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犬の馬尾症候群(ばびしょうこうぐん)は、犬の神経の集合体である「馬尾」と呼ばれる部分の神経が障害される病態のことをいいます。
犬の背骨の中を走っている脊髄は、腰の骨を構成している腰椎の内、上から5番目に当たる第五腰椎くらいで終わっています。そこから下に向かってしっぽの先まで伸びている神経の束が「馬尾」(ばび)です。
主な症状としては、馬尾の部位の痛み、後肢の歩様や尾の動かし方の異常、排尿排便困難などが認められます。後肢の震えや、後肢の爪の毛削れなどが認められることもあります。運動を嫌がったり、尻尾の付け根を触ると嫌がるのはこの症状のせいかもしれません。
馬尾症候群の原因としてあげられることは、椎間板ヘルニアや脊椎をつなぐ靭帯の肥厚、脊椎の炎症や変形、腫瘍などがあります。また、先天的に椎骨が奇形の場合なども機能を損なってしまい、馬尾症候群を引き起こす可能性があります。
馬尾症候群の治療方法は、先天性か後天性かによって変わってきます。馬尾症候群が先天的な奇形の結果として生じている場合は、自然治癒することがないため外科手術の適用となります。
具体的には、第七腰椎と第一仙椎の後面に位置する椎弓(ついきゅう)と呼ばれる部位を切って、脊髄や神経に対する圧迫を取り除く方法や、椎間関節(ついかんかんせつ)と呼ばれる背骨間の関節を切って神経の根元をリリースするといった方法があります。
馬尾症候群が後天的な外傷によって生じた場合は、神経の機能が自然に回復するまで、しっぽや腰への負担を減らして安静を心がけます。安静にしていると症状も和らぎ回復が見込めます。しかし、排泄機能が回復するまでは、尿道カテーテルや膀胱カテーテルで膀胱内に溜まった尿を定期的に空にしたり、浣腸や軟便剤で直腸を空にするといった、排泄の補助が必要です。