アメリカンショートヘアの抜け毛の原因、対策とは?

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アメリカンショートヘアは、平均して10~15年の寿命を持ち、全体的に健康な猫種とされています。その穏やかで社交的な性格も、家族向けのペットとして人気の理由の一つです。また、屋内飼育にも向いており、適度な活動量と落ち着いた性格を併せ持っています。

アメリカンショートヘアの最大の特徴の一つは、その名前の通り短毛種であるという点です。被毛は非常に密度が高く、しっかりとした毛質をしています。このため、見た目よりも抜け毛の量が多い場合があり、特に季節の変わり目には抜け毛が増えることが多いです。

通常、猫の被毛は春と秋に換毛期を迎え、古い毛が抜け、新しい毛が生えてきます。適切なケアを怠ると大量の抜け毛が発生し、家中に毛が散らばる原因となります。特に、換毛期にはしっかりとしたブラッシングが求められるため、日常的なケアが重要です。

この記事では、アメリカンショートヘアの抜け毛の原因と対策について詳しく解説します。

アメリカンショートヘアの抜け毛の原因

季節性の抜け毛

アメリカンショートヘアの抜け毛の大きな原因のひとつは、季節的な換毛期に関連しています。多くの猫と同様に、アメリカンショートヘアは春と秋の2回、季節に応じて被毛を切り替える換毛期があります。春には、冬の間に蓄えた厚い被毛が抜け落ち、夏に向けてより軽い被毛が生えてきます。逆に、秋には夏の薄い毛が抜け、寒さに備えて厚い冬毛が生えてきます。

この換毛期は数週間から1か月程度続くことが多く、その間は通常よりも大量の抜け毛が発生します。特に春の換毛期は、寒い季節に備えて生えていた厚い毛が大量に抜けるため注意が必要です。

季節性の抜け毛は自然な現象であり、特に健康上の問題を示すものではありませんが、換毛期に適切なケアを行わないと、被毛が絡まったり、皮膚トラブルの原因となることがあります。

栄養不足による抜け毛

栄養不足もアメリカンショートヘアの抜け毛の原因となることがあります。特に、皮膚や被毛の健康に必要な栄養素が不足していると被毛が弱くなり、通常よりも早く抜け落ちることがあります。

例えば、タンパク質は被毛の主成分であり、十分なタンパク質を含むバランスの取れた食事が必要です。また、オメガ3脂肪酸やビタミンEといった必須脂肪酸や抗酸化物質も、健康な被毛を維持するために重要な役割を果たします。

キャットフードには一般的にこれらの栄養素が含まれていますが、食事のバランスが悪かったり、特定の栄養素が不足している場合には、抜け毛の増加が見られることがあります。栄養不足による抜け毛は、通常、被毛全体がぱさついたり、光沢が失われることで確認できるため、気になる場合は獣医に相談することが望ましいです。

ストレスや環境変化の影響

猫は非常に敏感な動物であるため、環境の変化やストレスが抜け毛の原因となることがあります。引っ越しや新しいペットの追加、大きな生活環境の変化などがストレスの要因となり、結果として脱毛や過剰なグルーミング行動を引き起こすことがあります。過度のグルーミングは、被毛の損傷や脱毛を引き起こすこともあります。

アメリカンショートヘアは比較的穏やかな性格を持つ猫種ですが、それでも環境の変化には敏感です。ストレスが原因で抜け毛が増えていると感じた場合は、生活環境の改善やストレスを軽減するための対策が必要です。また、ストレスが長期間続く場合は、健康面での問題に発展することがあるため、早めに対策を取ることが重要です。

アレルギーや皮膚トラブルが原因の抜け毛

アレルギーや皮膚疾患も抜け毛の原因となります。アレルギーの原因は多岐にわたり、食物アレルギー、環境アレルギー(ホコリや花粉など)、化学物質への接触が原因となることがあります。

アレルギーによる皮膚のかゆみや炎症が続くと、猫が過剰にその部分をかきむしったり舐めたりするため、結果的に抜け毛が増加します。また、皮膚感染症や真菌感染も皮膚の健康を損ない、脱毛の原因となることがあります。このような場合、早めに獣医師に相談し、アレルギーや皮膚疾患の治療を受けることが大切です。

抜け毛を減らすための日常的なケア方法

ブラッシングの重要性と頻度

アメリカンショートヘアの抜け毛をコントロールするためには、定期的なブラッシングが非常に重要です。ブラッシングは、抜けた毛を事前に取り除くことで、家中に毛が飛び散るのを防ぎ、毛玉の形成も抑える効果があります。

