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肺水腫(はいすいしゅ)とは、肺に水が溜まり、呼吸困難になる病気です。肺では酸素と二酸化炭素の交換を行っている部分があります。本来は空気が入るべき場所に血液から染み出た水が溜まり、空気の交換ができなくなる機能不全に陥っている状況が肺水腫です。溜まった水分が原因で呼吸がしにくくなり、呼吸困難につながる危険性・緊急性の高い病気です。
肺水腫の症状としては、激しく湿った咳が出たり、安静にしていても「パンティング」と呼ばれるような激しい運動後にみられるような、ゼーゼーとした荒い息をすることが挙げられます。口を開けたまま、よだれを垂れ流すこともあります。呼吸が苦しくなるのを防ぐため、犬は横に寝転がる姿勢を嫌がり、がに股のような姿勢で座るようになります。
重症化すると、血が混じったピンク色の泡状の鼻水が出たり、舌が青紫色になるチアノーゼという症状が見られるようになります。チアノーゼの症状が確認できる場合は、すでに酸欠に陥っている可能性があります。
増帽弁閉鎖不全症(ぞうぼうべんへいさふぜんしょう)などの、心臓の何かしらの異常が原因となる場合が多いです。この場合は、「心原性肺水腫」と呼ばれます。心源性肺水腫は、心臓の働きが悪化することで、肺の中に血液成分が漏れ出します。そして溜まった水分が気管を圧迫し、呼吸困難を引き起こします。
心原性以外の肺水腫は、熱中症や肺炎などが原因で引き起こされます。これらは「非心原性肺水腫」と呼ばれます。犬はたくさんの汗をかきにくい体温調節が苦手な体質のため、熱中症になると普段よりもさらに熱を体に溜め込んでしまい、肺水腫を引き起こしやすくなります。真夏はもちろん、暑く閉め切った部屋でも熱中症によって肺水腫が引き起こされる可能性もあります。
このように肺水腫は、他の病気が原因となり、周辺症状として発症することが多い病気となります。
治療としては、肺に溜まった水を除去するために、利尿剤を用いて尿として排泄させる内科療法があります。酸欠気味になっている場合は、酸素吸入も行います。また、肺水腫の原因となっている、他の基礎疾患への治療も同時に行います。場合によっては、血管拡張剤や、強心剤を服用します。
犬の肺水腫は命に関わることもある重大な病気です。そのため愛犬の呼吸に少しでも異常な兆候を感じたり、いつもより咳が多いと感じたら、様子を見ようとせずに早急に動物病院で診断してもらうようにしましょう。
肺水腫は他の病気が原因となるため、直接的な予防方法はありません。そのため普段からコミュニケーションを欠かさず、原因となる病気の早期発見・早期治療を徹底することが重要となります。
暑さに弱い犬が多いので、部屋の温度管理に注意することで、熱中症が起因となる肺水腫を予防することは可能です。