犬のレッグ・ペルテス病(レッグ・パーセス病)を解説!症状・原因・治療・予防を知る

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レッグ・ペルテス病とは?

レッグ・ペルテス病(レッグ・パーセス病)は、股関節の骨頭が壊死する病気です。この病気は、血流の不足によって骨頭が徐々に壊死し、痛みや跛行を引き起こします。特に小型犬や中型犬に多く見られ、特に1歳未満の若い犬に発症することが多いです。
この病気の特徴は、股関節の正常な発育が妨げられ、骨頭が変形してしまうことです。これにより、関節の滑らかな動きが損なわれ、犬にとって非常に痛みを伴う状態となります。

レッグ・ペルテス病は特定の犬種に多く見られます。特に、トイプードル、ヨークシャーテリア、ウェストハイランドホワイトテリアなどの小型犬種に発症しやすい傾向があります。
また、この病気は1歳未満の若い犬に多く見られますが、まれに成犬でも発症することがあります。

病気の初期段階では症状が軽微で見逃されがちですが、進行すると明らかな跛行や痛みが現れるため、早期発見と治療が重要です。飼い主の皆様には、愛犬の歩行や行動に変化が見られた場合、早めに動物病院を受診することをお勧めします。

症状

レッグ・ペルテス病の症状は、病気の進行度に応じてさまざまです。
初期症状は軽微で見逃されがちですが、進行するにつれて明確な症状が現れます。以下に、病気の各段階における典型的な症状を詳しく解説します。

<初期症状>

初期の段階では、以下のような軽微な症状が見られることがあります。

・歩行の異常
愛犬が片足を引きずるような歩き方をすることがあります。この段階では痛みが軽度であるため、短期間で症状が消えることもありますが、再発することが多いです。

・活動量の減少
遊びや運動に対する興味が減り、動きが鈍くなることがあります。これは痛みを感じることによるもので、飼い主様にとっては「少しおとなしくなった」と感じる程度かもしれません。

<進行した場合の症状>

病気が進行すると、以下のような明確な症状が見られるようになります。

・跛行
明らかに片足を使いたがらない、または完全に持ち上げて歩くようになります。この状態は持続的で、歩行時の不自然さが目立ちます。

・痛みの表現
犬が関節を触られることを嫌がり、痛みを感じる部位を舐めたり、噛んだりすることがあります。痛みがひどい場合は、鳴き声を上げることもあります。

・関節の腫れ
患部の関節が腫れ、触ると熱感を感じることがあります。これは炎症が進行している証拠です。

・筋肉の萎縮
痛みを避けて足を使わないため、筋肉が次第に萎縮していきます。これは脚全体の細さとして現れ、視覚的にも確認できます。

<観察のポイント>

飼い主様は、以下のポイントに注意して愛犬の健康状態を観察することが重要です。

・歩き方の変化
普段の歩き方と比較して異常がないか、定期的にチェックしましょう。

・活動量の変化
遊びや散歩に対する興味の減少は、痛みのサインかもしれません。

・身体のチェック
定期的に愛犬の身体を触り、痛がる部分や腫れがないかを確認します。

これらの症状が見られた場合は、早めに獣医師に相談し、適切な診断と治療を受けることが大切です。早期発見と治療が、愛犬の健康を守るためには非常に重要です。

原因

レッグ・ペルテス病の原因は複雑で、まだ完全には解明されていない部分もありますが、いくつかの主要な要因が考えられています。遺伝的要因や環境的要因、その他のリスクファクターについては以下の通りです。

<遺伝的要因>

レッグ・ペルテス病は、特定の犬種に多く見られることから、遺伝的要因が強く関与していると考えられています。以下のような犬種が特にリスクが高いとされています。

・トイプードル
・ヨークシャーテリア
・ウェストハイランドホワイトテリア
・チワワ
・パピヨン

これらの犬種は、小型で骨が細く、成長過程で股関節に負担がかかりやすいことが原因と考えられます。遺伝的素因を持つ犬は、成長期に股関節の血流が悪くなりやすく、骨頭の壊死が進行しやすいのです。

