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マンチカンの一番の特徴は何と言っても足の短さで、その短い足で歩く愛くるしい姿が見ていてとても癒されます。
では通常の長さの足の猫から、どのようにして短い足のマンチカンが誕生したのでしょうか?
マンチカンの歴史は1983年にさかのぼります。アメリカで突然変異とみられる短い足を持つ、ブラックベリーという名の猫が発見されました。
それ以前より世界各地で短い足の猫の報告はありましたが、なかなか種として定着することはありませんでしたので、このブラックベリーがマンチカンの起源となったと言われています。
ブラックベリーは発見された時にはすでに妊娠しており、生まれた子猫は半分が短い足を持つ猫だったのです。
このブラックベリーから生まれた子猫を繁殖家が更に他の猫とかけあわせて、育種(新しい猫種を作り出すこと)を始めました。
当初は近親交配による遺伝子疾患のリスクを減らすため、交配相手は足の短い猫以外の猫種が使用され、異種交配が行われました。
そして1991年になり初めてキャットショーで発表されると、その可愛らしさと短い足の珍しさから多くの人から注目され、全世界に知れ渡るようになったのです。
しかし遺伝子疾患や免疫力の弱さを懸念する人たちからのさまざまな倫理的見解があり、いまだにすべての猫血統登録団体から公認されているわけではありません。
2018年現在も、アメリカのCFA、イギリスのGCCF、フランスのFIFeと、いずれの血統登録団体もマンチカンは猫種として公認されていません。
猫の国際的な血統登録団体であるTICAでのみ公認されており、現在日本で血統書を持つマンチカンは、全てこのTICAからの血統書が発行されています。
またTICAではマンチカンと他の純血種の交配は認められておらず、遺伝子疾患のリスクを減らすためマンチカン同士もしくは雑種との交配のみ公認しています。
そのため日本のペットショップでは稀にスコティッシュフォールドと掛け合わされた折れ耳のマンチカンなどが販売されていることがありますが、TICAには公認されていないため血統書は実質的に意味のないものになります。
マンチカンの名前の由来は、英語で「小さい人」という意味を持つ「munchkin」から名付けられたと言われていますが「オズの魔法使い」に登場する名前にちなんで付けられたとも言われています。
短足なマンチカンは短足な親からしか生まれないと思っている方も多いかと思いますが、実はそうではありません。
確かに短足マンチカン同士を交配させると短足マンチカンが生まれるのですが、マンチカンの繁殖では、短足マンチカン同士を繁殖させることは奇形や死産の可能性が高くなるため禁じられています。
そのためマンチカンの繁殖には必ず親のどちらかが長足なマンチカンになるため、必ずしも親が短足ではないのです。
また中には短足と長足の中間である「中足マンチカン」も存在しています。
その名の通り足の長さは短足より長く、長足より短めになるのですが、体のサイズにもよりますのでどこからどこまでを中足と呼ぶのかはっきりとした決まりはありません。
では実際に短足なマンチカンはどのくらいの割合で生まれるのでしょうか?
一般的に短足マンチカンと長足マンチカンを交配させたときは約1/3の割合で短足マンチカンが生まれます。残りの約2/3は中足マンチカン、もしくは長足マンチカンになります。
また長足マンチカン同士を交配させたときは、短足マンチカンが生まれる割合はほぼゼロに下がりますが、遺伝子疾患の危険はほぼ持っていないため安全です。
全てのマンチカンのうち短足の割合は約2割ほどと言われており、全体的にみると圧倒的に長足マンチカンの方が多くなっています。
では短足マンチカンと長足マンチカンでは、どのようなところに違いが出てくるのでしょうか?特徴や性格などに分けてご説明していきます。
短足マンチカンの平均体重は雄猫で3~4kg、雌猫で2~3kgと猫種の中では小さめです。ボディタイプはセミコビータイプに分類され、体の丸みと引き締まった体つきをしています。
平均体高は約15~20cmになります。
短足マンチカンの体高は猫種の中では最も小さくなり、2014年にはカナダで繁殖された体高13.6cmのマンチカンが世界一小さな猫としてギネスブックに登録されているほどです。
一方、長足マンチカンは短足マンチカンよりも全体的に体格は大きくなり、平均体重は約3~5kgになります。ボディタイプは変わらずセミコビータイプです。
平均体高も約23~25cmと、その他セミコビータイプの猫種と大きく違いはありません。
一般的に短足マンチカンも長足マンチカンも、メスはオスよりも小さめの体つきになります。
体長はどちらも約60cmになることが多いですが、繁殖に使われる雑種の影響で、体格は大きく変化することがあり中には大型の体格になるマンチカンもいます。
