォスファターゼ)やGGT(γ-グルタミルトランスペプチダーゼ)の値が高い場合は、胆管系の異常が疑われます。猫に多い脂肪肝(肝リピドーシス)や犬の慢性肝炎の発見に役立ちます。
  • その他の重要な数値:
  • 総蛋白(TP)やアルブミン(Alb)の測定によって栄養状態や免疫力の評価が可能です。特にアルブミンは、肝臓病や腎臓病、腸疾患などで低下することがあります。
  • 血小板: 血液凝固の異常や免疫性疾患を見つけることができます。
  • 電解質(ナトリウム、カリウム、リンなど): 脱水、腎臓病、内分泌疾患(副腎機能低下症など)と関連することがあり、体内のバランスを把握する上で重要です。

血液検査でこれらの項目を総合的に分析することで、犬や猫の健康状態を詳細に理解し、適切なケアや治療方針を立てることができます。

犬と猫の血液検査の具体的な手順

検査前の準備

血液検査を正確に行うためには、ペットがリラックスできる状態を保つことが重要です。特に空腹時に採血することが推奨される場合が多く、検査の8~12時間前から食事を控えるよう指示されることがあります。これは、特定の血液成分(特に血糖値や脂質)の値が食事の影響を受ける可能性があるためです。ただし、水は摂取可能な場合がほとんどなので、病院の指示を必ず確認してください。

採血の方法と注意点

採血は主に以下の手順で行われます:

  1. 部位の選定: 犬や猫では、前脚や後脚の静脈、または頸静脈が採血の主な対象部位となります。動物の大きさや体格、健康状態によって適切な部位が選ばれます。
  2. 消毒と固定: 採血する部分を消毒し、ペットが動かないように身体を固定します。動きが多いペットには、補助者や飼い主が優しく支えることが必要です。
  3. 採血の実施: 針を静脈に挿入し、必要な量の血液を採取します。ペットがリラックスしていれば短時間で終了します。
  4. 止血とケア: 採血後、針を抜いた部分を圧迫して止血します。特に小型犬や猫は血管が細いため、慎重に処置を行います。

採血時に気を付けるべきポイントは、動物に過度なストレスを与えないことです。犬も猫も、慣れない場所(動物病院)での緊張や恐怖は、一時的な高血糖(ストレス高血糖)を引き起こすなど、正確な検査結果に影響を与えることがあります。緊張がひどい場合は、獣医師と相談の上、ごく軽い鎮静を施す場合もありますが、事前に飼い主の同意が求められます。往診であれば、愛犬・愛猫が慣れたご自宅でリラックスした状態で採血できるため、ストレスを最小限に抑え、より正確な結果を得られるメリットがあります。

結果が出るまでの流れ

採血が完了したら、検体は専用の検査機器にかけられるか、外部の検査機関に送られます。院内で即日結果が分かる項目もあれば、外部検査では数日かかることがあります。SDMAなどの一部の新しい項目は、外部検査になる場合があります。

検査結果は数値だけでなく、ペットの年齢や健康状態、症状、ライフスタイルを考慮して総合的に解釈されます。異常値が発見された場合には、その数値が示す可能性のある病気について詳しく説明され、必要に応じて追加検査や治療の提案が行われます。飼い主には結果が詳しく説明され、必要な場合は具体的な治療計画を立てるための相談が行われます。

犬と猫の血液検査の結果の見方

血液検査の結果を理解することは、愛するペットの健康状態を把握し、適切なケアを行う上で非常に重要です。

基準値とその意味

血液検査の結果は、通常、測定された数値とその基準値の範囲が示されます。基準値とは、健康な犬や猫の平均的な値を指し、これを参考に異常の有無を判断します。例えば、以下の項目が典型的です:

  • 赤血球(RBC): 酸素の運搬能力を示します。低ければ貧血、高ければ脱水や慢性疾患の可能性があります。
  • 白血球(WBC): 免疫の働きを反映します。高ければ感染症や炎症、低ければ免疫力の低下を示唆します。
  • 血糖値(GLU): 基準値を超える場合は糖尿病の可能性があり、低い場合は低血糖症を疑います。

これらの数値が基準値内であれば健康であると考えられますが、基準値からわずかに外れている場合でも、症状や過去の検査結果、ペットの年齢や犬種・猫種、生活環境などを総合的に判断することが重要です。数値の変動には個体差や一時的な要因も関わるため、獣医師による専門的な解釈が不可欠です。

異常値が示す可能性のある病気

血液検査の結果が基準値を外れる場合、その数値が示す可能性のある病気を考慮します。以下に代表的な異常値の例を挙げます:

  • BUN(尿素窒素)やクレアチニン(CRE)の高値: 腎機能低下や慢性腎不全を示唆します。特に猫では非常に多く見られる疾患です。
  • SDMAの高値: 早期の腎機能低下を示唆する最新の指標です。クレアチニンやBUNがまだ正常範囲内でも異常値を示すことがあります。
  • ALT(アラニントランスアミナーゼ)やAST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)の高値: 肝臓の炎症や肝疾患を疑う指標です。猫の脂肪肝(肝リピドーシス)や犬の慢性肝炎などで見られます。
  • ALP(アルカリフォスファターゼ)の高値: 肝臓や胆管の異常、または骨の疾患、内分泌疾患(クッシング症候群など)の可能性を示唆します。
  • 血小板の低値: 血液凝固異常や免疫性疾患、骨髄の異常の可能性が考えられます。
  • 血糖値(GLU)の異常高値: 糖尿病の可能性が非常に高いです。
  • 甲状腺ホルモン(T4)の異常値: 高値であれば猫の甲状腺機能亢進症、低値であれば犬の甲状腺機能低下症を疑います。

これらの異常値が見つかった場合、病気の確定診断のため、追加検査(例:尿検査、超音波検査、レントゲン検査、ホルモン負荷試験など)が行われることが一般的です。

特に注意すべき特定の数値

特に注意が必要な数値には、以下のようなものがあります:

  • 血糖値(GLU):
    高すぎる場合は糖尿病の兆候であり、初期段階での食事療法や運動療法、インスリン治療が推奨されます。一方、低血糖は重篤な状態を引き起こす可能性があり、緊急対応が必要です。
  • SDMA:
    腎臓病の早期発見に非常に有用な指標です。特にシニア期の犬猫では、症状が出ていなくてもSDMAの数値に変化がないか、定期的に確認することが重要です。
  • ALT(アラニントランスアミナーゼ):
    肝臓の炎症を示す重要な指標です。基準値を超えている場合は、早期治療が肝機能低下を防ぐ鍵となります。
  • クレアチニン(CRE):
    腎臓の機能を示す数値で、特に慢性腎疾患では注意が必要です。高値の場合は病気の進行状況に応じた治療計画が求められます。

血液検査の結果を正確に理解し、異常が見られた場合は適切な治療やケアを迅速に行うことが、ペットの健康を守るために重要です。

犬と猫の健康診断の頻度とタイミング

年齢や健康状態に応じた推奨頻度

犬や猫の健康診断は、その年齢や健康状態に応じて頻度を調整することが重要です。

  • 若齢期(1歳以下):
    子犬や子猫は成長が早く、病気の進行も急速であるため、少なくとも半年に1回の健康診断が推奨されます。特にワクチンプログラムに合わせて健康状態をチェックすることで、先天的な疾患や病気の早期発見が可能になります。
  • 成犬・成猫(1~6歳):
    健康な成犬や成猫の場合、年に1回の健康診断が適切です。この期間は健康が安定していることが多いですが、見た目には分からない隠れた病気が進行する可能性もあるため、定期的な血液検査が必要です。
  • シニア期(7歳以上):
    高齢になると、慢性腎臓病、心臓病、糖尿病、甲状腺疾患、関節炎、腫瘍など、慢性疾患のリスクが格段に高まります。そのため、健康診断の頻度を増やすことが強く推奨されます。半年に1回、あるいは場合によっては3ヶ月に1回など、より頻繁な検査を行うことで、疾患の進行を早期に食い止め、QOLを維持することができます。

季節や特定の症状に応じたタイミング

通常の定期健康診断とは別に、季節の変化や特定の症状が見られる場合には、獣医師に相談し、血液検査を受けることが必要です。

  • 季節の変わり目:
    春や秋などの気温や環境が変化する時期は、特に体調を崩しやすい時期です。このタイミングで健康診断を実施すると、体調不良の予防や早期発見につながります。
  • 症状が現れた場合:
    食欲不振、体重減少、多飲多尿、疲れやすさ、嘔吐、下痢、被毛の状態の悪化、咳、呼吸が速いなど、普段と違う症状が見られる場合は、血液検査による原因特定が不可欠です。これにより、病気の早期診断と治療が可能になります。

健康診断の頻度を適切に設定し、必要に応じてタイミングを調整することで、ペットの健康を維持し、長寿につなげることが可能です。

血液検査で発見できる主な病気(犬・猫共通&特有の病気)

血液検査は、犬や猫が罹患しやすい様々な病気の発見において非常に効果的です。ここでは、特に重要な病気を具体的に解説します。

慢性腎臓病(犬・猫)