また、ブラッシングにより、皮膚への刺激が促進されて血行が良くなり、健康な被毛の成長を助けることにもつながります。

一般的には、週に2~3回のブラッシングが推奨されますが、換毛期にはより頻繁に行うと効果的です。特に春と秋の換毛期には、毎日ブラッシングすることで大量の抜け毛を管理することができ、飼い主も掃除の手間が減ります。使用するブラシは、細かいピンが付いたブラシや、スリッカーブラシなど、アメリカンショートヘアの短毛に適したものを選ぶことが重要です。ブラシには毛をしっかりと掴みつつも、皮膚を傷つけないものを選びましょう。

適切なシャンプーと洗浄方法

猫は自らグルーミングを行うため、頻繁にシャンプーをする必要はありませんが、定期的なシャンプーは皮膚の健康維持や抜け毛の抑制に効果的です。シャンプーを行うことで、毛に溜まった汚れや皮脂を取り除き、皮膚の状態を清潔に保つことができます。

ただし、猫専用のシャンプーを使用することが大前提です。人間用のシャンプーや犬用のシャンプーは、猫の皮膚には刺激が強すぎることが多く、逆に皮膚トラブルを引き起こす原因となる場合があります。

シャンプーの頻度としては、通常2~3か月に一度が理想的です。シャンプーの際には、毛の根元までしっかりと洗い流し、すすぎ残しがないように注意してください。すすぎ残しは皮膚炎やかゆみを引き起こす原因となるため、丁寧に行うことが大切です。

また、シャンプー後にはしっかりと乾かす必要があります。濡れた状態が続くと、皮膚トラブルの原因となることがあるため注意しましょう。

食事の改善で健康な被毛を保つ

アメリカンショートヘアの抜け毛対策として、栄養バランスの取れた食事は欠かせません。健康な被毛は、適切な栄養素を摂取することによって維持されます。特に、タンパク質や脂肪酸は被毛の健康に直接影響を与えるため、質の良いキャットフードを選ぶことが重要です。

タンパク質は被毛の主成分であり、これが不足すると被毛が弱くなり、抜け毛が増える原因となります。また、オメガ3やオメガ6脂肪酸といった必須脂肪酸は、被毛の光沢を保ち、健康な皮膚の状態を維持するために不可欠です。これらの栄養素が豊富に含まれているキャットフードや、必要に応じて獣医師に相談のうえ適切なサプリメントを追加することも検討すると良いでしょう。

加えて、水分摂取も重要です。適切な水分を摂ることにより、皮膚の健康が保たれ、乾燥による皮膚トラブルや抜け毛を防ぐことができます。特にドライフードを与えている場合は、愛猫が十分な水を摂取しているかを確認し、水分補給を意識することが大切です。

ストレス軽減のための生活環境の工夫

ストレスは猫の健康に大きな影響を与え、抜け毛の原因にもなります。アメリカンショートヘアは比較的社交的で適応力の高い猫ですが、それでもストレスを感じる状況があると、過剰なグルーミングや脱毛を引き起こすことがあります。飼い主様は、できるだけ愛猫のストレスを軽減し、快適な環境を提供するように心がけましょう。

例えば、環境を安定させることが重要となります。引っ越しや新しいペットの追加、大きな家具の移動など、環境の変化はストレスの要因となります。なるべく猫が安心できるスペースを確保し、いつもと同じルーティンを守るよう心がけましょう。

また、猫にとって遊びや運動はストレス発散の手段となります。適度な運動や遊びを取り入れることで、精神的なストレスを軽減し、健康な生活を維持することができます。

そして、猫が安心できる隠れ場所を設けたり、爪とぎやキャットタワーなどを設備することで、猫が自分のペースで過ごせる環境を整えることも重要です。これらの工夫により、愛猫ストレスを減らし、抜け毛の原因を根本から対策することが可能となります。

動物病院での診察が必要な場合

抜け毛の量が異常に多いと感じたとき

アメリカンショートヘアの抜け毛が通常よりも明らかに増加し、日常的なケアでは対応しきれない場合は、獣医の診察が必要です。季節的な換毛期の範囲を超えた大量の抜け毛は、猫の健康状態に何らかの問題が生じている可能性があります。特に、被毛の全体的な状態が悪化し、毛が薄くなってきたり、光沢がなくなる場合には、内的な原因が考えられます。

大量の抜け毛は、栄養不足、ホルモンバランスの乱れ、感染症やアレルギーなど、多岐にわたる要因によって引き起こされます。これらの原因を特定するために、動物病院での診察が必要です。早期に診察を受けることで、問題が深刻化する前に適切な治療を受けることが可能です。

