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犬の脳腫瘍(のうしゅよう)とは、「脳に発生する脳腫を総称したもので、最初に腫瘍ができた部位が脳であるもの(原発性の脳腫)」と、「他の部位にできた腫瘍が脳に転移したもの(続発性の腫瘍)」とに分けられます。
脳のどの部分に腫瘍ができるかによって、様々な症状があらわれますが、最も多い症例は「発作」です。
「意味もなく同じ場所で一定の方向に回り続ける(旋回運動)」、「身体の平衡や姿勢が保てない(運動失調)」、「首が捻じれた状態になって姿勢をうまく制御できなくなる(捻転斜頸(ねんてんしゃけい))」、「頸部知覚過敏(けいぶちかくかびん)」など、腫瘍がある部位により様々な神経症がみられます。
例えば、脳幹に腫瘍ができると平衡感覚の異常がみられ、大脳の後頭葉に腫瘍ができると視覚異常を示したりする他、腫瘍が大きい、或いは急速に大きくなるような場合には行動変化や旋回運動、頭部を押し付けるような行動、無目的な歩行や運動失調などの症状がみられます。
腫瘍が小さいうちは症状がみられないことも多く、異常に気付いてから来院した際に腫瘍が大きくなっていることが確認されるというケースもあります。
犬が発症する脳腫瘍の多くが原発性脳腫瘍であり、脳と脊髄を囲む髄膜と呼ばれる部分に腫瘍ができる髄膜種(ずいまくしゅ)や、脳に浸み込むように広がっていくグリオーマなどがあります。
続発性脳腫瘍には、血管肉腫やリンパ腫などが原因となる場合があります。
原発性の場合、発症する犬の95%が7歳以上のシニア犬といわれ、犬種によっても発症率に差があり、ゴールデンレトリーバーやブルドック、ボストンテリアなどで脳腫瘍にかかりやすい傾向がみられます。
治療法は、「腫瘍そのものを除去、あるいは減量する外科的な手術や放射線療法、化学療法などを行う」、「直接腫瘍にアプローチをするのではなく、脳腫瘍により脳圧が高くなったり、脳の浮腫が起こっている場合に、薬を使って症状を軽減する」の2つの治療があります。また、発作などの神経症状が見られる場合には抗てんかん薬などを用いて症状をコントロールします。
予防策は、原因がはっきりわかっておらず、現状予防することは困難なので、普段から犬の状態を確認して早期発見・早期治療を行えるよう努めるほか、症状が見られた場合は速やかに動物病院を受診するようにしましょう。