犬の内耳炎を解説!症状・原因・治療・予防を知る

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内耳炎とは?

内耳炎とは、犬の内耳に発生する炎症のことを指します。内耳は、聴覚と平衡感覚を司る非常に重要な部分です。この部位に炎症が起こると、犬の生活に大きな影響を与えます。内耳炎は感染症やアレルギー、外傷などさまざまな原因によって引き起こされます。

内耳炎は犬にとって非常に痛みを伴う状態であり、適切に治療されないと深刻な問題を引き起こすことがあります。例えば、聴覚障害や平衡感覚の異常、さらには慢性的な健康問題に発展する可能性もあります。そのため、内耳炎は早期に発見し、迅速に対応することが非常に重要です。早期に治療を行うことで、犬の生活の質を保ち、重篤な健康問題を避けることができます。

内耳炎の症状

犬の内耳炎の初期症状には、耳をしきりに掻く、頭を振る、耳からの異常な分泌物などが見られます。これらの症状は、耳の中で炎症が起こっていることを示しており、飼い主様が早期に気づくことが重要です。
特に耳の周りを頻繁に掻く、頭を振る回数が増える、耳を触ると痛がるなどの行動が見られたら、内耳炎の可能性を疑ってください。また、耳の中が赤く腫れている、異臭がする、耳垢の量が増えるなどの変化も初期症状の一つです。

内耳炎が進行すると、さらに激しい症状を示すようになります。耳の臭いが強くなったり、耳から膿が出ることがあります。これに伴い、犬が耳を痛がる様子がより顕著になります。さらに、バランスを崩して歩く、頭を傾けたままになる、聴力が低下するなどの症状も見られます。これらの症状は、内耳の深部にまで炎症が及び、聴覚や平衡感覚に影響を与えていることを示しているため、早急に獣医師の診察を受ける必要があります。

重篤な内耳炎になると、犬は深刻な平衡感覚の障害を示すことがあります。ぐるぐると回る、嘔吐する、食欲が減退するなどの症状が現れることがあり、これらの症状は内耳の炎症が非常に進行している状態で、放置すると犬の生活に重大な影響を及ぼします。特に嘔吐や食欲不振は、全身状態の悪化を示しているため、直ちに獣医師の診察を受けることが必要です。

内耳炎の原因

・感染症
内耳炎の主な原因の一つに、細菌や真菌による感染症があります。犬の耳の中は湿気がこもりやすく、適切なケアがされていないと細菌や真菌が繁殖しやすい環境になります。例えば、外耳炎が内耳に進行するケースが多く見られます。耳の掃除を怠ったり、耳が濡れたまま放置すると、これらの病原菌が増殖し、内耳炎を引き起こします。特に水泳後や入浴後に耳をしっかり乾かさないと、感染のリスクが高まります。

・アレルギー
アレルギー反応も内耳炎の原因となることがあります。犬が特定の食物に対してアレルギーを持っている場合や、花粉やダニなどの環境アレルゲンに反応する場合、アレルギー反応によって耳の中に炎症が起こり、内耳炎を引き起こします。アレルギー性の内耳炎は再発しやすいため、アレルギーの原因を特定し、それに対する対策を講じることが重要です。例えば、アレルギー用の特別な食事に切り替えたり、環境を整えるなどの対応が必要となります。

・外傷
外傷も内耳炎の原因となることがあります。犬が耳を強く掻いたり、外部からの衝撃で耳を傷つけることで発症します。また、草や小さな異物が耳に入ることによっても内耳が傷つき、炎症を引き起こします。特に活発な犬や外遊びが好きな犬は、耳に異物が入りやすいため注意が必要です。外傷による内耳炎は早期に対処することで、重症化を防ぐことができます。

内耳炎の診断方法

内耳炎の診断には、まず獣医師による詳細な問診と身体検査が行われます。飼い主様から犬の症状や行動の変化について詳しく聞き取り、その後、耳の外観から耳の腫れ、発赤、異常な分泌物の有無を確認します。
また、耳鏡を使って耳の中を直接観察し、炎症の程度や異常分泌物の有無を確認します。

