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痒みとは、皮膚や結膜や鼻粘膜の表面に存在する神経に何らかの刺激が加わることで起こる不快な症状のことを言います。皮膚表面の神経に刺激を与える要因としては、寒さ、熱さ、乾燥、寄生虫やアレルギーなどによる皮膚の炎症があります。
チワワが体を痒がってる時、同時に皮膚からフケが大量に落ちていたり、皮膚表面にかさぶたが付着していることがあります。なぜ痒みと同時にフケやかさぶたが出てきてしまうのでしょうか。
犬も人も同様に皮膚の細胞はレンガのように積み重なって構成されています。レンガ同士の接着をするのはコンクリートですが、皮膚にはこのコンクリートの役割をしているセラミドという物質があります。
このセラミドの蒸発を防いでいる皮脂が少なくなっていたり、体の不調や体質でセラミドがきちんと作り出せなくなってしまうと皮膚の細胞同士のつながりが弱くなります。皮膚の細胞同士のつながりが弱くなると、簡単に皮膚の細胞がポロポロと剥がれ落ちフケとなるのです。
乾燥した細かなフケではなく、皮膚表面にこびりつくかさぶたのようなフケも見られることがあります。これは剥がれ落ちた皮膚の細胞だけではなく、皮膚に感染を起こした細菌やカビなどが塊になっているものです。
普段は皮膚表面で共生している細菌(常在細菌)は、セラミドが弱くなり細胞同士のつながりが弱くなった皮膚では強さを増して異常増殖してしまいます。この細菌と戦うために犬の体から白血球と呼ばれる戦士たちが放出され、細菌と戦争を起こすのです。この戦争は炎症と呼ばれます。
かさぶたのようにこびりつくフケは、この細菌と戦争を起こした白血球と、死んだ細菌たちの残骸なのです。細菌が放出する物質や白血球たちの残骸が体の表面に付着したままだと、チワワの体臭がきつくなり臭うようになります。
また、細菌だけでなくダニやカビなどが皮膚に感染が起きていても同様にフケが出たり臭いがきつくなったりします。
では、チワワが体を痒がっていたりフケが増えていたり体が臭うと感じた時、全てが皮膚病と考えて良いのでしょうか。
単純に寒さや乾燥によって皮膚が痒くなるのは皮膚病とは言いません。この場合には、皮膚は赤くなっておらず、ブツブツとした湿疹などもないでしょう。そして、執拗に同じ部分を掻き続けることもありません。
一方で、皮膚病が疑われるのは皮膚が赤い、腫れている、じゅくじゅくしている、といった見た目の変化がある場合です。これはその部分で炎症が起きているからで、適切な治療をしなければ痒みは収まることはなく、犬は執拗に掻き続けるでしょう。
一言に皮膚病といっても様々な原因と種類があります。大まかに分類すると、感染性の皮膚病、免疫異常で起こる皮膚病、腫瘍による皮膚病があります。
感染性の皮膚病の原因は、寄生虫、カビ、細菌などです。
犬で問題になる皮膚の寄生虫はノミ、マダニ、ヒゼンダニ、ツメダニなどが挙げられます。これらは寄生虫に感染した他の犬からうつされる場合がほとんどです。一方で、カビや細菌による皮膚感染症は、他の犬にうつされるよりは皮膚の免疫力が落ちることが原因で見られるのが一般的です。
免疫異常で起こる皮膚病はアレルギー性皮膚炎が代表的です。アレルギー性皮膚炎には、アレルゲンに接触した皮膚で起こる接触性アレルギー、食べ物で起こる食物アレルギー、飲んだ薬で起こる薬剤アレルギー、花粉やハウスダストの吸引で起こるアトピー性皮膚炎などがあります。
またアレルギー性皮膚炎以外の免疫異常による皮膚病には、自己免疫性疾患があります。
自己免疫疾患とは、本来は攻撃対象ではない「自己」に対して自分の免疫系統が攻撃を仕掛けてしまう病気です。犬の自己免疫疾患によって起こる皮膚病には、エリテマトーデス、天疱瘡、無菌性脂肪織炎などがあり、まだ診断方法や治療法などが解明されていない病気も多く存在しています。
最後に腫瘍による皮膚病ですが、全身の皮膚に症状が現れるものから部分的に症状を示すものなど様々です。腫瘍と聞くとコブのような物が皮膚にできるのを想像しますが、皮膚の表面に広がる腫瘍もあります。もしくは小さな湿疹のように見える中には皮膚腫瘍もあります。
発生する確率は非常に低いものの、皮膚型リンパ腫は全身の皮膚を荒らして強い症状を示す腫瘍の一つです。また、小さな湿疹のように見える肥満細胞種という腫瘍はよく遭遇します。これは犬が痒がることもあり、単なる湿疹と間違えられることも多いようです。
