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もしわが子が他人を噛んでしまったらどうしますか?
わんちゃんの咬傷事故が、毎年何件ぐらい起こっているか、ご存じでしょうか?環境省の発表では、平成20年度以降は毎年4000件ほど発生しているとのこと。昭和では1万件を超えていたようなので、ずいぶん減ってきてはいますが、それでも一日10件以上の事故が起こっている計算となります。
「わが子に限ってあり得ない」と思いがちですし、思いたい話なのですが、わんちゃんだって生き物です。状況によってはどんな子でも起こす可能性はあると言っても過言ではありません。
もし、そのようなことになったら・・・
「わが子が噛んでしまった」というショックの中、飼い主として落ち着いて行動できるでしょうか? 動物を飼う以上、起こってしまったときに何をすべきなのか、あらかじめ理解しておくのは飼い主の務めです。きちんと理解しておきましょう。
目次
最優先で行うことは、これ以上わんちゃんが噛まないよう引き離し、噛まれた方(以下被害者)の安全を確保することです。噛まれたショックで失神を起こしてしまう方もいるので、最大の注意を払ってください。
同時に誠意をもって謝罪することも忘れずに。基本的なことなのですが、噛んでしまった側(以下加害者)も気が動転して、失念してしまうことがありますので、注意しましょう。
そして、わんちゃんをどこかに一旦繋ぎ、被害者を病院へ誘導します。表面的には小さな傷でも、実は傷が深く、症状が悪化することも大いに考えられます。今後のトラブルを防ぐためにも、必ず受診してもらいましょう。
被害者に持病がある場合などは、かかりつけ医が安心ですが、特にない場合には、内科・皮膚科・外科といった複数の科がある病院を選ぶと臨機応変に対応していただけると思います。
一方で、噛んだわんちゃんも興奮している場合があります。 飼い主も噛まれることのないよう十分注意しながら、ご家族に迎えに来てもらったり、一旦連れ帰るなどして、なるべく早く被害者の病院に同伴しましょう。 その際の交通費や治療費などは全て加害者側が負担します。 出来るだけ診断書も書いてもらい、今後の治療スケジュールなども確認しましょう。
※どうしてもその日、病院に同伴出来ない場合は、被害者に自分の氏名や連絡先を伝えましょう。 また、被害者の気持ちを考え、今後かかる費用は自分が全て支払う旨をお伝えし、レシートや診療明細書、診断書などを保管していただくようお願いしてください。
わんちゃんが他の人を噛んでしまったときは、飼い主が24時間以内に最寄りの保健所(もしくは愛護センター)に届け出をする義務があります。 さらに、48時間以内に獣医師の診察を受け、わんちゃんが狂犬病でないという診断書を出してもらい、それを保健所に提出する必要があります。
※被害者も被害届を提出します。
なお、狂犬病は、=死に至る怖い病気、という認識を多くの方がお持ちです。 そのため、なるべく早めに「狂犬病のワクチンを受けている」と被害者にお伝えしたほうが、安心していただけるでしょう。
多くの場合、被害者と加害者間で示談交渉を行います。※以後述べる保険を利用した場合も、保険会社は示談交渉に関与しない場合があります。
治療費などの賠償金に加え、お見舞金(慰謝料)などを支払うことが多いようですが、賠償金に対しては、損害保険で補えることがあります。(個人賠償責任保険、ペット賠償責任特約等)
車の事故と同様、思った以上に治療が長くなったり、後遺症などが残ってしまうケースがあります。今一度、ご自身が入られている保険(車やすまい、ペット保険等)の内容を見て、付帯しているか確認しておくことをお勧めします。
被害者のケアが落ち着いたら、次はわんちゃんの番です。元々、噛むことはわんちゃんにとって本能に基づいた行動のため、事故に繋がるような噛みつきをした場合、 「こわい」「嫌だ」といった気持ちの表れであることが多いのです。
では、一体なぜわが子は噛んでしまったのでしょうか。
と、よく振り返ってみましょう。
何よりも今後は再発を防止しなければなりませんが、その時の状況や背景を整理し、出来るだけわんちゃんの気持ちを理解してあげないことには、防止には繋がらないのです。 わんちゃんに向かい合って、しっかり考えてあげましょう。
どんな状況であっても、噛むという行動を上手に調整(コントロール)してあげないと、人とわんちゃんは共存していけません。 元々噛み癖がある子なら、噛んではいけないと認識してもらわないといけません。
環境によるストレスなら、飼い主が改善してあげなければなりません。 人が苦手なら、無理強いせず、あまり交流しないよう配慮してあげなければなりません。
「噛み癖が治らなくて手放した」
「噛んで人が亡くなってしまった」
そんな悲しい話があるのも事実です。
わんちゃんには、最大の武器になり得る「噛む」という行動があるということを理解した上で、 どうしたら、他の人にも迷惑をかけず、お互い安心して暮らしていけるのか、今一度考えていきましょう。
噛んでしまったという事実は覆せませんが、対策次第で今後を変えることはできるのです。
※ご家庭のしつけなどで難しい場合、一人で抱え込みすぎず、プロの力を借りるのも手です。
どんな人でも、思わぬ事故が起きてしまったら気が動転しがちですが、人間性が表れる瞬間でもあります。 しかも、加害者の場合はなおさらで、どれだけ冷静に、被害者のことを考え、誠意ある行動をとれるのか、ということが大切だと感じます。
わんちゃんの咬傷事故の場合は、自分の飼い犬が事故を起こしたということなので、加害者も更なるショックが生じるとは思いますが、全て飼い主の責任なのです。 被害者の不安や負担を少しでも解消できるよう、最大限の考慮が必要です。
生き物を飼う以上、こういった事故が起こりうることは覚悟しておく必要があります。 起こってしまったときの対応について、飼い主の責任としてきちんと理解しておきましょう。