子猫の頃の体格は生後3ヶ月で約1~1.5kg、体長は約30cmになり、成猫になるまでに約2倍の大きさになるでしょう。
また短足マンチカンの場合は成長とともに足の骨が丈夫になり、太くなってきます。
短足マンチカンは長足マンチカンの半分くらいしか足の長さはありませんが、足が短いことで体の重心が安定するので、他の猫種に比べると後ろの2本足で立ち上がることを得意としています。
その立ち上がった姿がとても可愛らしく、マンチカンの人気ポイントの一つです。
マンチカンの性格は、短足も長足も大きく変わりありません。
好奇心旺盛でとても明るく元気な猫種です。足が短くても長くても猫じゃらしで一生懸命遊ぶ姿はとても可愛らしいでしょう。
とても人懐っこい性格をしており、甘えん坊な一面も持っていておちゃめな仕草に癒される方も多いです。
猫用のおもちゃで遊ぶのはもちろん、キャットタワーなど高いところに上って遊ぶのも大好きです。肥満対策にもなりますので上下運動が出来る環境を整えてあげると喜びます。
そして社交性もとても優れていますので、人間はもちろん他の猫とも上手に生活していける品種と言われています。そのため先住猫がいる場合でも、うまく生活出来ることが多いでしょう。
またしっかりと餌を置き、エアコンなどの生活環境を整えてあげれば、1泊程度でしたらお留守番が上手に出来る猫種です。
そのため外出が多い方や初めて猫を飼う際にはおすすめの品種です。しかし甘えん坊な性格のマンチカンなので、帰ってきたらしっかりと愛情を注いであげましょう。
その他マンチカンは臆病な性格も持ち合わせています。しつけなどで大きな声を出して叱ってしまうと、恐怖を感じ飼い主とコミュニケーションを取ることが難しくなってしまい、懐かなくなってしまうこともあります。
信頼関係をしっかりと築くためにも、叱る際は優しく感情的にならないようにしてあげることが大切です。
マンチカンには長毛種と短毛種が存在します。長毛種はチンチラのように細くてシルキーな毛が密生しています。しかし基本的に絡まりやすい毛ではないためお手入れはしやすいです。
一方短毛種は普通の猫よりもやや長めにはなりますが豊かに密生しており、手触りが良いのが特徴になります。
特に長毛種の短足マンチカンは毛の長さで更に足が短く見え、歩いている姿がとても可愛らしく見えるため、マンチカンの中では一番人気になっているようです。
なお長毛種のマンチカンも短毛種のマンチカンもグルーミングは必ず必要になりますので、ブラッシングなどのお手入れは定期的に行ってあげましょう。
短足と被毛の長さに関連性はなく、短足マンチカンにも長毛種と短毛種がいますし、長足マンチカンにも両方存在しています。カラーもすべての毛色が公認されています。
一般的に猫の性格はカラーによって多少の違いがあると言われていますが、マンチカンの場合はあまり毛色と性格は関係ないようです。
ここでカラーについて少しご紹介します。
マンチカンのカラーの種類の一つが、模様の入っていない単色タイプです。単色は全身が同じ色の毛色のことを指しています。
様々なカラーが認められていますが、主なカラーはホワイト、ブラック、レッド、ブラウンなどになり、ペットショップやブリーダーなどでも多く見かけるカラーです。
タビー柄とはしま模様のことを指します。タビー柄はマンチカンに限らず、アメリカンショートヘアなどでも人気が高い毛色です。
マンチカンに認められるタビー柄も様々で、一般的なしま模様で円を描くようにぐるぐると縞の入ったクラッシックタビー柄や、ヒョウのような斑点模様の出るスポテットタビーなどがあります。
タビー柄はしま模様の出方や斑点の大きさや量などで大きく印象が変わるのが特徴的です。
毛の色ごとに、ブラックタビー、クリームタビー、レッドタビーなどの単色柄からブルーパッチタビー、ブラウンパッチタビーなどの混合タイプまで様々な呼ばれ方があります。
日本猫である三毛猫のカラーである茶、白、黒の組み合わせのカラーはキャリコと呼ばれ、人気が高いカラーです。
特に海外では流通が少なく、日本からわざわざ輸入されるマンチカンも多くいますが、日本ではそれほど入手困難なカラーではありません。一般的なペットショップやブリーダーで購入することが出来るでしょう。
日本猫とマンチカンの雰囲気が好きな方におすすめのカラーです。
マンチカンを購入するためには、ホームセンターやペットショップなどで販売されているマンチカンを購入する方法と、ブリーダーから直接購入する方法があります。
ペットショップなどで販売されている個体とブリーダーでは値段は大差ありませんが、ブリーダーで直接購入したほうが子猫の親を見ることが出来るメリットがあります。
マンチカンの販売されている値段は生後どのくらい経っているかや体格、そして短足か長足かで大きく変わってきます。
生後3ヶ月程度の子猫の短足マンチカンで約15万~50万円、長足マンチカンで約10万~20万円で販売されることが多いでしょう。
