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グレート・ピレニーズがかかりやすい病気やケガから、性格や体の特徴なども確認していきましょう。
ヨーロッパの山岳地帯には古くから、白い毛色を持つ大きな犬がいます。イタリアではマレンマ・シープドッグ、ハンガリーにはクーパース、今も現役の牧羊犬であるピレニアン・マスティフ、そしてグレート・ピレニーズです。
これらの中で最も歴史が古いものはマレンマ・シープドッグ(マレンマーノ)とされており、グレート・ピレニーズの祖先犬の中にもマレンマーノが存在したことが推定されています。それより遡る紀元6世紀頃、遊牧民や行商人によって中央アジアまたはシベリアから入ってきたチベタン・マスティフ系の大型犬がグレート・ピレニーズの祖先だと考えられています。この犬がアーリア人やフェニキア商人の手によってヨーロッパへ運ばれ、やがてフランスとスペイン国境のピレネー山脈地域で、主として牧羊犬として働くようになったというのが通説です。
グレート・ピレニーズは作出当初から、山岳の牧羊犬または番犬として働いてきました。その大きな体と警戒心の強さで、家畜を狙う熊やオオカミを追い払い、時に戦う役目を果たしていたのです。
その優秀さを買われてフランス・ルイ14世の宮廷に番犬として迎えられたこの犬は、1675年には「フランス王室犬」に定められています。
大きく白くふさふさとして優雅、かつ忠誠心が強いグレート・ピレニーズは、、フランス王室の公式犬となり、内外の貴族の屋敷で、美しく強い番犬として迎えられることになります。犬好きで知られるイギリスのビクトリア女王も、1850年頃にピレニーズを所有していました。
やがて、時代が変わり、山岳ではオオカミや熊などの野生動物が減り、上流階級でも犬による護衛が行われなくなると、グレート・ピレニーズの人気も徐々に下がり、原産国フランスでも絶滅寸前と言われた時代さえありました。
ところで、グレート・ピレニーズは他の犬種にもその血統を分けたことで有名です。例えば、1662年にバスク人がニューファンドランド島へ持ち込んだグレート・ピレニーズは、後にニューファンドランドと呼ばれるようになる犬種の基礎を作りました。また1870年には、雪崩やジステンバーで絶滅の危機に瀕していたセントバーナードを復活させるための種犬としても用いられています。
話を戻しますが、絶滅の危機に瀕していたグレート・ピレニーズは、奇跡的に山岳地帯で生き残っていたピレニーズたちが愛好家により発見され、彼らを土台に改良繁殖が行われるようになり、19世紀後半には祭祀世にイギリスで公認の犬種として登録され、本国フランスでは20世紀初頭にかけて愛好家たちのてによりスタンダード(犬種標準)が定められました。アメリカには少数のピレニーズたちが早い時代にニューファンドランド作出の基礎犬として入りましたが、20世紀前半に本格的に輸入され、アメリカンケネルクラブでも登録されることとなります。
山を下りたピレニーズたちは、家庭犬に向くように、過剰な警戒心を取り除き、そのままの体型で白い毛色が多くなるように繁殖されていましたが、白色遺伝子は近親交配によりサイズを小さくするように働くため、近年ではグレーやイエロー、オレンジなどの斑が入る個体も繁殖に取り入れるようになっています。
イギリスを始めとするヨーロッパ各国では「ピレニアンマウンテンドッグ(Pyrenean Mountain Dog)」と呼ばれていますが、アメリカ国内では「グレートピレニーズ(Great
Pyrenees)」という名で通っており、日本国内でも後者の呼び方が用いられています。なお、「ピレニアンマスティフ(Pyrenean Mastiff)」や「ピレニアンシェパード(Pyrenean
Shepherd)」という名前もありますが、これらは全て別犬種です。
巨体でありながら、敏捷であり、優雅かつ迫力ある見た目が特徴で、体長は体高よりやや長く、がっちりとした骨格で大きな頭に垂れ耳、ダブルコートの厚い毛に覆われた大型犬です。
グレート・ピレニーズの身体は、耳の形と毛の色を除いて熊に近づくことが理想とされており、首周りの毛が多いのは護衛犬として働いてきた名残です。外敵の攻撃から首を守るために発達したと考えられており、後ろ足ある飾り毛はちょうどパンタロンをはいたような外観を呈しています。
体長はオス69~81cm、メス63~74cm、体重はオス45~57㎏、メス39~52㎏、平均寿命は10歳~12歳ほどです。
グレート・ピレニーズは大きく、優雅な姿からおっとりとした性格の印象を受けますが、そうでない面も多く見られる犬種です。
元は番犬、牧羊犬として働いていたので、防衛能力と運動能力の向上を目的に繁殖されていた名残として、警戒心がやや強い個体もいます。
また、洞察力があり、自分で考える力があるため、主人より先回りして判断をしようとすることがある賢い犬です。
しかし、明るくのんびりとした穏やかな面も持っているので、他の犬や猫に対しても優しく接することができ、家族に対して忠実で優しくあれる特徴も持っているため、家族としてよきパートナーとなってくれるでしょう。
グレート・ピレニーズを飼育するための前提として、大型犬なので飼育するための家屋が犬の体に見合う程度の広さであること、暑さに対する配慮がされていることが挙げられます。
グレート・ピレニーズは寒い地域で暮らしていた犬種なので、暑さや湿度にはとても弱いという性質をもっています。
夏の温度管理を怠ると、グレート・ピレニーズの命の危険も出てきてしまうため、エアコンなどの温度管理ができる装置が付いている場所での飼育をしましょう。夏場は24時間常に冷房をつけ、グレート・ピレニーズが暑さによって夏バテや熱中症にならないようにしてあげましょう。
また、豊富な被毛が特徴的のダブルコートで体も大きく、換毛期でなくても下毛が相当抜けることから毎日のブラッシングが必要になります。シャンプーは月に2~3回が理想的で、自宅で洗うとなると体も大きいため数人がかりで行う必要があります。少々お金はかかりますが、大変なようであればトリミングを依頼することをお勧めします。
グレート・ピレニーズを飼ううえで大変なもことの一つに毎日の散歩も含まれます。牧羊犬をしていた犬種なので、広い土地を駆け回る強靭な体力が強みでもあり、特徴になります。毎日の十分な散歩ももちろん大切ですが、大きな広場などで好き放題に走らせることも必要になります。
しつけについては、子犬時代に社会性を養えるかどうかがその後のしつけにも大きく影響が出てくるということを覚えておきましょう。
人間に警戒心を抱かせないこと、犬同士の交流を上手にできるようにすることがグレート・ピレニーズのしつけの基本となります。ここを失敗してしまうと飼い続けていくことが困難になってしまします。
もし、失敗してしまった場合、突然人に襲い掛かろうとしたり、散歩の際に他の人や犬に吠えたりなど手が付けられないことになってしまうことがありますので、できれば専門家のアドバイスを受けながらしつけていくことが望ましいです。
「伏せ」「待て」などの命令もしっかり教え込んでおくことが重要で、なにか問題が生じた際に飼い主が発するその一言で冷静になれるようにしつけておくことが理想的です。本来は心優しい犬で、飼い主に対して従順な性質を持っている犬種なので、上手くしつけができればなんの問題もなく飼うことができます。
様々な大変なことがありますが、生き物を飼うということに苦労はつきものなので、家族で協力し合って世話をしてあげましょう。