皮膚トラブルや炎症が見られる場合

抜け毛に加えて、皮膚の赤み、かさぶた、腫れ、かゆみなどの症状が見られる場合も、獣医師の診察が必要です。皮膚のトラブルは、外部からの刺激やアレルギー、寄生虫(ノミやダニ)などによって引き起こされることが多く、これらは猫自身の過度のグルーミング行為に繋がることがあります。アメリカンショートヘアが皮膚を繰り返し舐めたり引っかいたりしている場合は、注意が必要です。

また、皮膚の異常が単なるアレルギー反応であれば、比較的早期に対策が取れることが多いですが、放置すると炎症や二次感染が進行する可能性があります。こういった場合には、動物病院で皮膚の状態を確認し、必要に応じて検査を行うことが重要です。

病院での診察プロセスと検査内容

動物病院での診察では、まず問診が行われ、抜け毛の頻度やその他の症状(皮膚の状態、行動変化、食欲不振など)が確認されます。次に、視診や触診により、被毛や皮膚の状態を確認します。アレルギーや皮膚疾患が疑われる場合には、皮膚の検査やアレルギー検査が行われることもあります。

場合によっては、血液検査や糞便検査、尿検査なども実施され、全身的な健康状態や内臓機能の確認が行われます。ホルモン異常や栄養不足、感染症の有無を調べるために、これらの検査は不可欠です。また、ノミやダニなどの寄生虫が原因である場合は、毛のサンプルを取って寄生虫の有無を確認することもあります。

こうした検査の結果に基づいて、獣医師は適切な治療法を提案します。早期の診察と対応により、問題が大きくなる前に対処できることが多いため、抜け毛や皮膚トラブルに気づいた際は速やかに病院を受診することが重要です。

抜け毛に対する動物病院での治療法

アレルギー治療

アメリカンショートヘアの抜け毛の原因がアレルギーである場合、動物病院で行われる治療法はアレルゲンの特定と、そのアレルゲンからの隔離が基本となります。アレルギーには、食物アレルギー、環境アレルギー、接触性アレルギーなどがあり、獣医師は血液検査や皮膚テストを通じて原因を特定します。アレルゲンが判明した場合、その物質を取り除くか、生活環境から避けることが推奨されます。

治療としては、症状を緩和するために抗ヒスタミン剤やステロイドが使用されることが一般的です。これらの薬は、皮膚の炎症やかゆみを抑え、猫の過剰なグルーミング行動を防ぎ、抜け毛の進行を止める効果があります。食物アレルギーの場合、アレルギー対応の特別な食事療法が推奨されることも多く、特定のフードに切り替えることで抜け毛や皮膚トラブルが改善されるケースが多くあります。

皮膚感染症や寄生虫の治療

皮膚の状態が悪化し、細菌感染症や真菌感染症が発生している場合、抜け毛の原因はこれらの感染症にあることが考えられます。

このような場合は、抗菌薬や抗真菌薬の投与が必要です。局所的な治療として、薬用シャンプーや塗り薬が処方されることもあります。感染症を早期に治療することで、抜け毛が改善されるとともに、他の健康問題の発展を防ぐことができます。

さらに、寄生虫(特にノミやダニ)が原因で抜け毛が増えている場合は、寄生虫駆除薬の使用が求められます。ノミやダニの駆除には、スポットオンタイプの薬剤や経口薬が使用されます。これらの寄生虫が駆除されることで、かゆみや炎症が抑えられ、抜け毛も自然に改善します。定期的な駆除薬の使用は、寄生虫の再発を防ぎ、猫の皮膚と被毛の健康を維持するために重要です。

ホルモンバランスの治療

ホルモンバランスの乱れも、アメリカンショートヘアの抜け毛に影響を与えることがあります。特に、甲状腺機能低下症やクッシング症候群などの内分泌系の疾患が原因で抜け毛が発生することがあります。こうしたホルモン異常が疑われる場合、血液検査によってホルモン値の異常が確認されます。

甲状腺機能低下症の場合、甲状腺ホルモンを補充するホルモン補充療法が行われます。また、クッシング症候群の場合は、過剰な副腎皮質ホルモンの分泌を抑えるための薬物療法が必要です。これらの治療によって、抜け毛の改善だけでなく、全体的な健康状態の向上が見込めます。ホルモンバランスの治療は時間がかかることもありますが、適切な治療を続けることで、被毛の状態も徐々に回復していくでしょう。

栄養療法とサプリメントの提案

アメリカンショートヘアの被毛の健康には、栄養バランスが不可欠です。抜け毛の原因が栄養不足や偏った食事によるものであれば、栄養療法が重要な治療手段となります。

その場合には、猫にとって必要な栄養素を含んだ適切なフードが推奨され、特に高品質なタンパク質やオメガ3脂肪酸が豊富なフードが適しています。

また、特定の栄養素が不足している場合、サプリメントの使用が効果的です。例えば、ビタミンEやビタミンB群、オメガ3脂肪酸を含むサプリメントは、皮膚の健康と被毛の質を向上させるために役立ちます。

