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チンチラは猫種の中の大きさでは中型に分類され、コビータイプと呼ばれています。毛質はペルシャ猫の中でも軽く、毛の色はゴールドまたはシルバーで、美しい被毛が特徴です。
体重は約3~5.5kgが標準になります。
身体は足が短く、全体的に丸みを帯びた体型をしています。顔はドールフェイスと呼ばれ、丸い目と低い鼻、そして両耳の間隔が離れていることが特徴です。
またチンチラはペルシャ猫の中でも目の色が異なっており、緑または青系統の瞳をしています。アイラインも通常のペルシャより強くくっきりと目立ちます。
チンチラは平均寿命が約15~20歳と、猫種の中では長生きする猫種です。
しかしチンチラには遺伝的にかかりやすい病気や、その独特な身体の特徴からなりやすい病気がいくつかありますので、こちらでご紹介していきます。
チンチラは多発性嚢胞腎という、遺伝疾患が起こりやすい猫種です。
多発性嚢胞腎は優性遺伝と言われており、両親のいずれかが発症していると約50%の確率で発症する怖い病気です。
年を取るにつれて腎臓に出来た小さな嚢胞(液体が入った袋状の構造物)が少しずつ大きくなり、数も増加することで、腎臓が膨張してしまう病気です。
その結果腎不全を引き起こし、最悪の場合死に至ります。ゆっくりと進行していく病気で、一度発症してしまうと有効な治療法がありません。
チンチラは体質的にシュウ酸カルシウムという結晶が尿中に出来やすいと言われています。
猫の尿中に出来る結石は主にストルバイト結石とシュウ酸カルシウム結石になりますが、シュウ酸カルシウムは特に膀胱内で大きな結石になってしまう傾向があります。
そして療法食で溶かすことのできるストルバイト結石と違い、シュウ酸カルシウム結石は溶かすことが出来ないので、一度結石が出来てしまうと外科手術をする治療法しかありません。
また、小さな結石でも尿管に詰まると尿が排泄出来なくなってしまい、治療が遅れると尿毒症や急性腎不全で危険な状態になることもあります。
チンチラは大きく愛らしい目をしていますが、眼瞼内反症を引き起こしやすい猫種です。
眼瞼内反症はまぶたの縁が内側にめくれてしまうことによってまつ毛が目に当たってしまい炎症を引き起こし、かゆみや痛み、また目に傷を作ってしまう病気です。
目に異物反応が起こってしまい目やにも多く出るので、涙やけを引き起こしたり流涙症を併発することも多くあります。
進行すると手術が必要になることもあるため早期発見が大事です。
長毛種であるチンチラは綺麗好きのため、グルーミングを常に行っています。
そのため長い毛を飲み込んでしまうことが多く、その毛が胃の中や腸の中で球状に塊になってしまう病気を毛球症と言います。
毛球が胃の中にあり小さな場合は吐き出したりサプリメントで溶かすことも出来ますが、大きくなってしまうと吐き出せないばかりでなく腸内に詰まってしまいその部分が腐ってしまうこともあります。
そうなってしまうと腸切除を行ったり外科的手術が必要になることもありますので、常日頃からの予防が大切です。
チンチラは毛玉が出来やすい猫種です。そのため毛玉の下の皮膚が不衛生になりグルーミングが出来なくなると皮膚病になりやすくなります。
また長毛種であるチンチラは短毛種と違い皮膚の確認を定期的にすることが難しいので、皮膚病になっても気付くことが遅くなってしまい悪化してしまうことがあります。
皮膚病になってしまうと、その部分にカビの一種である菌が繁殖してしまったり、膿が出てしまったりと治療には時間がかかることが多いです。
上記の病気について、病気にかかってしまった時の症状や治療法、それにかかる治療の費用などを詳しく解説していきます。
遺伝疾患の多発性腎嚢胞は腎臓の機能がだんだんと低下していく病気のため、慢性腎不全と類似した症状です。
主な症状としては嘔吐や体重減少の他に、水を大量に飲み尿をたくさんするようになる多飲多尿も見られます。
また病気が進行し、腎嚢胞が大きくなり腎臓自体の大きさも大きくなると腹部の臓器を圧迫するため腹痛を引き起こすこともあります。
