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犬の腸重積(ちょうじゅうせき)とは、腸の一部が内側にめくれ、隣り合う部分の内部に入り込んでしまう状態のことです。
折り重なった下の腸管を「嵌入部(かんにゅうぶ)」、上に覆いかぶさっている腸管を「嵌入鞘(かんにゅうしょう)」と呼び、重積は基本的にどの部分でも起こりうるものですが、最も多くみられるのが小腸と結腸の以降部にあたる「回盲腸部」で、続いて「盲腸~結腸移行部」、「十二指腸~胃移行部」、「胃~食道移行部」などでも確認されています。
また、食べたものが少しでも通過できる状態の場合、イチゴゼリー状の粘血便が出ることもありますが、時間が経過して重積部が多くなるにつれ、嘔吐の繰り返しによって元気を失い、腹痛を伴うので触られるのを嫌がるようになります。
症状が進行して食欲がなくなり、お腹が膨れる症状が見られると腸閉塞の原因にもなり、ショック症状から危篤状態になることもある為、要注意です。
腸重積が発生する理由は不明ですが、消化物を移動させる蠕動運動(ぜんどううんどう)の不調和や、腸管内腔の急激な拡大によって発症すると考えられています。
主に大腸炎や下痢、外的要因として糸やストッキングなどの異物を飲み込む他、寄生虫や脳腫、過去に行った手術なども蠕動運動の異常を招く可能性として挙げられます。
主な治療法として、X線検査やバリウムの投与で閉塞部分を確認し、腸重積が確認できれば外科的手術で重積の整復手術を行います。
長時間腸が重積した状態であった場合や血管や腸管膜が腸と一緒に入り込み、血液遮断などが要因で腸管に癒着するなどのダメージを受けている場合、修復が難しいこともあります。
また、重積した部分が壊死していた時や、腸の表面に穴が空いて回復が見込めない場合、部分的に切除して腸を繋げるなどの処置が必要になることもあります。
手術前には脱水を改善する為に輸液を行い、ショック状態の場合はステロイド剤の使用などの抗ショック療法も必要になります。
予防策としては、ワクチン接種などで感染症の予防を行うほか、寄生虫の定期的な検査や駆除、異物の誤食癖がある場合は食べてしまう可能性のあるものを行動範囲に置かないようにすることである程度リスクを軽減することが可能なので、気を付けましょう。