さらに詳細な診断のために、耳の分泌物を採取して細菌培養検査や真菌検査を行います。これにより、内耳炎の原因となっている細菌や真菌の種類を特定します。
また、血液検査を実施し、全身の健康状態を確認することもあります。
アレルギーが疑われる場合は、アレルギー検査を行い、具体的なアレルゲンを特定します。重度の内耳炎が疑われる場合や、通常の検査では原因が特定できない場合は、X線検査やCTスキャンを行い、内耳の詳細な状態を把握します。これらの検査結果を基に、最適な治療方針が決定されます。

内耳炎の治療法

・薬物療法

細菌感染による内耳炎には、抗生物質が用いられます。抗生物質は炎症を引き起こしている細菌を殺菌し、症状の改善を図ります。治療期間は一般的に2週間から4週間で、症状の改善に応じて投薬期間が調整されます。抗生物質の使用は獣医師の指示に従い、規定の量と期間を守ることが重要です。適切に使用しないと、再発や耐性菌の発生を招くリスクがあります。

真菌感染による内耳炎には、抗真菌薬が処方されます。真菌の感染は湿気の多い環境で発生しやすいため、耳の乾燥を保つことも重要です。抗真菌薬は通常、点耳薬として使用され、直接耳の中に投与します。治療は数週間にわたり行われることが一般的です。投薬後は、耳を適切に乾燥させることが大切です。

・外科手術

重度の内耳炎や、薬物療法では改善しない場合、外科手術が検討されることがあります。手術では、耳の中の異常組織を除去し、炎症の原因を取り除きます。また、慢性的な内耳炎の場合、耳の構造を改善する手術が行われることもあります。
手術後は、しばらくの間、定期的な経過観察とケアが必要です。手術による治療は、炎症の原因を根本的に取り除くため、再発のリスクを大幅に減らすことが期待されます。

・補助療法

耳掃除は、内耳炎の治療と予防において重要な役割を果たします。獣医師の指示に従い、適切な方法で耳の中を清潔に保つことが大切です。耳掃除用の専用溶液を使用し、優しく耳の中を拭き取ります。過度な耳掃除は逆効果となるため、適度な頻度で行うことが重要です。耳の健康を保つために、定期的な耳掃除を心がけましょう。

サプリメントも内耳炎の治療に役立つことがあります。オメガ-3脂肪酸やビタミンEなどのサプリメントは、炎症を抑え、免疫力を高める効果があります。これらのサプリメントは、食事に加えることで、内耳炎の症状緩和に貢献します。獣医師の指導のもと、適切なサプリメントを選び、適切な量を与えることが重要です。

内耳炎の予防方法

・日常のケア

内耳炎の予防には、日常のケアが欠かせません。定期的な耳のチェックと掃除を行い、耳の中を清潔に保つことが重要です。耳垢がたまりやすい犬種や、耳が垂れている犬は特に注意が必要です。耳の中を確認し、異常がないかを定期的にチェックする習慣をつけましょう。また、水遊びやシャンプー後には、耳をしっかりと乾かすようにしましょう。湿ったままにしておくと、細菌や真菌が繁殖しやすくなります。耳掃除には専用の溶液を使用し、優しく拭き取るようにしてください。耳を傷つけないよう、適度な頻度で行うことが大切です。

・環境の管理

犬の生活環境も内耳炎の予防に影響を与えます。湿気の多い場所や不衛生な環境は、内耳炎のリスクを高めるため、清潔で乾燥した環境を整えることが必要です。特に、寝床や遊び場の清潔さを保つことが大切です。
また、アレルゲンとなる物質をできるだけ排除し、アレルギー反応を防ぐことも重要です。例えば、花粉の多い季節には、外出後に耳をきれいに拭き取るなどの対策を講じると良いでしょう。
さらに、食事においてもアレルゲンを避け、健康的な食生活を維持することが内耳炎の予防につながります。