腹痛がある猫はお腹を丸めて前のめりに座り込むような背湾姿勢をとり、お腹を触られるのを極端に嫌がるようになります。
多発性嚢胞腎の有効な治療法はいまだに確立されていません。
そのため主な治療法は対症療法となり、いかに腎不全の進行を遅らせるかという治療になります。
腎不全の進行を遅らせる治療法として、定期的に点滴をしたり投薬によって血圧を安定させる方法があります。また餌でタンパク質と塩分をコントロールすることで腎臓の負担を減らす食餌療法もあります。
また嚢胞が大きくなり他の臓器を圧迫している場合や痛みを引き起こしているような場合は腎嚢胞の中の液体を吸引して腎臓の大きさを縮める治療も行われます。
しかし液体の吸引をしてもすぐにまた溜まってしまうことが多く、一度吸引治療を始めると月に数回は吸引の必要があり猫にとっては大きな負担になるでしょう。
いずれの治療も完全に治ることは無く長期的な治療になるので、猫の腎臓の様子と飼い主の経済的負担などを含め、獣医と相談しながら治療を行う必要があります。
多発性嚢胞腎の治療にかかる費用は、定期的な検査や点滴治療に加え、食餌療法まで含めると幅広いので総額は多額になることが多いでしょう。
投薬にかかる費用は毎日継続して行う必要があるので1か月に約3,000~10,000円、腎臓の状態により定期的に行う必要がある点滴は通院で1回約4,000円になります。
また症状が悪化してくると入院しての血管点滴が必要になり、その際は1泊の入院につき約10,000~20,000円の治療費がかかります。
その他腎臓の定期的な超音波検査が1回約5,000~10,000円、血液検査が約5,000~15,000円、液体を吸引する場合は1回の吸引につき約5,000~10,000円になるでしょう。
症状が軽度の場合は自宅での投薬治療が主になりますが継続して治療する必要があるため、生涯の治療費はかなりの金額になることを認識しておく必要があります。
チンチラがかかりやすいシュウ酸カルシウム結石の尿路疾患では、主に排尿時に症状が表れます。
初期症状は無症状のことが多いです。しかし初期でも尿検査を行うことで尿の中にシュウ酸カルシウムの結晶が見られることもあります。
症状が進むと排尿時に結石が尿道を刺激するために排尿痛が起き、痛みから鳴いたり血尿が出るようになります。また結石が大きいと尿道に詰まってしまうため完全に排尿出来なくなってしまいます。
完全に結石が尿道に詰まってしまうと、毒素を尿で排泄できないため尿毒症になってしまい、早期に治療を開始しないと命に関わることもある怖い病気です。
結石が尿道に詰まって閉塞を起こしてしまっている場合には尿毒症や急性腎不全などを引き起こす恐れがあるため早急に尿道の結石を取り除く処置が行われます。
その際は暴れることがあるため、麻酔をかけて処置を行うこともあります。
またチンチラに多いシュウ酸カルシウム結石は食餌療法で溶かすことが出来ないため、膀胱内に出来てしまった結石は外科手術で取り出すことが必要になります。
手術後は再発予防のため、餌で尿のペーハーをコントロールし、結石が再度出来ることが無いようにする食餌療法が取られます。
尿路疾患の治療は、状態によって大きくかかる費用が異なってきます。
初期の場合は尿のペーハーをコントロールする食餌療法が基本になるので、療法食代として月に約5,000円必要になるでしょう。
結石が膀胱内に出来てしまっている場合は外科手術が必要になりますので、膀胱結石手術代として入院費も含め約100,000~200,000円かかってきます。
尿検査は一般的に1回約1,000~2,000円になるので、高額の手術費が必要になる前に定期的に検査をしておくことがおすすめです。
チンチラに多い眼瞼内反症は主に目に症状が表れるので、分かりやすいです。
具体的には目をしょぼつかせることが多くなり目を開くことが出来なくなったり、完全につぶってしまったりします。
そして目に異物感があるので前足でしきりに目をこすったり、真っ赤に充血してしまいます。
眼瞼内反症の治療はまず外科処置によって目に当たっているまつ毛を取り除きます。
しかし目に当たっているものがまつ毛だけでなく、まぶたが長く当たってしまっている場合などは麻酔下での手術が行われ、まぶたを切除します。
