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犬の肘関節形成不全(ちゅうかんせつけいせいふぜん)とは、上腕部を形成する「上腕骨」と、前腕部を形成する「橈骨(とうこつ)」、「尺骨(しゃっこつ)」という三本の骨がうまくかみ合わされることで構成されている肘関節という部分の発育不良により痛みが生じる病気の総称です。
初期症状は成長期の4~7ヵ月くらいに前肢の跛行(はこう)がみられ、初めの頃は休息後に立ち上がった時などに一時的に歩き方の異常が見られますが、進行すると関節炎を起こし、運動時に症状が悪化したり、歩行異常が持続してみられたりするようになります。
上記以外の主症状として、「痛みから前肢を挙げて歩く」「肘を曲げるのを嫌がる」「立った時の肘の状態が不自然」「肘関節の腫れ」「筋肉が落ちて前肢が細くなる」「関節に水が溜まる」などの症状がみられるほか、症状が進行すると重度の跛行を示すようになったり、変形性関節症(へんけいせいかんせつしょう)を併発したりします。
主な原因の一つとして、遺伝的要素が強いといわれています。
具体的にゴールデンレトリバー、ロットワイラー、ジャーマンシェパード、チャウチャウ、ビアデッドコリー、ニューファンドランド、ラブラドールレトリバー、バーニーズマウンテンドッグなどの大型犬によくみられ、成長期における体の成長率が他の犬種に比べてかなり大きいからだと考えられています。
その他、外傷、栄養、肥満なども原因として考えられており、これらによって尺骨と橈骨の成長の不均一などによる肘関節の異常、尺骨の肘突起や内側鉤(こう)状突起と呼ばれる尺骨と上腕骨の関節面を形成する部分の異常、上腕骨側面の軟骨以上などが引き起こされます。
また、骨が成長する4~10ヵ月における過度な機械的ストレスが肘関節の成長を阻害してしまうこともあり、落下や衝突などの事故、激しすぎる運動、餌の与え過ぎによる急激な体重増加などが主な要因とされています。
症状が比較的に軽い場合は、軟骨保護剤などの投薬による内科治療と併せて、運動制限や体重コントロールをすることが主になります。
痛みが激しく、日常生活に支障を来たしている場合は、抗炎症剤や鎮痛剤の投与のほか、状況に合わせた術式を選択して外科手術を行うこともあります。
変形性骨関節症が進行していない段階で手術を受けた場合には経過が良好なケースが多いようです。
予防策としては、関節に負担をかけないように体重のコントロール、成長期に過度な運動をさせないようにする、成長期のカルシウムの過剰摂取やカロリー過多も関節の病気のリスクを高くすると考えられているので控えることが大切です。
また、症状で述べた通り、遺伝的な要因が強いので、この疾患が罹患している犬の繁殖を避けるようにする事も重要となります。