内耳炎に関するQ&A

ここでは、よくあるご質問と回答をご紹介します。

Q: 内耳炎はすぐに治りますか?
A: 内耳炎の治療期間は原因や症状の重さによりますが、通常2週間から4週間かかります。早期に治療を開始することで、治癒までの時間を短縮できます。ただし、再発のリスクもあるため、治療後も注意が必要です。

Q: 耳掃除はどのくらいの頻度で行うべきですか?
A: 耳掃除の頻度は犬の状態によりますが、月に1回程度が目安です。ただし、耳垢がたまりやすい犬種や水遊びを頻繁にする犬は、もう少し頻繁に掃除を行う必要があります。獣医師の指示に従い、過度な耳掃除は避けるようにしましょう。

Q: 内耳炎は再発しやすいですか?
A: 内耳炎は再発することがあります。特に、アレルギー体質の犬や耳の形状が特殊な犬は再発しやすいです。予防策を講じることで、再発のリスクを減らすことができます。定期的な耳のチェックと適切なケアが重要です。

Q: 犬が内耳炎になった場合、自宅でできることはありますか?
A: 自宅でできるケアとしては、耳を清潔に保つこと、湿気を避けること、適切な食事管理があります。ただし、内耳炎の治療は獣医師の指導のもとで行うことが基本です。自己判断での治療は避け、必ず獣医師に相談してください。

Q: 内耳炎の治療費はどのくらいかかりますか?
A: 内耳炎の治療費は、診察料、検査料、薬代、場合によっては手術費用などが含まれます。症状の重さや治療方法によって費用は変動しますが、通常の治療であれば1万円から3万円程度が目安となります。詳細は動物病院で確認してください。

まとめ

犬の内耳炎は痛みや不快感を引き起こすだけでなく、放置すると深刻な健康問題を引き起こす可能性があります。飼い主様としては、早期に症状に気づき、適切な治療を行うことが重要です。内耳炎の主な症状や原因、治療法、予防方法について理解し、日常のケアをしっかりと行うことで、愛犬の健康を守ることができます。

また、内耳炎は再発しやすい病気でもあるため、一度治療が完了しても油断せず、定期的な耳のチェックとケアを続けることが大切です。耳の異常を感じたら早めに獣医師に相談し、適切な診断と治療を受けるようにしましょう。特に、アレルギーや外傷などの原因が特定できた場合は、それに対する対策を徹底することが重要です。

内耳炎に関する疑問や不安がある場合は獣医師に相談し、専門的なアドバイスを受けるようにしてください。内耳炎について正しい知識を持ち、適切な対応を行うことで、愛犬とともに健康で幸せな生活を送ることができるでしょう。

記事監修
動物病院病院 総長 藤野 洋

アニホック往診専門動物病院獣医師 藤野 洋

日本大学生物資源科学部(旧農獣医学部)獣医学科卒業。
卒業後、約20年にわたり動物病院でペットの治療に従事。
2007年(株)フジフィールド創業。動物病院とトリミングサロンのドミナント多店舗展開を行い、複数店舗の開業/運営を果たす。

日本大学生物資源科学部(旧農獣医学部)獣医学科卒業。
卒業後、約20年にわたり動物病院でペットの治療に従事。
2007年(株)フジフィールド創業。動物病院とトリミングサロンのドミナント多店舗展開を行い、複数店舗の開業/運営を果たす。

【エデュワードプレス(旧インターズー)】・トリミングサービス成功事例セミナー講師・トリミングサービス成功ガイド監修・Live trim2018 マネージメントセミナー講師 【メディア】・ラジオ調布FM ペットオーナー向け番組MC・多摩テレビ 「わんにゃんMAP」番組パーソナリティ・j:comジモトピ「世田谷・調布・狛江」出演