  • 犬猫ともに非常に多い、特に猫では死因で最も多い病気の一つです。
  • 血液中のクレアチニン、尿素窒素(BUN)、リンが高い場合、腎臓の機能が低下している可能性があり、慢性腎臓病が疑われます。
  • 【最新の指標】SDMA: 従来のCREやBUNよりも早期に腎機能の低下(25%程度の機能低下から)を検出できる最新の血液検査マーカーです。特にシニア期の犬猫では、症状が出る前の段階で病気の兆候を捉えるために、定期的なSDMA検査が強く推奨されています。
  • 高齢の犬や猫では慢性腎臓病のリスクが高く、初期段階での発見がその後の治療結果を左右します。血液検査を定期的に行うことで、腎臓への負担を早期に把握し、食事療法や点滴治療を計画することができます。
  • 主な症状: 多飲多尿(水をたくさん飲み、おしっこをたくさんする)、食欲不振、体重減少、毛づやの悪化、嘔吐など。

糖尿病(犬・猫)

  • 犬猫ともに見られる内分泌疾患で、肥満が大きなリスク因子となります。
  • 血糖値が持続的に異常に高い場合、糖尿病の可能性が考えられます。
  • フルクトサミン: 血液検査で血糖値の変動やフルクトサミン値を確認することで、ストレスによる一時的な高血糖と区別し、過去2~3週間の平均血糖値を評価できます。これにより、より正確な糖尿病の診断が可能です。
  • 糖尿病と診断された場合、治療には食事療法やインスリンの投与が含まれ、血糖値の安定を目的とした継続的な管理が必要です。
  • 主な症状: 多飲多尿、多食なのに痩せる、元気がないなど。

甲状腺機能異常

甲状腺ホルモンは代謝を司る重要なホルモンであり、犬と猫では異なるタイプの異常が多く見られます。

  • 犬:甲状腺機能低下症
  • 中高齢犬に多く見られます。
  • 血液検査で甲状腺ホルモン(T4など)が低値を示すことで診断されます。
  • 主な症状: 活動性の低下、元気がない、体重増加、皮膚病(脱毛、フケなど)、寒がりなど。
  • 猫:甲状腺機能亢進症
  • 高齢猫に非常に多く見られます。
  • 血液検査で甲状腺ホルモン(T4など)が高値を示すことで診断されます。
  • 主な症状: 食欲が旺盛なのに痩せる、落ち着きがない、興奮しやすい、多飲多尿、嘔吐・下痢など。治療せずに放置すると心臓に大きな負担がかかることもあります。

肝疾患(犬・猫)

肝臓は体内の毒素を解毒し、代謝や合成を行う重要な臓器です。

  • 肝炎、胆管炎、肝リピドーシス(猫に多い脂肪肝)など、様々な肝疾患があります。
  • 血液検査では、ALTやAST、ALP、GGTといった肝機能を示す数値が異常な場合、肝臓の炎症や肝臓疾患が疑われます。また、総ビリルビンの値が高い場合は黄疸を示します。
  • 肝疾患は進行性の場合が多く、早期発見による治療が症状の改善や進行抑制に重要です。
  • 主な症状: 食欲不振、嘔吐、元気がない、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)など。

貧血(犬・猫)

  • 赤血球数やヘマトクリット値が低い場合、貧血が疑われます。
  • これが示す原因はさまざまで、栄養不足、慢性疾患(腎臓病など)、内出血、寄生虫(ノミ・ダニなど)、腫瘍、自己免疫性疾患などがあります。血液検査により原因を特定し、適切な治療計画を立てることが可能です。
  • 主な症状: 歯茎や舌が白い、元気がなく疲れやすい、息が荒いなど。

炎症・感染症(犬:フィラリア、猫:FIV/FeLV、FIPなど)

  • 白血球数の異常(増加または減少)や、炎症マーカー(犬のCRP、猫のSAAなど)の数値は、体内で何らかの炎症や感染症が進行している可能性を示唆します。これらのマーカーは2025年現在、感染症や炎症の活動性を判断する上で重要な指標です。
  • 犬:フィラリア感染症は、血液検査でフィラリア抗原やミクロフィラリアを確認することで早期発見に繋がります。
  • 猫:FIV(猫免疫不全ウイルス感染症)やFeLV(猫白血病ウイルス感染症)は、血液検査で抗体検査やウイルス抗原検査を行うことで、早期に感染を発見し、適切な管理を開始できます。近年ではより高感度な検査方法も利用可能になっており、潜在的な感染リスクの早期把握に役立っています。
  • 猫伝染性腹膜炎(FIP): FIPは複雑な診断が必要ですが、血液検査の特定の項目(A/G比の異常、高グロブリン血症、炎症マーカーの上昇など)が診断の補助情報として用いられます。最新の研究により診断の精度が向上しており、疑わしい場合は専門医への相談も重要です。

その他(膵炎、副腎疾患など)

