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犬の破傷風(はしょうふう)の症状とは、破傷風菌が原因となって引き起こされる極めて危険な病気です。
破傷風菌は土壌中に存在しており、傷口などから体内に侵入、発症してから治療が遅れると、筋肉の痙攣や硬直といった神経症状がおき、死亡することもあります。
破傷風の特徴は、口が開きにくくなる、よだれを垂れ流す、食べ物が飲み込みにくくなる、瞳孔がずっと縮小したままになる、瞼が引き攣る、瞬膜の突出、顔が引き攣る、耳が立ちっぱなしになるという症状のほか、発熱もみられます。
症状が進むと、全身の筋肉が硬直性痙攣を起こし、足が突っ張ったようになるので歩行ができず、背中を弓上に反らした姿勢をとったりするほか、呼吸筋に痙攣が起きて呼吸困難を起こしたり、音や光といった刺激に誘発されて痙攣が起きることもあります。
発症から5日程度で死亡することが多いですが、その間、意識ははっきりしていることが多いので、犬は激痛に苦しめられることになります。
まれに傷の近くの筋肉にのみ症状が出ることがあり、その場合は2週間程度で回復することがあります。
破傷風菌という細菌が傷口から感染することで起こります。
破傷風菌は空気があると生きられない偏性嫌気性菌のため、芽胞と呼ばれる環境の変化に強く耐久性の高い殻のようなものに包まれ、世界中の土中に広く分布しています。
犬が傷のある状態で土遊びなどをすると、傷口から破傷風菌が体内に侵入し、感染した部位で芽胞の殻を壊して発芽、増殖を始めますが、破傷風菌は偏性嫌気性菌という性質上、酸素のない深い傷に侵入した場合に増殖することが多いといえます。
破傷風菌は、増殖末期で神経毒(テタノスパスミン)と溶血毒を産生しますが、このうち問題となるのは神経毒で、運動神経線維の末端から取り込まれ、中枢神経に運ばれるた後、運動神経などを過度に興奮させることで、筋肉が突っ張ったようになる硬直性痙攣を引き起こします。
細菌が繁殖している傷の組織を切除し、患部をオキシドールで消毒、感染の拡大を防ぎながらペニシリンを患部及び全身に投与します。
その後は栄養剤や鎮痛剤を与え、光への反応を防ぐ為に暗所で安静にさせ、呼吸困難が併発している場合は、酸素テントに入れるなどして酸素吸入をします。
犬の破傷風は現在犬用のワクチンがないため、予防が難しいですが、破傷風菌は土中に潜んでいるので、もし犬が傷を負ったらすぐに洗って清潔にするようにすることを心掛けましょう。
例えば、土から突起している古釘や古い有刺鉄線なども、それらに破傷風菌が含まれた土が付着していて、踏んだり引っかかったりして深い傷を負うと感染のリスクが上がるので、散歩後は全身はもちろん、肉球に傷がないか確認を忘れないようにしましょう。
また、万が一犬が破傷風を発症した場合でも、初期症状の段階であれば助かる可能性がありますので、異変を見逃さず、すぐに動物病院へ行ってください。