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犬が病気に感染するのは、ウイルスや細菌などの病原体が体内に侵入して増殖するためです。
感染症にかかると体の中で抗体が作られ、外部から新たに侵入してきた異物の病原体を攻撃します。この仕組みは免疫と呼ばれます。ワクチンは、この免疫の仕組みを活用します。
通常、抗体が体内に作られるためには、その病気に一度かかる必要があります。しかし、抗体を作るためといっても、意図的に病気にかかってしまっては本末転倒です。わざと病気にかかって、愛犬が苦しむ姿は見たくありませんよね。
そのため、ワクチンが活用されます。
体内にワクチン接種することで、ウイルスや細菌といった病原体に対する免疫を作り出します。つまり、実際に病気にならなくても、体内に抗体を作ることができます。これが病気に対する抵抗力となり、病気になりにくくなるのです。また病気になってしまったとしても、軽症で済むこともメリットです。
ただし、ワクチン接種をすると必ず病気を避けられるというわけではないので、絶対に安心というわけではないところにだけ注意しておきましょう。
子犬は生まれてすぐに母犬の母乳を飲みますが、その母乳を通して、母犬が持っている免疫力が子犬に引き継がれます。ところが、その効果はほんの2~3カ月ほどしか続きません。その後は免疫力が薄れ、病気にかかりやすくなってしまいます。
子犬の状態からワクチン接種していくことで、病気にかかりにくくなり、長生きする可能性が高くなります。人と比較すると、ただでさえ寿命が短い犬です。愛犬とは長く楽しく過ごしていきたいですよね。そこでワクチンについて学んでいきましょう。ワクチン接種を検討する手助けになれば幸いです。
犬のワクチンは、狂犬病ワクチンと混合ワクチンの2種類に分けられます。
狂犬病は脂肪率がほぼ100%の恐ろしい感染症です。人獣共通感染症のひとつで、犬から人へ感染することもあります。
日本では年に1度の狂犬病ワクチンの接種が法律により義務付けられています。そのため、1956年以降は狂犬病の発症が確認されていません。ですが、海外からのペット輸入などを通して、いつ日本国内で発生するか分からないため、今後も接種を継続することが重要です。
混合ワクチンは、対応する感染症の数によって下記の9種類存在しています。
ここまでが2種混合ワクチンです。
ここまでが5種混合ワクチンです。
ここまでが6種混合ワクチンです。
ここまでが9種混合ワクチンです。
レプトスピラは狂犬病と同じく、人獣共通感染症のひとつで、人にも感染する病気です。野生動物が感染源となり、命に関わる重度な症状を引き起こすことがあります。
死に至ることがあり、感染しやすい、人獣共通感染症であるなどの恐ろしい病気に対するワクチンは「コアワクチン」と呼ばれます。コアワクチンは、犬の居住環境に関わらず、全ての犬が接種すべきと言われているワクチンです。具体的には、ジステンパーウイルス、アデノウイルス、パルボウイルスⅠ型・Ⅱ型、狂犬病ウイルスに対するワクチンです。
これらのウイルスが起因する病気を防ぐためにも、コアワクチンの接種は検討していきましょう。
ワクチンで予防できる病気はこちらです。どれも恐ろしい病気ですので、ワクチン接種を検討するようにしましょう。
ワクチン接種の時期はいつがいいのか。どのくらいの感覚で接種すればよいのか。何回接種すればよいのか。
そのような疑問が生じていると思います。ここでは、一般的な接種時期などをご紹介します。
ただしワクチン接種の最適な時期・間隔・回数には様々な議論があるので、獣医師の先生と相談の上、決めるようにしてください。
世界小動物獣医師会(WSAVA)が定めているワクチンガイドラインというものがあります。基本的にはそこに記載されている時期に沿って、ワクチン接種されることが多いです。
これは犬の体内で生成される抗体の変化に合わせて、最適だと考えられている接種タイミングです。子犬には、このスケジュールに沿って、接種することを検討しましょう。
5回目以降の接種については、1年に1回の間隔が基本といわれています。ところが、海外では3年に1回が適しているとの議論も生まれてきており、頻繁に接種することの問題点も挙げられ始めています。
日本と海外では、飼育環境やワクチン接種率などがことなるため、単純比較できないとの声もあります。また近年では、犬の体内にある抗体が残っているかを調べてから、ワクチン接種を検討できる動物病院も出てきています。すでに体内に抗体があれば、新たにワクチンを打つ必要はないという考え方です。
どちらにしても、目的は愛犬の健康のためですので、かかりつけの獣医師の先生と相談の上、必要に応じて事前検査も行い、接種の間隔を決めるようにしてください。
ワクチンの金額は、狂犬病ワクチンが約3,000~4,000円、混合ワクチンが約5,000~9,000円となっています。
ただし日本の動物医療は自由診療という形なので、病院ごとに料金は多少前後します。詳細の料金は事前に確認するようにしましょう。
ワクチン接種は、体内に異物を入れることと同じです。そのため、体調に悪い影響が発生することがあります。
そのため、犬の体調がすぐれない時には、ワクチン接種を控えることがあります。例えば、下記のような場合には、注意が必要です。
また高齢犬では、若いころよりも慎重に接種する必要があります。過去の接種状況や体調を考慮して、獣医師の先生と相談しながら必要性を議論し、具体的な日程を決めるなどしていきましょう。
ワクチンは病気予防という、良い効果をもたらしてくれます。一方で、ワクチンという一種の異物を体内に入れることで、犬の体には副作用としてアレルギー反応が出ることもあります。それらの副作用の中には、命に関わるものもあります。
呼吸困難を伴うような、急性のアレルギー症状です。手足が震えてしまうこともあります。
目や口の周りが赤く腫れたり、痒そうにします。
下痢や嘔吐などの症状が当てはまります。
愛犬は室内で生活していても、散歩で外に出たり、ドッグランやペットホテルなどの施設を使うなどによって、ウイルスに感染する可能性は十分あります。そのため、ワクチン接種は行うようにするのが無難です。ただし狂犬病ワクチン接種は法律で義務付けられているので、必ず動物病院で接種する必要があります。
ワクチンで予防できる病気は、一度かかると治療が難しいものも多いのが実情です。手遅れになる前に、しっかりと予防接種するようにしましょう。
ワクチンを接種した当日は、愛犬に副作用などが出ていないかを様子を見てあげる必要があります。注射後の2~3日間は、激しい運動やシャンプーを控えることも必要です。ストレスなく、安静に過ごせるように生活環境を整えてあげましょう。
ワクチンを注射してもすぐに体内に抗体ができるわけではないので、少なくとも1週間以上は無闇に外へ連れ出すのは控えましょう。外への散歩も、2週間程度経過した後で行うと安心です。
ただし子犬は外界との接触によっても成長するので、抱っこして外に出る、車酔いしなければ車に乗せて外の様子を見せてあげるのは良いでしょう。
もし異常を感じたら、すぐに動物病院で診てもらいましょう。
ワクチンは体内に抗体を作ることで、病原体への抵抗力を付けるための予防方法です。
日本では、狂犬病ワクチンの接種が法律で義務付けられています。また混合ワクチンの接種を任意で受けることができます。
ワクチンを注射していないばかりに予防できるはずの病気にかかってしまったら、愛犬が苦しい思いをしてしまいます。かかりつけの獣医さんに相談しながら、必要性やタイミングを考えてあげましょう。