目次
犬のエキノコックス症(えきのこっくすしょう)とは、寄生虫であるエキノコックスに感染して引き起こされる病気です。
エキノコックスは体長5ミリほどで、キツネ、ネズミ、そして人や犬にも感染する恐ろしい人獣共通感染症(ズーノーシス)であり、成長する過程で、「虫卵→幼虫(ネズミ)、幼虫→成虫(キツネ・犬など)」と寄生する対象が異なり、食べる側食べられる側の自然界の動物の関係をうまく利用して増殖していく寄生虫です。
犬がエキノコックスに感染した場合の症状は特にありませんが、大量寄生した場合は、軽い下痢を起こしたり、粘液の便が出ることもあるほか、無症状ではありますが、糞便の中には多量の虫卵が排出されているので、感染しているかどうかは獣医師を介して糞便を検査機関に送れば調べてもらえます。
人がエキノコックスに感染した場合、適切に治療をしなければ死亡してしまいます。
人の体内では感染してから時間をかけて身体を蝕み、その期間は大人で10年以上、子供で5年といわれています。
最初は肝臓に住みついて少しずつダメージを与えながら、小さな風船状ののう胞を肝臓に沢山作り、時にはのう胞が破裂して幼虫が血液に乗り、肺や脳へと転移することもあるため、大変危険です。
また、肝臓が虫の巣になるため、正常に機能しなくなり、肝硬変や肝機能不全により90%の確率で死亡します。
エキノコックスに感染してしまう原因は、虫卵や幼虫を体内に持った感染動物(野ネズミなど)を犬が食べ、体内に取り込んでしまうことで感染し、発症します。
エキノコックスの虫卵をネズミが摂取すると、体内で虫卵→幼虫へと成長してそのネズミをキツネや犬が捕食、キツネや犬の体の中で幼虫→成虫へ成長して1日最大500万個の虫卵をキツネや犬の糞便と共に排出します。
排出された虫卵は、自然環境に広がり、またそれをネズミが摂取するというサイクルを繰り返してエキノコックスは増殖していきます。
人の場合の感染経路は、自然環境に広がる主に小川や淡水、野山の山菜や果物に付着している虫卵を口から摂取することによって感染します。
犬の体内にいるエキノコックスを駆除すれば治療は終了で、動物病院にある専用の駆虫薬を犬に飲ませればほぼ100%駆除することが可能です。
人の場合は残念ながら、感染末期状態ですと有効な治療薬がなく、感染した肝臓をエキノコックスごと手術で摘出するほかありません。
また、エキノコックスだと確定診断するにはとても困難で、自覚症状がないまま肝臓が虫の巣になっていることが多く、症状が出たころには肝臓がんと勘違いされるケースも多くあります。
手術でお腹を開けてみたらエキノコックスだったとわかるケースもあり、なかなか発見は難しいですが早期発見・治療ができれば完全に治癒することもできるため、早期診断が非常に重要となります。
犬の感染予防対策は「とにかくネズミを捕食させないこと」です。
犬がエキノコックスに感染してしまった場合、糞便に虫卵を排出するまでには約一か月かかるので、もしエキノコックスの感染が疑われる時は虫卵が排出される前に駆虫薬を与えることで未然に防ぐことができます。
人の感染予防としては、「小川や淡水などの生水を飲まない」「山菜や果物はよく洗うか加熱してから食べる」「食事の前に手をよく洗う」「犬を外で放し飼いにしない」「犬の糞便を片付けた後はよく手洗いをする」「野良犬や野良猫に触れない、触れたらきちんと手を洗う」などが挙げられます。
とにかく口に入らないように努めましょう。
エキノコックスはキツネが多数生息している北海道での感染が起きていましたが、近年本州でも感染の報告が確認されています。
そのため、エキノコックスに対して正しい知識を持ち、予防と対策をきちんとすることで、感染のリスクが減らして防げるよう、よく覚えておきましょう。