チワワが皮膚病になった時、症状は原因によって少し変わることもありますが、飼い主さんが気づく症状はどの原因であっても共通です。
まず、体が痒がります。犬が体や耳を掻く時、後ろ足を使ってポリポリと掻きます。目や口周りが痒いときには前足を使ってガリガリと掻くでしょう。
痒い部分に口が届く場合、前歯を使ってカミカミと掻くこともあります。歯で噛むように掻く時は比較的痒みが強い場合のようです。慢性的で、なおかつ痒みが中程度の場合には舌で舐めることが多いです。
こういった仕草をしているのを見かけたら、チワワの皮膚をよく見てみましょう。フケやかさぶたが付着していたり、皮膚が赤くなっていることがよくあります。もしくは赤みを通り越してグチュグチュしていたり、舐めすぎ掻きすぎで血が出ていることもあるかも知れません。
もしチワワが体を痒がっていなくても、なんとなく体臭がきつくなっていたり、なでた時にベタついていたら、それも皮膚病である可能性があります。皮膚病になると皮脂の分泌が過剰になることがあり、その場合は毛がべたついてくるのです。
痒み、皮膚の赤み、臭い、ベタつきを見つけたら皮膚病を疑います。その場合、すぐに動物病院を受診した方が良いですが、すぐに病院を受診できない場合にまず自宅でできることがあります。
皮膚病では根本的な原因がなんであれ、皮膚表面で細菌が増えてしまっていることがほとんです。そしてフケやかさぶたを皮膚に付着したままにしてしまうと、正常な皮膚細胞の成長を邪魔してしまうことがあります。そのため、自宅でできる対処法としてシャンプーがあります。
シャンプーをする場合には犬専用のシャンプーを使い、皮膚表面の汚れやベタつき、フケなどをきちんと洗い流します。そして洗い流した後には皮膚を保湿することが重要なので、犬用コンディショナーやリンスを使いましょう。
ただし、皮膚が赤いだけでなくグチュグチュとしていたり出血しているような状態の時にはシャンプーは逆効果となることがあります。この場合はあらゆる刺激を避けなければいけないので、自宅で何かする前にすぐに動物病院を受診してください。
最近ではノミやマダニなどの寄生虫の予防を定期的にしている飼い主さんが多いかと思います。その場合は心配いりませんが、もしそういった予防をしていない場合にはノミとのマダニ予防薬(駆虫薬)を使用しましょう。
動物病院ではまず皮膚表面で起きている現象を確認します。細菌の感染が起きていれば抗生物質、カビ(真菌)の感染が起きていれば抗真菌薬、炎症がひどければ抗炎症薬(痒みどめ)などの内服薬を使います。また抗菌シャンプーなどの殺菌能力のあるシャンプー剤を処方されることもあります。
飲み薬やシャンプーで治らない、もしくは治っても薬を止めると再発してしまうような場合には、皮膚表面だけの問題ではなく根本的な原因が他にある可能性が考えられます。それはアレルギーが関与している可能性です。
繰り返される皮膚病でアレルギーの関与が疑われる場合には、アレルゲンを特定するための検査をすることがあります。この検査は、血液検査、皮内検査、暴露検査などの種類がありますが、現在犬においては血液検査で食物アレルギーも検出することが可能となっていて一般的に行われています。
食物アレルギーである場合には食事内容を変更します。検査結果からフードを選択することもありますし、検査をしない場合には今まで食べたことのないタンパク質を使ったフードを選択したりします。体質に合ったフードに変えるだけで、長年悩まされた皮膚病が治る場合もあります。
アトピー性皮膚炎であれば、専用の飲み薬や塗り薬だけでコントロールする方法や、減感作療法など免疫反応を根本的に制御する治療法があります。この減感作療法ではアレルギー検査が必須で、その結果から特別な薬剤をその犬のために調整して継続的に投与します。こうすることでアレルゲンに体を慣れさせるのです。
単純な感染ではなく、またどのような治療にもあまり反応しない場合には腫瘍の可能性が高く、この場合には手術や抗癌剤といった治療が選択肢となります。治療のためには腫瘍であることを特定しなければいけないので、まずは診断が重要です。
抗生物質やシャンプーなどの治療だけであれば、チワワは体重が軽いのでおそらく一週間で2000円~3000円程度で済むでしょう。また単純な皮膚病であれば計2週間程度の内服で治癒します。