またすでに起こってしまっている目の炎症に対しては点眼薬での治療が主になり、まつ毛除去のみの治療の場合はまた生えてきてしまうため定期的な処置が必要になってくるでしょう。
眼瞼内反症の外科手術は専門分野の処置になるので高額になるでしょう。
治療を行う動物病院にもよって大きく異なってきますが、まつ毛を取り除く外科処置で約5,000~30,000円、まぶたを除去する手術になると約100,000~300,000円と多額の費用がかかることが多いです。
点眼薬での治療は約3,000~5,000円になり、炎症が無くなった状態になるまで続けて行う必要があります。
毛球症になり食道内や胃の中に毛球が出来てしまうと、主に嘔吐の症状が出ます。
ひどくなってしまうと水を飲んだだけでもすぐに吐いてしまい、栄養が吸収出来なくなってしまいます。毛球を吐くことが出来れば良いのですが、吐けない場合は胃液をたくさん吐きます。
そして毛球が胃の出口を塞いでしまうため胃の粘膜を刺激してしまい、食欲がなくなったり腹痛の症状が出ることもあります。
初期の毛球症であれば、毛球除去剤を舐めさせて毛玉を排便と一緒に排泄させます。
毛球除去剤はペースト状になっていることが多く、味も苦味は無く出来ているので猫にとっても大きな負担無く行うことが出来る治療でしょう。
すでに毛球が大きくなり胃の中にある場合は内視鏡を用いて毛球の除去を行ったり、内視鏡での除去が難しい場合は胃切開や腸切開を行うこともあります。
胃切開や腸切開は開腹手術になるので入院治療が必要になるでしょう。
また一度毛球症にかかった猫は再発防止のため、食物繊維が多い餌に切り替えるなど食餌療法も必要になります。
毛球除去剤のみの処方の場合は約3,000円ですが、胃の内視鏡手術や開腹手術により腸切開になった場合などは約100,000~250,000円必要になるでしょう。
その他、超音波検査に約3,000~5,000円、レントゲンを撮ると約5,000~10,000円かかります。
早期であれば猫の負担も飼い主の経済的負担も少なく済みますので、チンチラは毛球症になりやすい猫種ということを理解した上で気を付けて過ごしていけると良いでしょう。
チンチラが皮膚病になると、初期であれば色素沈着が起きたり触るとベタベタする症状が出ますが、進行してくると強いかゆみが出たり皮膚病になっている部分から膿が出たりします。
膿が出るとそこから雑菌が繁殖してしまい異臭を放つこともあり、そのまま放置してしまうとどんどん皮膚病の範囲が広がってしまいます。
皮膚病になってしまったときは、まず感染のコントロールを行います。主に投薬治療になりますがそれと並行して皮膚病部位を清潔に保つため毛刈りを行い、必要に応じてシャンプー療法も行います。
猫によっては水をとても嫌がる猫も多いので、薬用シャンプー療法を行う際は基本的に部分シャンプーになりますが、皮膚病が全身にわたって怒っている場合にはその限りではありません。
皮膚病の治療の費用は、投薬で治療する場合は1か月に約3,000~5,000円になることが多いでしょう。
それとともに薬用シャンプー療法を行う場合は部分シャンプーで約2,000~4,000円、全身シャンプーになると約5,000~10,000円必要になります。
また強いかゆみ止めやステロイドを内服で飲んでいる場合は定期的な血液検査が必要になりますので、1回あたり約5,000~10,000円かかることが多いでしょう。
チンチラの病気を予防するためには、何よりもチンチラがかかりやすい病気をしっかりと理解した上で飼育しましょう。
そして常日頃から小さな変化に気付けるようになることが一番大事です。
特にチンチラは長毛種でフワフワな毛を持っているので、痩せてきたり太ったり、皮膚に異常があったりと外見上の変化に気付きにくいことがあります。
日々のブラッシングなどコミュニケーションを取りながら注意して見てあげましょう。
また積極的な運動をあまりしない猫種になるので、運動する習慣を付けることで肥満などのリスクが減り生活習慣病の予防にもつながります。
キャットタワーやおもちゃを上手に使用し健康的な生活を送ることが出来るようにしましょう。