猫の歯肉炎を徹底解説!原因から症状、治療、予防まで

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猫の歯肉炎とは?

歯肉炎とは、歯茎(歯肉)が炎症を起こしている状態を指します。歯肉が赤く腫れると痛みを伴うことが多いです。この状態が放置されると歯周病へと進行し、さらに深刻な問題を引き起こす可能性があります。

猫にとって歯肉炎は非常に重要な健康問題です。歯肉炎は痛みを伴うだけでなく、食欲不振や体重減少、さらには全身の健康状態に悪影響を及ぼすことがあります。

特に、高齢の猫や免疫力が低下している猫では、歯肉炎が全身疾患の引き金となることもあるため注意が必要です。

歯肉炎の原因

・歯垢と歯石

歯肉炎の最も一般的な原因は、歯垢と歯石の蓄積です。

歯垢は、食べ物の残りかすや口内の細菌が結びついて形成される粘着性の物質です。歯垢が長期間放置されると、唾液中のカルシウムと結合して硬くなり、歯石へと変化します。歯石は歯茎を刺激し、炎症を引き起こす要因となります。

この状態を改善するためには、定期的な歯垢と歯石の除去が必要です。

・口内細菌

口内細菌も歯肉炎の主要な原因の一つです。

猫の口腔内には常に多くの細菌が存在しており、これが歯垢や歯石と相互作用して歯肉炎を引き起こします。

特に、歯垢が蓄積すると細菌が繁殖しやすくなり、炎症を引き起こすリスクが高まります。

・栄養不足や食事

食事内容も歯肉炎の発生に影響を与える要素です。

栄養バランスが偏った食事や、柔らかいフードばかりを与えると、歯垢が形成されやすくなります。

また、適切な栄養を摂取しないと免疫力が低下し、炎症に対する抵抗力が弱まります。特に、ビタミンCやDの不足は、歯茎の健康に直接的な影響を与えることが知られています。

猫の食事には、これらの栄養素がバランスよく含まれていることが重要です。

歯肉炎の症状

・口臭

猫の歯肉炎の初期症状の一つに口臭があります。歯垢や歯石の蓄積によって口内の細菌が増殖し、これが強い臭いの原因となります。普段と異なる強い口臭を感じた場合は、歯肉炎を疑いましょう。

・歯茎の赤みと腫れ

歯肉炎が進行すると、歯茎が赤く腫れることがよく見られます。赤く腫れた歯茎は、触れると出血しやすくなることもあります。この症状を確認した場合は、速やかに獣医師に相談することが重要です。

・食欲不振

歯肉炎が悪化すると、猫は食事をする際に痛みを感じるようになります。その結果、食欲が低下し、食事量が減少することがあります。これに伴って体重が減少し、栄養不足になるリスクが高まります。

・その他の症状

その他の症状としては、よだれの増加や、歯茎からの出血、食べ物を口からこぼすなどがあります。また、猫が口を頻繁に触る、顔をこすりつけるなどの行動を示すこともあります。これらの症状は、歯肉炎による不快感や痛みを示している可能性が高いため、見逃さないよう注意しましょう。

歯肉炎の診断方法

・視診と触診

歯肉炎の診断は、まず獣医師による視診と触診から始まります。

視診では、口腔内を直接観察し、歯茎の赤みや腫れ、歯石の付着状況などを確認します。

触診により、歯茎の硬さや痛みの有無を調べることも重要です。

これにより、歯肉炎の初期段階か進行段階かを判断します。

・X線検査

歯肉炎の進行具合や歯周組織の状態を詳しく確認するためには、X線検査が有効です。X線画像により、肉眼では確認できない歯根や顎骨の状態を評価できます。

特に、歯周ポケットの深さや骨の吸収の有無を確認することで、治療計画を立てる上で非常に重要な情報を得ることができます。

・血液検査

歯肉炎の診断において、血液検査を行う場合があります。血液検査により、炎症の程度や他の感染症の有無を確認できます。

また、全身性の病気が歯肉炎の原因となっている場合、その病気の兆候を発見することも可能です。

歯肉炎の治療方法

・歯垢・歯石の除去

歯肉炎の治療において最も基本的で重要なのは、歯垢と歯石の除去です。

具体的には、全身麻酔下で専用の機械を使って猫の口腔内を清掃し、歯石を取り除きます。これにより、炎症の原因となる細菌の温床を取り除くことができます。

また、クリーニング後には歯の表面を滑らかにし、再び歯垢が付着しにくくする処置も行います。

・抗生物質の投与

歯肉炎が進行して細菌感染が確認された場合、抗生物質の投与が必要になります。

抗生物質は口内の細菌を減少させ、炎症を和らげる役割を果たします。投与は獣医師の指示に従い、決められた期間しっかりと行うことが重要です。自己判断で投薬を中断すると、細菌が再び増殖し、症状が悪化する可能性があります。

・専門的なデンタルケア

重度の歯肉炎や歯周病が見られる場合、専門的なデンタルケアが必要になることがあります。これは、歯周ポケットの洗浄や、深刻な場合には歯の抜歯を含む治療です。これらの処置により、口腔内の感染源を取り除き、歯肉の健康を回復させることができます。また、これにより猫の生活の質を大幅に改善することができます。

・自宅でできるケア

治療を受けた後も、自宅でのケアを継続することが非常に重要です。

デンタルガムや専用の歯磨きペーストを使用して、日常的に歯を清潔に保つよう心がけましょう。歯磨きは少しずつ慣らしていくことがポイントです。定期的なブラッシングは、再発を防ぐための効果的な手段です。

