猫伝染性腹膜炎(FIP)まとめ

アニホック往診専門動物病院では、東京都、川崎市、千葉市にて訪問診療による猫伝染性腹膜炎の治療を行っています。詳しくはアニホック往診専門動物病院のページよりご連絡ください。

猫伝染性腹膜炎(FIP)は、猫を悩ませる疾患の一つです。この病気は、猫コロナウイルスの一種が原因で、感染した猫の一部で重篤な、そしてしばしば致命的な結果をもたらします。FIPは二つの形態、すなわち「湿性(滲出性)」と「乾性(非滲出性)」に分けられ、それぞれが独自の症状と治療法を持ちます。この病気の複雑さと治療の難しさは、ペットの飼い主にとって大きな心配事となります。

ペットの飼い主として、私たちは愛する猫の健康と幸福を守る責任があります。FIPについて正確な情報を得ることは、この責任を果たす上で不可欠です。ここでは、FIPの基礎知識から診断、治療オプション、予防方法に至るまで、網羅的に情報を提供します。専門的な観点から、この複雑な病気について理解を深め、愛猫が直面するかもしれないリスクを最小限に抑えるための戦略を学びましょう。

FIPとは何か

猫伝染性腹膜炎(FIP)は、猫コロナウイルス(FCoV)の変異株によって引き起こされる、免疫介在性の疾患です。このウイルスは全世界に広がっており、特に多頭飼育環境では高い感染率を示します。しかし、感染した猫すべてがFIPを発症するわけではありません。実際、多くの猫はウイルスに感染しても無症候性であり、問題を引き起こさずに生涯を終えます。

FIP発症のメカニズム

FIPを発症するプロセスは、猫コロナウイルスが変異し、猫の体内で病原性を獲得することから始まります。この変異したウイルスは、猫の免疫系によって適切に処理されず、代わりに体内で炎症反応を引き起こします。炎症は主に腹膜や胸膜に影響を及ぼし、それがFIPの特徴的な症状を引き起こします。

病気は主に二つの形態で現れます:

  • 湿性FIP:体腔内に炎症性の液体が溜まることが特徴です。これは腹部や胸部の膨満、呼吸困難などを引き起こす可能性があります。
  • 乾性FIP:体腔内に液体は溜まりませんが、腫瘍様の病変が体内のさまざまな臓器に形成されます。この形態は診断がより難しく、神経系の症状や眼の問題を含む多様な臨床症状を示します。


FIPの発症には、遺伝的要因、免疫系の状態、環境要因など、多くの要因が関与していると考えられています。しかし、全ての猫が同じリスクで病気になるわけではなく、特定の個体がなぜFIPを発症するのかを予測することは現在のところ難しいです。

FIPの症状

猫伝染性腹膜炎(FIP)の症状は、その形態(湿性または乾性)によって大きく異なります。しかし、どちらのタイプでも共通して見られる初期症状がいくつかあります。これには発熱、食欲不振、体重減少、活力の低下が含まれます。これらの症状は非特異的であり、他の多くの疾患と共通しているため、FIPの診断を複雑にします。

湿性FIPの症状

湿性FIPは、体腔内に炎症性の液体が溜まることが特徴です。この液体蓄積は主に腹部または胸部に発生し、以下のような症状を引き起こす可能性があります

  • 腹部の膨満感:腹部が明らかに膨らみ、触診すると張りが感じられます。
  • 呼吸困難:胸腔内の液体が肺の正常な拡張を妨げ、呼吸が浅くなる可能性があります。
  • 慢性的な発熱:特に他の疾患で説明がつかない場合、FIPの重要な兆候です。

 

乾性FIPの症状

乾性FIPでは、体内のさまざまな臓器に炎症性の病変が形成されます。この形態のFIPは特に診断が困難であり、以下のような多様な症状を引き起こす可能性があります:

  • 神経系の異常:発作、非協調、歩行困難など、神経系に関連する症状が見られることがあります。
  • 眼の症状:炎症や出血による視力の低下や目の異常が生じることがあります。
  • 腫瘍様の病変:内臓や他の組織における病変は、その機能に影響を及ぼし、多様な症状を引き起こします。

鑑別診断の重要性

FIPの症状は他の多くの疾患と類似しているため、正確な診断には詳細な臨床検査が必要です。獣医師は、血液検査、画像診断、場合によっては体腔内液体の採取や組織生検を含む一連の検査を通じて、他の可能性のある病気を除外し、FIPの診断を下します。

FIPの診断方法

猫伝染性腹膜炎(FIP)の診断は、特定の症状、血液検査の結果、および必要に応じて行われるその他の診断手段に基づいています。FIPは他の多くの疾患と症状が類似しているため、診断は困難であり、獣医師は一連の検査を通じて総合的な評価を行う必要があります。

病歴と臨床症状の評価

FIPの診断プロセスは、猫の詳細な病歴の取得から始まります。これには、症状の発症時期、症状の進行、および猫が過去に他の病気に罹患したかどうかなどの情報が含まれます。私たち獣医師は物理的な検査を行い、猫の一般的な健康状態とFIPに関連する可能性のある特定の臨床症状を評価します。

血液検査とその解釈

血液検査はFIPの診断において重要な役割を果たします。特に、血液生化学検査が重要です。これらのテストは、炎症の指標、肝機能や腎機能の状態、およびその他の関連する健康問題の存在を示すことができます。また、血液中の特定のタンパク質の比率(アルブミンとグロブリンの比率など)がFIPの診断に役立つことがあります。