これらのサプリメントは、獣医師の指示に従って適切な量を与えることが大切です。栄養のバランスが取れると、猫の被毛が健康を取り戻し、抜け毛の減少が期待されます。

自宅での予防と対策

抜け毛を防ぐための定期的なケアの実践

アメリカンショートヘアの抜け毛を効果的に予防するためには、日常的なケアが欠かせません。

ブラッシングや適切な食事など、基本的なケアを継続的に行うことで、抜け毛の量を抑え、被毛の健康を維持することができます。特に換毛期には、定期的なブラッシングが重要です。先述の通り、週に2〜3回のブラッシングを行うことで、抜け毛の量を減らすだけでなく、毛玉や皮膚トラブルも防ぐことができます。

また、シャンプーも適切に行うことで、被毛の健康を保つ手助けとなります。過剰なシャンプーは逆効果になることがありますが、適切な頻度で行うことで、皮膚の汚れや余分な皮脂を取り除き、皮膚や被毛を清潔に保つことが可能です。

アレルギーやストレス管理のための環境整備

アメリカンショートヘアの抜け毛がアレルギーやストレスに関連している場合、環境の改善も重要な予防策となります。猫が快適に過ごせる環境を整えることで、不要なストレスを減らし、アレルギーの原因となる要素を取り除くことができます。

例えば、家庭内のホコリや花粉、化学物質への曝露を最小限に抑えるために、定期的な掃除や空気清浄機の使用が推奨されます。これにより、環境中のアレルゲンを減少させ、アレルギーによる皮膚炎や抜け毛の発生を予防することができます。

さらに、猫が落ち着けるスペースを確保し、過剰なストレスを回避できるような生活環境を整えることも効果的です。

ストレスを受けた猫では、過剰なグルーミングを行うことで被毛を損傷し、抜け毛が増加する可能性があります。猫が安心できる居場所や遊び道具を提供することで、心身のリラックスを促し、抜け毛の予防に繋がります。

定期的な健康診断の重要性

定期的な健康診断も、抜け毛の予防には欠かせません。健康診断では、見た目ではわからない内的な健康状態を確認することができ、特にホルモンバランスや栄養状態のチェックは、抜け毛の原因を早期に発見するために重要です。獣医師による定期的な診察によって早期に問題を特定し、必要な治療を開始することで、抜け毛の進行を抑えることができます。

また、健康診断によって寄生虫や皮膚トラブルの早期発見も可能です。例えば、ノミやダニなどの寄生虫は、日常的に気づきにくい場合もありますが、健康診断で見つけることができます。これにより、問題が深刻化する前に適切な対策を講じることができ、猫の健康を保つことができます。

健康なアメリカンショートヘアを保つために

アメリカンショートヘアの抜け毛問題は、自然な換毛期や遺伝的な要因に加えて、栄養不足やストレス、アレルギーなど多くの要素が関与しています。しかし、これらの原因に対して、日頃から定期的なブラッシングやシャンプー、バランスの取れた食事などのケアを徹底することで、抜け毛の量を減らし、健康な被毛を保つことが可能です。

そして、健康診断による健康上の問題の早期発見と治療も、抜け毛の進行を抑えるためには欠かせません。

もしも愛猫の抜け毛が異常に増えたり、皮膚の異常が見られた場合には、早めに受診するようにしましょう。

記事監修
動物病院病院 総長 藤野 洋

アニホック往診専門動物病院獣医師 藤野 洋

日本大学生物資源科学部(旧農獣医学部)獣医学科卒業。
卒業後、約20年にわたり動物病院でペットの治療に従事。
2007年(株)フジフィールド創業。動物病院とトリミングサロンのドミナント多店舗展開を行い、複数店舗の開業/運営を果たす。

日本大学生物資源科学部(旧農獣医学部)獣医学科卒業。
卒業後、約20年にわたり動物病院でペットの治療に従事。
2007年(株)フジフィールド創業。動物病院とトリミングサロンのドミナント多店舗展開を行い、複数店舗の開業/運営を果たす。

【エデュワードプレス(旧インターズー)】・トリミングサービス成功事例セミナー講師・トリミングサービス成功ガイド監修・Live trim2018 マネージメントセミナー講師 【メディア】・ラジオ調布FM ペットオーナー向け番組MC・多摩テレビ 「わんにゃんMAP」番組パーソナリティ・j:comジモトピ「世田谷・調布・狛江」出演