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ボーダー・コリーがかかりやすい病気やケガから、性格や体の特徴なども確認していきましょう。
現代の日本ではドッグスポーツで人気のボーダー・コリーですが、その祖先はトナカイの放牧を行っていたと考えられています。
8世紀頃、北欧スカンジナビアからバイキングによってイギリス北部のスコットランドにわたり、もともといた牧羊犬との交雑が繰り返され、現在のボーダー・コリーに近い形になったようです。これらの犬は主にイギリス、ウェールズ、スコットランドの国境付近で、長らく作業犬として活躍してきました。
スコットランドの方言で「コリー(Collie)」とは牧羊犬全体を意味します。犬種の由来としては、スコットランド国境近くで飼育されていたから、スコットランドのボーダー地方で飼育されていたから、など諸説あります。
ボーダー・コリーは、長い間その作業能力ばかりが重視されていたため、最初の犬種標準(スタンダード)ができたのは1906年になってからのことでした。この時も、容姿よりも作業性を優先し、大変あっさりしていたようです。
犬種としてボーダー・コリーという名が採用されたのはさらに後の1915年、原産国であるイギリスで犬種として公認されたのは1976年と50年も経ってからでした。
FCI(国際畜犬連盟)の後任は1981年になってからでしたが、そのきっかけはほかの犬種とは趣旨が異なります。
ボーダー・コリーは現役の牧羊使役犬として欧米を中心に世界中の牧場に広がった後、ドッグスポーツや訓練競技会に参加するようになり、やがてボーダー・コリーばかりが上位を独占するようになりました。その人気に後押しされる形で、ドッグショーを主催する各国の畜犬団体やFCIが公認するようになったのです。
ところが、それ以前からボーダー・コリーの愛好家が増えていたアメリカでは、現役の牧羊犬であるボーダー・コリーをショードッグとして見世物のように扱うことに反感を抱いた人達から、講義が起こったという逸話があります。外見でなく、能力を評価してほしいというファンシャ―達の願いでした。このいきさつから、アメリカンケネルクラブに公認されたのは大変遅くなりました。
日本には意外と早く渡ってきたとされており、戦前のオーストラリアから、毛織物を作るための羊とともに輸入されたとされています。しかしこの時の犬は短毛であったこと、オーストラリアにはオーストリアンケルピーなど他犬種の牧羊犬がいたことなどから、この時輸入された犬が本当にボーダー・コリーかどうかは確証がないようです。
犬種として比較的新しい記録が残っているボーダー・コリーにはもう一つの歴史があります。
イギリス原産の牧羊犬・牧畜犬は多く、ウェルシュ・コーギーやラフ&スムースコリー、シェットランドシープドッグ、オールドイングリッシュシープドッグ、ベアデットコリーやこれらのミックスなどがいます。
1873年に、これらの牧羊犬の競技会が開かれることになり、この初めての牧羊犬協議会で大活躍したのがヘンプ(オールド・ヘンプ)という名のボーダー・コリーです。1906年にボーダー・コリーのスタンダードができる前のことで、まだ犬種として確立していなかった頃のことでした。
ヘンプは、コーギーのように家畜の足を咬んだり、シェルティのように吠えたりせず、姿勢を低くして今にも飛び掛からん姿勢で羊をにらみつけ、家畜をまとめていました。このように、力や声を使わずに羊を誘導する犬は例がなく、多くの牧童やギャラリーの目を引きました。
そしてヘンプはこの能力を買われ、亡くなるまでに種牝犬として200頭もの子犬の父犬になったのです。
同じように眼力で羊たちをまとめあげたボーダー・コリーに、ケップという犬がいました。