キャットショーなどでチャンピオンになった親猫を持つ短足マンチカンの子猫などの場合は高額になることもあり、中には60万円を超える値段で販売されることもあります。
またマンチカンは近年人気の猫種になりますので、引っ越しや飼い主の事情などで飼うことが出来なくなり里親を探している場合もあります。
その際は主に成猫からの飼育になりますが、生体代金はかかりません。しかし手術代やワクチン代などの費用を負担する場合もありますので、必ず事前に確認をしましょう。
マンチカン自体はもともと病気にかかりやすい猫種ではなく、健全に繁殖をして良い環境で育てれば遺伝的疾患もなく健康なマンチカンが育ちます。
しかし近年のマンチカンの人気により、利益を重視した一部の悪徳ブリーダーたちが遺伝子疾患や免疫疾患などを無視した繁殖をしてきたことで病気になりやすいマンチカンが流通していることも事実です。
そのためマンチカンを購入する際には必ず信頼のおけるブリーダーやペットショップから購入しましょう。
またマンチカンの中でも短足のマンチカンはその体格や骨格から、いくつかかかりやすい病気があると言われています。以下に、かかりやすい病気をまとめました。
短足のマンチカンは、犬のダックスフンドやコーギーなどのように腰に負担がかかりやすい猫種だと言われており、椎間板ヘルニアになることもあります。
椎間板ヘルニアは、背骨の間にある椎間板が変形してしまい背骨近くの神経に当たったり、脊髄を圧迫してしまい痛みが出る病気です。
椎間板ヘルニアは治療をせず放置してしまうと、最悪の場合歩けなくなってしまうこともある怖い病気です。
初期症状としては足を引きずって歩く、運動を嫌がるなどほんの小さな症状が出ることが多く、進行すると失禁してしまったり排泄が出来なくなってしまいます。
早期の発見であれば内科治療が主になりますが、進行した状態だと外科手術が必要になることもあり、飼い主にも猫にも大きな負担がかかります。
椎間板ヘルニアは早期発見・早期治療が効果的な病気になりますので、少しでもマンチカンに変化があればすぐに動物病院で診察を受けましょう。
特に長毛種の短足マンチカンに多いのが毛球症です。
毛球症はグルーミングなどで猫自身が飲み込んだ毛が上手に排出されずに胃の中や腸の中に溜まって塊になってしまい、何らかの障害を起こしてしまう病気です。
通常の猫であれば胃内に塊で毛玉があっても吐くことで排出することが出来ますが、毛球症になってしまうと毛玉が大きく吐くことが出来ません。
そのため食べた餌を吐いてしまったり、食欲が落ちるなどの症状が出ます。
毛球症に気付かずに進行してしまうと大きな毛玉が胃の出口や腸内に詰まってしまい腸閉塞を引き起こし、腸切除などの大きな手術が必要になることもあります。
毛球症は日々のブラッシングや毛球を溶かすサプリメントなどで予防することが可能なので、長毛種のマンチカンを飼育する場合はしっかりと毛球症対策をしてあげましょう。
漏斗胸というのは肋骨の一部の異常で、陥没してしまった肋骨が胸腔内を圧迫するため狭くなってしまい呼吸困難などを引き起こす病気です。
軽度であれば様子を見ながら無治療で過ごしていくことも出来ますが、重度になってしまうと呼吸困難などを引き起こし長生きできない可能性があります。
生後3ヶ月程度の骨が柔らかいうちであれば外科手術で治ると言われていますので、少しでも呼吸を苦しそうにしていたり、胸のあたりのへこみがある場合には早急に動物病院を受診しましょう。
この漏斗胸は遺伝性疾患と言われており、先天性の病気になるため予防は不可能です。
マンチカンは遺伝的要因によりこの漏斗胸になりやすいと言われていますので、親猫や繁殖した猫の中にこの病気のマンチカンがいないかどうかをしっかりと確認してから購入するのが一番の対策になるでしょう。
マンチカンの短足は、骨軟骨形成異常という遺伝的疾患のため、という意見があります。
骨軟骨形成異常とは遺伝子により骨が十分に成長することが出来ない病気で、手足が短い場合はこの病気に当たると考えられています。
マンチカンの短足は異常ではないという意見と遺伝的疾患であるという意見に分かれており、猫の登録団体でも見解が分かれているのが現状です。
この骨軟骨形成異常は変形性関節症を悪化させる原因の一つとして考えられていますので、マンチカンは変形性関節症を引き起こしやすいと言われています。
変形性関節症は肥満や加齢、靭帯の断裂など様々な原因があり、関節に痛みを伴います。
原因がはっきりしている場合はまず原因の治療を行い、サプリメントなどで再発の予防を行うのが一般的です。
しかしこの変形性関節症も遺伝性疾患と言われており、完全な予防は出来ません。
繁殖の際に変形性関節症の猫がいないかどうかを確認したり、悪化を防ぐために肥満に気を付けたり過度の運動をしないなど、日々の生活で気を付けてあげましょう。
足の短い短足マンチカンは、キャットタワーなど段差のあるもので遊べるのかと心配される方も多くいるのではないでしょうか?