<環境的要因>

環境的要因もレッグ・ペルテス病の発症に影響を与える可能性があります。特に以下の要素が関与しているとされています。

・栄養不良
成長期に必要な栄養素が不足すると、骨の発育に影響を及ぼし、股関節の健康を損なう可能性があります。特にカルシウムやビタミンDの不足は、骨の強度に影響を与えます。

・過剰な運動
成長期の過度な運動や過重負荷は、股関節に過剰なストレスを与え、血流の障害を引き起こすことがあります。これにより、骨頭の壊死が進行するリスクが高まります。

<その他のリスクファクター>
その他のリスクファクターとしては、以下のようなものが挙げられます。

・外傷
股関節に対する外傷や打撲が、血流の障害を引き起こし、レッグ・ペルテス病を誘発する可能性があります。

・ホルモンの影響
一部の研究では、成長ホルモンのバランスがレッグ・ペルテス病の発症に関与している可能性が示唆されています。ホルモンの不均衡が骨の発育に影響を与えることがあります。

・感染症
極めて稀ですが、股関節周辺の感染症が血流を阻害し、レッグ・ペルテス病の発症に繋がることがあります。

これらの要因が複合的に作用し、レッグ・ペルテス病の発症を引き起こすと考えられます。飼い主の皆様は、愛犬の成長過程でこれらのリスクファクターを最小限に抑えるよう注意することが重要です。

診断方法

レッグ・ペルテス病の診断診断には、獣医師による詳細な診察とさまざまな画像診断が用いられます。まず、獣医師は飼い主様からの詳細な病歴聴取と、犬の健康状態を確認します。

・病歴聴取
犬の歩行の異常や痛みの訴え、活動量の変化など、飼い主からの情報を詳しく聞き取ります。

・触診
股関節を中心に、痛みの有無や腫れの有無を確認します。触診によって、関節の可動域の制限や異常な反応を観察します。

・神経学的検査
他の脳疾患や椎間板ヘルニアによる痛みや歩行異常ではないか、反射や姿勢反応に異常がないかなどを確認します。

さらにレッグ・ペルテス病の確定診断には、X線やCT検査、MRI検査などの画像診断が非常に重要です。特にX線検査が一般的に用いられます。

・X線検査
最も基本的な診断方法で、股関節の状態を視覚的に確認します。骨頭の変形や壊死の進行度を評価することができます。初期段階でも、骨頭の変形が見られる場合があり、早期発見に役立ちます。

・CT検査、MRI検査
X線検査だけでは判断が難しい場合や、より詳細な情報が必要な場合に使用されます。

さらに画像診断以外にも、以下のような補助的な検査を行うことがあります。

・血液検査
血液検査によって、全身状態や感染症の有無を確認します。これは、治療方針の決定や他の病気との鑑別に役立ちます。

・関節液検査
必要に応じて、関節液を採取して検査することがあります。これは、炎症の程度や感染の有無を確認するために行われます。

これらの診断方法を組み合わせることで、レッグ・ペルテス病の正確な診断が可能となります。
早期に診断が確定すれば、適切な治療計画を立てることができ、愛犬の生活の質を向上させることができます。

治療方法

レッグ・ペルテス病の治療方法は、病気の進行度や犬の年齢、体重、健康状態などにより異なりますが、主に「外科的治療」と「保存的治療」の二つに分けられます。以下にそれぞれの治療方法とその詳細について説明します。

<外科的治療>

レッグ・ペルテス病の進行が進んでいる場合や、保存的治療が効果を示さない場合には、外科的治療が選択されます。外科的治療にはいくつかの方法があります。

・大腿骨頭切除術
大腿骨頭切除術は、壊死した骨頭を取り除く手術です。これにより、痛みの原因となる骨の摩擦がなくなり、犬が快適に動けるようになります。術後は、筋肉や結合組織が新しい関節のように機能します。

・人工股関節置換術
人工股関節置換術は、壊死した骨頭を人工関節に置き換える手術です。これは高度な技術を要するため、専門の動物病院で行われます。


手術後のケアは回復において非常に重要で、手術後のリハビリは必須です。リハビリでは関節の可動域を広げ、筋力を回復させるための運動が行われます。
また、手術後の痛みを管理するために、適切な鎮痛薬が処方されます。

<保存的治療>

初期段階や軽度の症例では、次のような保存的治療が選択されることがあります。

・投薬治療
非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)や鎮痛薬によって、痛みや炎症を管理します。

