作成日: 更新日:
目次
膝蓋骨脱臼は、別名パテラとも呼ばれ、小型犬に多く見られる病気です。具体的には、関節が可動域を超える動きをしてしまった時に、主に後ろ足の膝蓋骨(膝のお皿)の骨が脱臼してしまうという病気です。
関節がある場所であれば、どこでも発症しますが、特にワンちゃんの場合は、膝蓋骨を脱臼してしまうことが多いです。
通常は、この骨が太ももの骨にある滑車溝と呼ばれる溝にうまくはまり機能していますが、何らかの原因で溝から外れてしまい、脱臼してしまうことがあるのです。
この病気には、先天性のものと、後天性のものがあります。先天性のものは先天的に骨、関節、靭帯等の筋に問題があり、子犬の時から異常がみられる場合と、成長につれ徐々に判明してくる場合があります。
後天性のものは、高いところからジャンプする、激しく転倒する、交通事故等の外的衝撃により引き起こされます。室内飼いの場合、フローリングのような滑りやすい環境で飼育すると、発症の可能性が高まります。
膝蓋骨脱臼の症状は、その進行状態に応じて4つのグレードにわけられます。初期の場合は、足を引きずるように歩く等、歩き方で判断できる場合が多いので、異常な歩き方をしている場合は、注意しましょう。
それでは、進行状態の4つのグレードとその症状を詳しく見ていきましょう。
膝蓋骨の位置は正常です。膝がまっすぐに伸びた状態で、膝蓋骨を押すと脱臼を起こしますが、押すのをやめれば自然に正しい位置に戻ります。日常生活下では脱臼を起こすことは珍しく、ほぼ症状は見られない場合が多いです。
まれに激しい運動後に、スキップをするように歩く等、歩行に異常がみられる場合がありますが、何もしなくとも、しばらくすれば元に戻る場合がほとんどです。
膝蓋骨の位置は正常ですが、膝を曲げたときに脱臼の症状がみられます。一度脱臼をすると、足を伸ばしたり、飼い主が膝関節を押してあげない限り、元に戻りません。
足を後方に伸ばして、脱臼箇所を治そうとしているようなしぐさが見られたら、注意しましょう。日常生活に大きな支障はありませんが、脱臼している時には正常に歩行することはできません。
放置しておくと、骨や関節が変形してしまったり、靭帯が伸びてしまったりすることにより、グレード3に症状が進行してしまうこともありますので、要注意です。
膝蓋骨の脱臼が、日常的にみられる状態です。足を伸ばした状態で、飼い主が膝関節を押してあげれば、戻る場合が多いですが、すぐにまた外れてしまいます。
関節の変形が見られ始め、正常に歩くことができないことが見て取れる回数が増えます。足を引きずって歩いていない場合でも、内股で腰をかがめるような歩き方が見られるようになります。
膝蓋骨が常に脱臼している状態です。異常歩行が日常化します。飼い主が関節を押してあげても元に戻らず、骨の変形も重度となり、膝の曲げ伸ばしができなくなります。
膝蓋骨脱臼は自然に治癒することはない病気です。適切なタイミングで治療を行わないと、骨、関節、靭帯等の周辺組織にまで変形や損傷が及び、将来的に歩行できなくなる可能性があります。
脱臼は痛みを伴うことも多いため、日常生活に支障をきたし、ワンちゃんの生活の質を著しく低下させてしまいます。歩き方に異常がみられる場合には、早めにお医者様の診断を受け、対策を打ちましょう。
膝蓋骨脱臼はどのような犬種の犬でもかかる病気ですが、特にチワワやトイプードルのような、足の骨が華奢な小型犬は発症しやすいと言われています。
理由は、上記のような小型犬は生まれつき滑車溝が浅かったり、靭帯が弱い個体が多いためです。また、トイプードルは比較的運動量の多い犬であるため、激しい運動で脱臼してしまうことがあります。
治療法には、サプリメントやお薬で症状を緩和する方法と、手術を行う方法がありますが、根治させるには手術を行う以外にありません。
グレード4まで症状が進行してしまうと、手術によっても完治させることは難しく、合併症等の手術のリスクも高まりますので、早期発見、早期手術が大切です。
手術の方法は、簡単に言うと膝蓋骨がはまっているはずの滑車溝を手術により深く掘り、関節周辺組織の調整を行い、正しい位置に膝蓋骨が収まるように固定し、脱臼を起こりにくくするというものです。
上記は術式を簡単に説明したもので、進行状況のグレードやワンちゃんの年齢、体格等によって術式は多岐にわたります。
どのような術式を行うかによって治療期間や費用も異なりますが、平均的には手術時間1~2時間、入院2日~7日、抜糸までに2週間の期間を要し、普段通りお散歩に行けるようになるまでには1ヶ月ほどかかります。
費用は一番シンプルなもので小型犬片足3万円~5万円のようです。術式を複数組み合わせたりする場合には、10万円~15万円ほどかかってしまう場合もあるようです。
また、入院費等も含めると、25万円~35万円と高額となります。病院によっても異なりますので、詳細はかかりつけのお医者様にご確認ください。
先天的な場合を除いて、膝蓋骨脱臼は予防できる病気です!また、軽度の場合は、下記の点に気を付けて過ごせば、手術を行わなくてすむ場合もあります。
トイプードルはアジリティー等でも活躍する犬種ですが、急な方向転換や、たくさんジャンプさせる等の運動はなるべく控えるようにしましょう。後ろ足のみで立たせるような行為も負担になりますのでやめましょう。
膝蓋骨脱臼のみに関わらず、肥満は関節に負担をかけます。必要以上に関節に負担がかかるのを防ぐため、適正体重を保つよう心掛けましょう。
フローリングのような滑りやすい住環境や、ソファーなど高い場所への飛び乗り、飛び降り等が多いと膝蓋骨脱臼を発症しやすくなります。マットをひいたり、なるべく段差を少なくする等、住生活を整えてあげましょう。
膝蓋骨脱臼は、重症化させないことが肝心です。ワンちゃんの様子をしっかり見守り、適度な運動、適切な住環境、関節に負担の少ない生活を行うことで、軽度な症状を維持することもできます。
もし手術が必要となってしまった場合でも、症状が軽いうちに行ったほうがリスクも少なく、根治の可能性も高まります。日ごろから膝蓋骨脱臼の症状がないか確認し、ワンちゃんの快適な生活を守ってあげましょう。