そして食べ物アレルギーと判断されフードを変更した場合、フードの種類にもよりますがチワワでは月平均で4000円前後となるでしょう。
アトピー性皮膚炎であった場合には、犬のアトピー性皮膚炎専用の内服薬が開発されて使われています。こういった専用の飲み薬で管理する場合はチワワで月10,000円前後であることが多いです。減感作療法などを実施する場合には、皮膚科専門医のいる動物病院で受けるために治療費用はさらに高額となります。
もし万が一腫瘍などであった場合には、治療法が大きく変わるため費用は一概には言えません。
ただし治療費に関しては、地域や動物病院ごとに異なり、また皮膚科専門医による診察を受けるかどうかでも大きく変わります。具体的な費用は地域の動物病院にお問い合わせいただくことをお勧めします。
日頃からできる皮膚病予防法は二つあり、まずノミやマダニの予防薬を継続的に使用すること、もう一つはブラッシングやシャンプーなどで皮膚表面を清潔に保つことです。また食事内容に気を配ることも大切です。
ノミやマダニなどの寄生虫は都会にも非常に多く生息しています。定期的に予防薬を使用することで寄生されてしまうリスクを減らすことができます。
ブラッシングは皮膚を清潔に保つために非常に重要で、寿命を迎えた毛をきちんと除去することで新しい毛が生えやすくなり、毛根も清潔に保つことができます。そしてシャンプーも人と同様に皮膚を清潔に保つために重要な方法です。
このように寄生虫を防ぎ、皮膚を清潔に保つことで多くの皮膚病を予防することができます。そして食事内容を見直すことで、皮膚病の発症を抑えることができる場合も多くあります。
チワワの皮膚病を予防するのに適したフードの選び方をお伝えします。全てのチワワに当てはめることは出来ないかもしれませんが、選び方の一つの考え方として参考にしてください
フードを選択する際には使用されているタンパク源に注目します。一般的にフードは、タンパク質、炭水化物、脂質、ビタミンなどの添加物によって構成されています。このうちのタンパク質がアレルギーに関与していると考えられています。
例えば、鶏肉、豚肉、牛肉、小麦など様々なタンパク源を使用しているフードを食べ続けていると、それら全てのタンパク質に対するアレルギーを獲得してしまう可能性があります。そのため、なるべく少ないタンパク源を使用したフードを選んでおくことで、アレルギーを発症してしまうタンパク源を減らせます。
具体的には、アディクション、フォルツァ10、ナチュラルバランス、ジウイピークなど海外メーカーが作っている製品がお勧めです。国内産にこだわる方もいらっしゃいますが、ペットのフードに関しては海外製品の方が研究が盛んで、栄養学の観点からは優れていることがほとんどです。
一方で、単一タンパク源を与えるという考え方の真逆であるプロテインサーキュレーションという考え方もあります。タンパク源を、アレルギーを獲得してしまう前にどんどん変えていく方法です。この場合は一種類のタンパク質を使ったフードを一ヶ月ごとに変更していくやり方です。
しかしこの方法は科学的根拠がまだ得られておらず、やり方も確立された方法があるわけではないのであまり一般的ではありません。
そして皮膚病の発症を予防するためにはシャンプーが非常に重要です。犬の皮膚のために作られたシャンプーとトリートメントを使用することで、皮膚を良いコンディションに保つことができ、皮膚病の予防や治療にもなるのです。
皮脂をきちんと落とすため、まずはクレンジングシャンプーを使用します。皮脂を浮かせて落とします。そして皮膚の余分な脂を落とした次は、毛を洗浄する一般的なシャンプーか、場合によっては抗菌シャンプーを使います。汚れを落とすシャンプーは皮脂をきちんと落とした後の方が効果が高いのです。
皮脂を落とし、シャンプーで洗った後の仕上げはトリートメントです。綺麗に洗われてむき出しになった皮膚の細胞を覆って保護してくれる役割があります。
これらのシャンプーに関してお勧めできる製品は「アフロートドッグ〜AFROAT DOG〜」です。人間の美容師と獣医師が共同開発した、犬の皮膚のことだけを考えた製品であり非常に効果の高い製品です。
皮膚病を予防するために、寄生虫予防、食事内容、シャンプーを組み合わせてみてください。