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犬の肝性脳症(かんせいのうしょう)とは、消化管で吸収した脳毒素となり得る物質が、肝臓で解毒されず、全身を循環する内に脳に達することで神経系などに障害をきたす病気です。
症状は様々ですが、食欲不振、元気消失、体重減少、嘔吐、下痢などの消化器系の症状に加えて、有毒物質が脳へ影響を与えると震えや運動失調、旋回運動、意識障害や発作などの神経系の症状がみられるようになります。
また、肝機能も低下するので体の免疫力が落ち、虚弱体質になるため他の病気にかかりやすくなる他に、肝臓の損傷が激しい場合は血便や吐血、内出血を起こすこともあります。
神経系の症状が悪化した場合、突然昏睡状態になり、死に至る危険に陥るケースもあるので注意が必要です。
原因は、体にとって有害な物質(アンモニア、メルカプタン、インドールなど)を解毒する肝臓の作用が肝硬変や肝リピドーシスのような肝臓の機能が著しく低下する病気にかかったり、門脈体循環シャントのような肝細胞を血液が通過することができない状況下で、有毒物質が解毒されず血中に停滞し、全身を循環して脳に至る為だとされています。
また、高タンパク食や便秘、利尿剤の使用などが誘因となることもあるようです。
稀に、生まれつきアンモニアを分解する酵素がない先天性尿素回路酵素欠損症をもった犬もいます。
治療法は、食べ物に由来するタンパク質を制限する食事療法、消化管からの排泄を促進させる薬剤の投与、さらに消化管で毒素を産生する細菌数の減少のため抗菌薬などを併用する場合もあります。
門脈シャントの場合は、外科手術によって異常な場所に繋がっている血管を繋ぎ直し、血管の流れを修復します。
予防策として、肝臓の機能が低下する病気では肥満になりやすく、肥満の犬はこの病気の発症率が高いとされる為、栄養バランスの取れた適切な量の食事を与えて体重をコントロールする他、原因となる病気の治療をし、普段と変わった症状が見られた場合は早めにかかりつけの動物病院を受診するようにしましょう。