  • 膵炎: 犬猫ともに起こりうる消化器疾患です。血液中の膵特異的リパーゼ(cPLI/fPLI)の測定は、近年広く活用されている特異性の高い検査であり、膵炎の診断に非常に有効です。
  • 電解質異常: カリウム、ナトリウム、リンなどの電解質のバランスの乱れは、腎臓病や副腎疾患、脱水など、様々な病態と関連します。
  • 副腎疾患: 犬のクッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)やアジソン病(副腎皮質機能低下症)などは、血液中のホルモン測定(コルチゾールなど)や刺激試験によって診断され、ホルモン検査の進歩により、より正確な診断が可能になっています。

これらの疾患は血液検査で早期に発見することが可能であり、適切な治療を受けることで病気の進行を抑えるだけでなく、ペットの生活の質を向上させることができます。

血液検査を活用した治療とケア

早期発見と治療の流れ

血液検査を活用することで、病気を早期に発見し、適切な治療を迅速に開始することが可能です。例えば、腎臓疾患が疑われる場合、血液検査による数値の変化(特にSDMA)をもとに、病気の進行度を評価します。初期段階での発見により、食事療法や定期的な点滴治療を取り入れることで、腎臓の負担を軽減し、健康状態を改善できます。

血液検査結果に基づく治療の利点は以下の通りです:

  • 的確な治療計画: 異常値を確認した上で、必要な薬物治療や補助療法を選択できます。無駄な治療を避け、本当に必要なケアに集中できます。
  • 治療のモニタリング: 定期的な検査により、治療効果を客観的に評価し、計画を柔軟に調整可能です。数値の変化を通じて、治療がうまくいっているか、あるいは見直すべきか判断できます。
  • 飼い主への情報提供: 具体的な数値を共有することで、治療の必要性や重要性をより深く理解してもらえます。「なぜこの治療が必要なのか」を明確に伝えられます。

結果に基づく具体的な治療法

血液検査の結果は、治療内容を決定する重要な指標となります。例えば:

  • 糖尿病: 血糖値の持続的な上昇やフルクトサミン値の異常が確認された場合、食事療法やインスリン投与が開始されます。また、血液検査を定期的に行い、血糖値の安定を確認します。
  • 肝疾患: ALTやASTの値が異常な場合、肝臓保護薬の投与や食事療法を行います。肝臓に優しい低脂肪高タンパクの食事が推奨されます。
  • 腎疾患: クレアチニンやBUN、SDMAの値が基準値を超えている場合、腎臓専用の療法食や点滴治療を行い、腎機能をサポートします。リンのコントロールも重要になります。
  • 甲状腺疾患: 甲状腺ホルモン値の異常に基づいて、低下症ではホルモン補充療法、亢進症では内服薬や食事療法、放射線治療などの選択肢が検討されます。

日常ケアへの活用

血液検査で得られた情報をもとに、飼い主が日常的に行うケアを改善することも重要です。

  • 食事内容の見直し: 栄養状態の改善や、臓器への負担軽減のため、適切な療法食やサプリメントの選択・強化を行います。
  • 飲水量や排泄の管理: 腎臓病などの多飲多尿を伴う病気の場合、飲水量を意識的に管理し、排泄の回数や量、色などを観察するようアドバイスします。
  • 運動量の設定: ペットの体調や病状に応じた適切な運動量を設定することで、健康維持をサポートします。
  • 環境改善: 視力低下や関節炎がある場合、室内環境を安全に整えるアドバイスを行います。

さらに、血液検査を活用したケアプランを作成することで、病気の予防や再発防止にも役立ちます。飼い主と動物病院が協力してペットの健康管理を行うことが、ペットの長寿と幸福につながります。

記事監修
動物病院病院 総長 藤野 洋

アニホック往診専門動物病院獣医師 藤野 洋

日本大学生物資源科学部(旧農獣医学部)獣医学科卒業。
卒業後、約20年にわたり動物病院でペットの治療に従事。
2007年(株)フジフィールド創業。動物病院とトリミングサロンのドミナント多店舗展開を行い、複数店舗の開業/運営を果たす。

日本大学生物資源科学部(旧農獣医学部)獣医学科卒業。
卒業後、約20年にわたり動物病院でペットの治療に従事。
2007年(株)フジフィールド創業。動物病院とトリミングサロンのドミナント多店舗展開を行い、複数店舗の開業/運営を果たす。

【エデュワードプレス(旧インターズー)】・トリミングサービス成功事例セミナー講師・トリミングサービス成功ガイド監修・Live trim2018 マネージメントセミナー講師 【メディア】・ラジオ調布FM ペットオーナー向け番組MC・多摩テレビ 「わんにゃんMAP」番組パーソナリティ・j:comジモトピ「世田谷・調布・狛江」出演