確かに、短足マンチカンは他の猫種と比べて高いところに上るのが苦手だったり、足が短い分体に衝撃を受けやすい一面もあります。
しかしマンチカンの運動能力は他の猫種と比べてもほとんど変わらず、むしろ好奇心旺盛でとにかく動き回りたがるので、足腰に負担のかからない安全なキャットタワーでしたら上手に遊ぶことが出来るでしょう。
マンチカンにおすすめのキャットタワーと、足腰に負担の少ない環境の作り方をご紹介いたします。
キャットタワーには様々なタイプが販売されており、中には4段も5段もあり天井まで届くようなものもありますが、マンチカンにはそのようなキャットタワーは不向きです。
好奇心旺盛なマンチカンは出来るだけ高いところまで登ろうとしますが、ジャンプが苦手な猫種のため思わぬ落下事故に繋がることがあります。
また高いところから飛び降りた時に足を傷めたり、降りることが出来なくなってしまう可能性もありますので、必ず低めのものを選んであげましょう。
具体的には1段のタイプのものや最大でも2段タイプのキャットタワーを選んであげましょう。
2段タイプの低めのものでも、猫じゃらしがついていたり爪とぎが付いていたりして、活発な子猫や成猫でも十分に遊び、ストレス発散することが出来ます。
また高さは低い方が安定性が増すため安全に使用でき、値段も約5,000円から手に入りますので、比較的安く購入できます。
また更に低い1段タイプのキャットタワーはアスレチックになっているようなものも多く、猫が色々なおもちゃで遊べるように工夫されているものが多いです。
そのためあまり活発に動くことがなくなった老猫のマンチカンや、まだジャンプ力が不足している子猫などにぴったりのキャットタワーになるでしょう。
怪我の心配もなく、安全に遊ばせることが出来ます。
低めのキャットタワーであれば、段ボールなどを使って手作りでキャットタワーを作ってあげるのもおすすめです。
段ボールは簡単に手に入りますし、例え遊び過ぎて破壊されてしまったとしても修繕は簡単に行うことが出来ます。また費用もキャットタワーを購入するよりも安く済むことがほとんどです。
簡単なキャットタワーの作り方は、猫の体重に耐えられるように少し厚めの段ボール箱を用意して、段差を付けて置いてあげましょう。
段ボールの表面に小さな穴を開け覗けるようにしたり、猫じゃらしなどを設置してあげるのも良いでしょう。
またその際にはマンチカンが激しく遊んだ時にキャットタワーごと転倒することの無いように、キャットタワーの中心にペットボトルに水を入れたものなどで作ったおもりを付けてあげてください。
好奇心旺盛なマンチカンは段ボールが大好きなので、きっと夢中になって遊んでくれることでしょう。
前述のとおり、短足マンチカンは好奇心旺盛な一方で足腰に負担がかかりやすい猫種になりますので、生活環境の工夫を行わないと椎間板ヘルニアなどの病気になるリスクが高くなってしまいます。
そのため、短足マンチカンを飼育する際は段差が少なく部屋が広々としていて猫が走り回れるような住居がベストです。さらに一戸建てであればなお良いでしょう。
しかし一人暮らしやマンションやアパートのワンルームなどに住んでいる場合も多いと思います。いくら可愛らしいマンチカンのためとはいっても、なかなか引っ越しなどは難しいでしょう。
その際は上下運動のできる遊び道具を設置してあげることで、運動不足の解消やストレスを発散させることが出来ます。日中留守にすることが多い家庭であれば、なおさら遊び道具の設置は大切です。
前述した低めのキャットタワーを設置したり、壁に取り付けるキャットウォークなどを取り付けるのも良いでしょう。
逆に高さのあるソファーやテーブルなどがあると、マンチカンは好奇心から少し無理をしてでも登ってしまい足腰に負担がかかることがあるので、出来る限り置かないように気を付けてあげましょう。
また2階以上の住居の場合、窓の閉め忘れにより脱走の危険もありますので施錠はしっかりしましょう。またベランダ等を行き来しているうちに誤って転落してしまう危険があります。
短足マンチカンにとって高所からの落下は致命的です。たとえ命は助かっても、後遺症が残ったり重傷を負ってしまう恐れもあります。
住居の中に急な階段がある場合や吹き抜けなどがある場合も落下事故の危険はありますので、十分に注意してあげるようにしましょう。