その他の診断手段

  • 超音波検査:特に湿性FIPの場合、腹部や胸部の液体蓄積を確認するのに有効です。また、内臓の病変や異常を検出するのにも役立ちます。
  • 腹腔内または胸腔内液体の採取と分析:FIPに特有の炎症性液体の性質を評価するために行われます。この液体は通常、高いタンパク質含有量と特定の細胞の存在を示します。
  • 組織生検と病理学的検査:確定診断を得るために、影響を受けた組織からのサンプルを取り、顕微鏡下で検査することがあります。これにより、FIPに特徴的な炎症反応や病変を特定することができます。


FIPの診断は複雑であり、しばしば複数の検査を組み合わせて行う必要があります。正確な診断は、適切な治療計画を立て、猫の予後を改善するための第一歩です。

FIPの治療

猫伝染性腹膜炎(FIP)の治療は、病気の進行を遅らせ、猫の生活の質を改善することを目指しています。現時点でFIPに対する決定的な治療法は存在しませんが、近年、有望な治療が開発されています。治療は、FIPの形態、猫の全体的な健康状態、および飼い主様の状況によって検討していきます。

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抗ウイルス薬の使用

最近の研究では、特定の抗ウイルス薬がFIPを引き起こすウイルスに対して効果的であることが示されています。これらの薬剤は、ウイルスの複製を阻害し、病気の進行を遅らせることができます。しかし、これらの治療は高価であり、治療を実施している動物病院も少なく、全ての飼い主さまが利用できるものではありません。

サポートケアと管理

FIP治療の重要な側面は、サポートケアと症状の管理です。これには、食欲を刺激するための栄養補助、脱水状態の防止や治療のための補液療法、痛みや炎症を軽減するための薬物療法が含まれます。猫の快適さを最大限に保つことが、治療計画の中心的な要素です。

治療の成功率と限界

FIPの治療成功率は、病気の形態、治療開始のタイミング、および使用される治療法によって異なります。湿性FIPの場合、治療が早期に開始されればするほど、猫の生存期間を延ばす可能性が高くなります。乾性FIPの場合、症状の管理と生活の質の向上に焦点を当てたサポートケアが中心となります。残念ながら、全ての猫が治療に反応するわけではなく、病気は最終的に致命的な結果をもたらす可能性があります。

FIPの治療においては、獣医師と密接に協力し、猫の状態に最も適した治療計画を立てることが重要です。飼い主は、治療の選択肢、可能な副作用、および治療に関連する費用について、獣医師とご相談の上、検討板妥協にお願いします。

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予防と管理

猫伝染性腹膜炎(FIP)は完全に予防することが難しい疾患ですが、リスクを軽減するためのいくつかの戦略があります。これらの予防策は、猫が猫コロナウイルス(FCoV)に感染する可能性を減らし、感染した場合でもFIPを発症するリスクを最小限に抑えることを目的としています。

FIPの予防策

  • 環境管理: 猫が生活する環境を清潔に保ち、定期的に消毒することで、ウイルスの拡散を防ぎます。特に、多頭飼育環境では、猫同士の接触を管理し、食器やトイレを共有することのリスクを最小限に抑えることが重要です。
  • ストレスの軽減: ストレスは猫の免疫系に悪影響を及ぼし、ウイルスに対する抵抗力を低下させることがあります。猫が快適で安心できる環境を提供することで、ストレスを軽減し、健康を維持できます。
  • 適切な栄養: 高品質の食事は、猫の免疫系を強化し、病気への抵抗力を高めるのに役立ちます。バランスの取れた栄養を提供し、必要に応じて獣医師のアドバイスに従ってください。

飼い主さまが取るべき予防措置

  • 定期的な健康チェック: 猫を定期的に獣医師に連れて行き、健康状態のチェックアップを行うことで、初期の問題を早期に発見し、適切な対策を講じることができます。
  • 新しい猫の導入: 新しい猫を家庭に迎え入れる際には、他の猫と接触する前に健康状態を確認し、必要な検疫期間を設けることが重要です。

FIPの予防と管理には、飼い主と獣医師の協力が不可欠です。猫の健康と幸福を守るために、これらの予防策を実施し、リスクを管理することが重要です。

まとめ

FIPは猫とその飼い主さまにとって大きな問題をもたらします。適切な知識、サポート、およびケアを通じて、愛猫の生活の質を最大限に維持することが可能です。治療オプション、予防策、および飼い主と獣医師のサポートにより、FIPを持つ猫のケアにおいて最善の結果を目指すことが重要です。

アニホック往診専門動物病院では、東京都、川崎市、千葉市にて訪問診療による猫伝染性腹膜炎の治療を行っています。詳しくはアニホック往診専門動物病院のページよりご連絡ください。

記事監修
動物病院病院 総長 藤野 洋

アニホック往診専門動物病院獣医師 藤野 洋

日本大学生物資源科学部(旧農獣医学部)獣医学科卒業。
卒業後、約20年にわたり動物病院でペットの治療に従事。
2007年(株)フジフィールド創業。動物病院とトリミングサロンのドミナント多店舗展開を行い、複数店舗の開業/運営を果たす。

日本大学生物資源科学部(旧農獣医学部)獣医学科卒業。
卒業後、約20年にわたり動物病院でペットの治療に従事。
2007年(株)フジフィールド創業。動物病院とトリミングサロンのドミナント多店舗展開を行い、複数店舗の開業/運営を果たす。

【エデュワードプレス(旧インターズー)】・トリミングサービス成功事例セミナー講師・トリミングサービス成功ガイド監修・Live trim2018 マネージメントセミナー講師 【メディア】・ラジオ調布FM ペットオーナー向け番組MC・多摩テレビ 「わんにゃんMAP」番組パーソナリティ・j:comジモトピ「世田谷・調布・狛江」出演