オールド・ヘンプが亡くなってか入れ替わるように生まれたケップは、牧羊犬競技会で連戦連勝をあげていき、ヘンプとケップはそれぞれ種犬として多くの子孫を残して近代から現代のボーダー・コリーたちの基礎犬となり、使役犬としてのボーダー・コリーという犬種を確立する基礎になりました。
ボーダー・コリーはやや大きめの中型犬で、犬種標準では均整が取られた滑らかなアウトラインであり、体つきはしっかりとしていて耐久力のある印象であるとされています。
体高はオス53~55cm、メス50~52cm、体重はオスとメス共に14~20㎏、平均寿命は10~17歳ほどです。
ボーダー・コリーには様々な毛色が認められており、ブラック&ホワイトが基本ではありますが、レッド、チョコレート、ブルー、ブルーマール、セーブル他と多種多様で、有色部分が50%以上を占めています。アイリッシュスポット(四肢先端部、ネック及び頭部の白い部分)があり、その部分にぶち模様がはいることもあります。毛質はダブルコートが基本ですが、短毛もあり、ストレートの個体もややうねったカールの毛を持つのもいます。
ボーダー・コリーは大変頭がよく、活発で、作業意欲の強い性格です。注意深く洞察力があり、作業中は状況を判断して自分で動くことができます。
家族には大変愛情深い一方、知らない人や犬には関心が薄く、犬同士で遊ぶことより人間と作業することを好む傾向があります。
ボーダー・コリーは頭がいいので、飼いやすい犬と思われがちですが、賢く意欲にあふれた犬の心身を満足させる力を飼い主には必ず求められます。
ボーダー・コリーは犬の体力に見合った運動と犬の知性に見合ったトレーニングや遊びを与えないと、ストレスで気が荒くなり、飼い主の指示に従わなかったり、飼い主を見下すようになったりします。
健康に問題ない個体なら、朝晩それぞれ1時間ずつくらいの散歩をしてあげましょう。
また、年齢の若いうちはそれでも体力が有り余っていますので、週末などの時間がある時は、フライングディスクやアジリティなどの遊び要素も取り入れると良いでしょう。
比較的体力があり、暑さ寒さには強いものの、外部の刺激に反応して羊追い行動をとってしまうことがあります。通りかかった自転車やオートバイを追って飛び出してしまい事故に遭うこともありますので、日ごろの生活は屋内でさせることが安全です。
散歩中もこのような反応を見せることがありますので、飼い主に従って歩くようにしっかりとトレーニングしましょう。
ボーダー・コリーは賢いからこそ、リーダーである飼い主さんのあいまいな態度を見破り、いうことを聞かなくなってしまいます。主従関係を意識しつつ、子犬の頃から良い悪いをはっきりと教えていくことがポイントです。
しつけに不安がある場合は、専門のトレーナーに相談してみるのも良いでしょう。
ボーダー・コリーをしつけるときの3つのポイントとして、「叱るときは低い声で厳しく」「上手にできたときは褒める」「飼い主が先に行動する」という点があります。
叱る際は低い声で、一貫した厳しい態度で行うことが重要です。叱っている時に中途半端な態度を取ると「本当は怒っていないんだ」などのと勘違いしてしまい、また同じ行動を繰り返してしまうことがありますので、常に堂々とした態度で接することを心掛けましょう。
指示を上手くこなせた場合は、思いっきり褒めてあげましょう。厳しいしつけといえば常に怒ったような態度を連想しがちですが、飼い主との信頼関係の悪化につながってしまうため、望ましくありません。もちろん、普段から甘やかし過ぎるのも良くないので、アメとムチを使い分けたメリハリのある対応が重要となります。
上下関係を覚えさせるために、出入りや食事などは必ず飼い主が先に行います。もしも犬が先に行動してしまった場合は「待て」などで制止させ、もう一度同じ行動を「飼い主が先」にできるまで何度も行います。
上手にできた場合はきちんと褒めてあげましょう。
また、長毛と短毛がいますが、ダブルコートで下毛が抜けますので、週に2~3回程度のブラッシングをしてあげるとよいでしょう。