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犬の肥満細胞腫(ひまんさいぼうしゅ)とは、粘膜下組織や結合組織などに存在する肥満細胞がガン化してしまう病気のことです。「肥満」と付いている病名ですが、太っているという意味の「肥満」とは関係がありません。
体の様々な部位に発生しますが、主に皮膚や皮下組織にできるといわれています。基本的には悪性の腫瘍のため、異変を感じたらすぐに動物病院で診てもらう必要があります。
比較的に悪性度が低い腫瘍は、直径1~4cmの弾力のある腫瘍で、多くは表面に毛がありません。一方で悪性度が高く、進行の早い腫瘍は、大きめで表面に潰瘍ができていたり自傷したりして、出血が見られることがあります。また、 腫瘍の周囲が赤く腫れて、ぶよぶよしていたり、ひどい皮膚炎を起こしているように見えることもあります。
皮下にできた肥満細胞腫は、脂肪腫などと間違われることがあります。腫瘍の大きさは小さいものから大きいものまであり、様々な形状をしています。また、外観だけでは悪性かどうかの判断が難しいですが、下半身にできたものは悪性である可能性が多いようです。
また、がんが転移したり、全身に広がったりすると、消化管での炎症や出血が起こり、血のまじった嘔吐や下痢がみられたり、食欲不振を生じることがあります。ときに全身性のショック症状を引き起こし、死に至ることもあります。
肥満細胞腫は重症度によって、グレード1からグレード3に分類されます。グレード3に進むほど悪性度が高く、他の部位へ転移している可能性も高くなります。
肥満細胞腫の原因は現在明確にはわかっていません。平均発症年齢は9歳とされていますが若齢犬でも発症することから、犬種や遺伝による要因も考えられています。
また発症の要因としては、慢性的な炎症の関与も考えられるようです。
まず肥満細胞腫かどうかを検査するために、細胞の検査などを行います。同時に他の部位に転移していないかどうか、他に病気がないかも検査をします。CT検査や血液検査、遺伝子検査などが行われます。
肥満細胞腫の治療方法としては、外科治療をするか、抗がん剤を使用するかの2種類があります。基本的に外科治療が適用されるようです。手術によって、目に見えている部分だけではなく腫瘍の奥の部分まで、肥満細胞腫を完全に切除します。完全に取り切った場合は、予後も順調な回復が見込めます。
すでに体中に腫瘍が広がってしまっている段階の場合は、全身に効果を見込める抗がん剤による化学療法と手術の併用をするようです。
肥満細胞腫の予防は困難です。腫瘍がまだ小さく転移していない段階で早期発見し、早期治療に努めることが重要です。