・理学療法
関節の可動域を保つための運動療法が行われます。水中トレッドミルなどを使用することが多く、犬にかかる負担を軽減しながら筋力を回復させます。
また、筋肉の緊張を和らげるためにマッサージが行われることもあります。

治療方法の選択は、犬の個別の状態に応じて決定されます。一般的に、外科的治療の方が保存的治療よりも高い成功率となり、長期的な予後も良好です。しかし、保存的治療も適切に行えば症状の緩和に効果があります。

予防とケア

レッグ・ペルテス病を予防するためには、日常生活における注意とケアが重要です。特に成長期の犬に対しては、適切な栄養管理や運動の管理が発症リスクを低減するために欠かせません。以下に、具体的な予防策と日常のケアについて説明します。

・適切な栄養管理
成長期の犬には、バランスの取れた栄養が必要です。特にカルシウムやビタミンDを含む食事は、骨の健康を保つために重要です。
市販のドッグフードを選ぶ際には、成分表を確認し、必要な栄養素が含まれているかをチェックしましょう。

・過剰な運動の回避
成長期に過度な運動やジャンプ、激しい遊びを避けることが大切です。特に、小型犬種は骨が細く、股関節に負担がかかりやすいです。
適度な運動を心掛け、長時間の散歩や激しい運動は控えるようにしましょう。

・定期的な健康診断
定期的に動物病院で健康診断を受けることが重要です。獣医師による早期発見が、病気の進行を防ぐ鍵となります。
特に股関節の健康状態を定期的に確認することで、早期の異常発見が可能になります。

レッグ・ペルテス病は、早期に発見することで治療の選択肢が広がり、予後が大きく改善されます。以下の点に注意して、早期発見に努めましょう。

・歩き方の異常に注意する
日常的に犬の歩き方を観察し、異常がないかチェックします。片足を引きずる、歩行が不自然になるなどの症状に注意しましょう。

・活動量の変化を見逃さない
遊びや運動に対する興味が減ったり、動きが鈍くなったりする場合は、すぐに獣医師に相談することが重要です。

・安静と適度な運動のバランス
筋力を維持し、関節の健康を保つために、過度な運動を避けつつも、適度な運動を続けることが大切です。

・体重管理
肥満は股関節に過剰な負担をかけるため、適切な食事管理と運動を行いましょう。

・生活環境を整える
滑りやすい床は避け、関節に優しいマットやカーペットを敷くことが推奨されます。また、過度なジャンプを避けるための工夫も必要です。

これらの予防策と日常のケアを実践することで、レッグ・ペルテス病の発症リスクを低減し、愛犬の健康を守ることができます。

まとめ

レッグ・ペルテス病は、初期段階では軽微な症状しか見られないため、見逃されがちです。もしも愛犬の歩行に異常が見られた場合や、活動量が減少した場合は、早めに獣医師に相談することが重要です。
また、定期的に動物病院で健康診断を受け、股関節の状態を確認することも病気の早期発見につながります。
日頃から愛犬の様子には気を配り、何かあれば早めに動物病院を受診しましょう。

記事監修
動物病院病院 総長 藤野 洋

アニホック往診専門動物病院獣医師 藤野 洋

日本大学生物資源科学部(旧農獣医学部)獣医学科卒業。
卒業後、約20年にわたり動物病院でペットの治療に従事。
2007年(株)フジフィールド創業。動物病院とトリミングサロンのドミナント多店舗展開を行い、複数店舗の開業/運営を果たす。

日本大学生物資源科学部(旧農獣医学部)獣医学科卒業。
卒業後、約20年にわたり動物病院でペットの治療に従事。
2007年(株)フジフィールド創業。動物病院とトリミングサロンのドミナント多店舗展開を行い、複数店舗の開業/運営を果たす。

【エデュワードプレス(旧インターズー)】・トリミングサービス成功事例セミナー講師・トリミングサービス成功ガイド監修・Live trim2018 マネージメントセミナー講師 【メディア】・ラジオ調布FM ペットオーナー向け番組MC・多摩テレビ 「わんにゃんMAP」番組パーソナリティ・j:comジモトピ「世田谷・調布・狛江」出演