また、獣医師の指導を受けながら、適切なケア方法を継続することが大切です。

歯肉炎の予防策

・定期的な歯科検診

歯肉炎を予防する最も効果的な方法の一つは、定期的な歯科検診です。少なくとも年に一度は、獣医師による口腔内のチェックを受けることをお勧めします。これにより、歯垢や歯石の早期発見・除去が可能となり、歯肉炎の進行を未然に防ぐことができます。

また、早期の段階で治療を開始することで、重篤な歯周病への進行を防ぐことができます。

・適切な食事

猫の歯の健康を維持するためには、適切な栄養バランスの取れた食事が重要です。特に、ドライフードは噛むことで歯垢の蓄積を抑制する効果があるためおすすめです。

また、ビタミンCやDが豊富に含まれた食事を選ぶことで、歯茎の健康をサポートすることができます。

食事内容に関しては、獣医師と相談しながら決めると良いでしょう。

・デンタルケア製品の使用

市販されているデンタルケア製品を活用することも効果的です。

例えば、デンタルガムや猫用の歯磨きペースト、口腔内スプレーなどがあります。これらの製品は、歯垢の形成を抑え、口腔内の細菌を減少させる働きがあります。日常的にこれらの製品を使用することで、歯肉炎の予防に役立ちます。

特に、歯磨きは効果的な予防策の一つであり、猫が嫌がらないように少しずつ慣らしていくことが大切です。

・その他の予防策

定期的なブラッシングや口腔内のチェックを習慣化することも重要です。

猫の口腔内を観察し、異常が見られた場合は早期に対応することが求められます。

また、ストレスの少ない環境を提供することも、免疫力を維持するために重要です。適度な運動や健康的な生活習慣をサポートすることで、全体的な健康状態を良好に保つことができます。

飼い主様が知っておくべきこと

・歯肉炎の早期発見の重要性

歯肉炎は早期発見と早期治療が非常に重要です。初期段階で発見されれば、比較的簡単な処置で改善することができます。しかし、放置すると歯周病へと進行し、深刻な口腔内の問題を引き起こす可能性があります。

飼い主様は、愛猫の口臭や歯茎の赤み、腫れなどの初期症状に気づいたら、すぐに獣医師に相談することが大切です。早期に対処することで、猫の痛みや不快感を軽減し、全身の健康を守ることができます。

・歯肉炎が進行した場合のリスク

歯肉炎が進行すると、歯周病へと移行し、最終的には歯の喪失や全身疾患を引き起こすリスクがあります。

歯周病は、歯を支える骨や組織が破壊される深刻な病気です。これにより、食事が困難になり、栄養状態が悪化するだけでなく、細菌が血流に入り込み、心臓病や腎臓病などの全身性の疾患を引き起こす可能性もあります。

歯肉炎の進行を防ぐためには、定期的な歯科検診と適切なデンタルケアを行うことが不可欠です。

よくある質問

・歯肉炎は治るのか?

歯肉炎は適切な治療とケアを行えば治すことが可能です。初期の歯肉炎は、歯垢や歯石の除去と適切な口腔ケアによって改善します。獣医師による歯石のクリーニングと抗生物質の投与が効果的です。また、自宅でのデンタルケアを継続することで、再発を防ぐことができます。

しかし、重度の歯周病に進行してしまった場合は治療が困難になることもありますので、早期発見と予防が重要です。

・歯肉炎の治療費用は?

歯肉炎の治療費用は、症状の程度や治療内容によって異なります。軽度の歯肉炎であれば、歯垢・歯石の除去や抗生物質の投与で済むことが多く、比較的低コストで治療が可能です。

しかし、重度の歯周病や抜歯などの処置が必要な場合は、費用が高くなることがあります。

また、定期的な歯科検診や予防ケアも費用に含まれることがありますので、詳しい費用については獣医師に相談することをお勧めします。

まとめ

猫の歯肉炎は、早期発見と適切な治療が鍵となります。歯肉炎は放置すると深刻な歯周病へと進行し、猫の生活の質を著しく低下させる可能性があるため、定期的な歯科検診や日常的なデンタルケアを通じて、愛猫の口腔内の健康を維持することが大切です。

もしも愛猫の口臭や歯茎の赤み、食欲不振などの症状に気づいたら、速やかに獣医師に相談しましょう。

犬の口腔・歯の病気一覧

記事監修
動物病院病院 総長 藤野 洋

アニホック往診専門動物病院獣医師 藤野 洋

日本大学生物資源科学部(旧農獣医学部)獣医学科卒業。
卒業後、約20年にわたり動物病院でペットの治療に従事。
2007年(株)フジフィールド創業。動物病院とトリミングサロンのドミナント多店舗展開を行い、複数店舗の開業/運営を果たす。

日本大学生物資源科学部(旧農獣医学部)獣医学科卒業。
卒業後、約20年にわたり動物病院でペットの治療に従事。
2007年(株)フジフィールド創業。動物病院とトリミングサロンのドミナント多店舗展開を行い、複数店舗の開業/運営を果たす。

【エデュワードプレス(旧インターズー)】・トリミングサービス成功事例セミナー講師・トリミングサービス成功ガイド監修・Live trim2018 マネージメントセミナー講師 【メディア】・ラジオ調布FM ペットオーナー向け番組MC・多摩テレビ 「わんにゃんMAP」番組パーソナリティ・j:comジモトピ「世田谷・調布・狛江」出演